良い人ばかりじゃない世の中 身ぐるみ剥がされて第九エリアにポイ
深夜。
迫り来る危機。
どう切り抜けるか?
文豪の本領発揮か?
おい起きろ!
文豪さん何か?
外が騒がしいと思わぬか?
気のせいでしょう。
そうかのう……
ええ、問題ありません。ただ……
何じゃ?
聞いたんです。寝静まった頃にお邪魔するって。
おい! なぜそのことを言わぬ!
聞いちゃったんですよ自分。盗み聞き。
でもいけないことだから黙っていようと。
何でもいい。ここから抜け出すぞ!
荷物を持て!
それは文豪さんの仕事では?
いいから早く! 準備を済ませよ!
文豪さんは?
儂は皆に知らせに行く。
和室を抜け廊下を音を立てないように注意する。
女性陣が眠る部屋に到着。
儂じゃ。
驚かさないように囁く。
きゃあ!
うん?
爺さん最低!
ちょっと待ってくれ。それは誤解じゃ。儂はただ……
有無を言わせずに枕が飛んでくる。
女性陣は本気で身構えている様子。
キルルが本能で飛びかかろうとしている。
馬鹿者! 誰がお前らなど!
この非常時に面倒で仕方がない。
文豪! いやらしいわね!
下着姿のレイルとドロップ。
暗くてよく見えないのが問題だ。
レイルが構えた。
これは発散する動き。
まさか味方に発散するのか?
禁じられているはずだが。
ドロップが下着姿で前に出る。
ちょっと文豪! いくら爺だからってやっていいことと悪いことがあるでしょう?
だから誤解だって。
嘘! 襲いに来たんでしょう?
そうじゃ…… いや違う…… 儂じゃない!
あんたじゃないならいったい誰なのよ?
文豪に迫るドロップ。
誰?
えっと……
黙ってないで答えなさい!
それは俺達だよ。はっはは!
文豪の後ろから男共が入ってくる。
くそ! 遅かったか!
文豪?
ほれ。こ奴らを何とかしろ!
あなた達何者? なぜこんなことを?
なぜかな…… 俺らにも分からないさ。お嬢さんたち運が悪かったね。
こんな所に観光に来るなんて。
しかも付き添いがこんな爺さんじゃ。はっはは!
勝ち誇ったように大笑い。
悪いな。持ってるものを出してもらおうか。
馬鹿な人達ね。勝てると思ってるの?
レイルの発散。
キルルの一撃。
文豪のハッタリ。
どれをとってもこちらに分がありそうだが。
止めておきな。大人しく言うことを聞くんだな。
牽制する。
そっちこそ。大人しく退散したら?
私達はこれでも強いのよ。
ドロップは一歩も退かない。
そうかそうか。ではこちらも人質を使うか。
おい!
王子を引きずって来た。
お前らの仲間だろ?
こいつがどうなってもいいのか?
うぐっ!
どうした爺さん。返事は?
致し方ない。降参だ。
王子に何かあってはと女性陣も従う。
わっははは!
村長以下数名が文豪たちを取り囲んだ。
大人しくしてろ! そうすれば危害は加えない。
武器から防具。アイテム。所持金に至るまで全て奪われた。
服や靴も没収。
下着一枚にされてしまった。
男共はいやらしい笑みを浮かべる。
しかし彼らもプロ。
余計な感情は抱かない。
強盗。いや、追いはぎに徹している。
ゴミをポイ。
不要になった者を投げ捨てる。
悪いなお前ら。ここから飛んでもらうぞ。
そう言うと暗闇の中に落とされた。
さらば。冒険者。達者でな。
笑い声を上げる。
第八ゾーンから脱落。
第九ゾーンへ。
ぐしょん。
くっさ!
ここはどこ?
放り投げられたことで意識を失った。しかしあまりの臭さに飛び起きる。
何じゃ?
臭いわね。文豪。
儂ではない。
何これ?
立ち上がる。
これはゴミ?
巨大なゴミ集積所。
第八ゾーンのゴミをまとめている?
とにかく明るくなるのを待って行動を開始する。
とりあえずお風呂。
それから服。
食事も忘れてはならない。
王子? 王子?
レイルが心配そうに見やる。
王子はあまりの臭いと不衛生さにショックを起こし意識を失ったままだ。
まったく世話が焼ける。
ほれ。行くぞ!
頬を張り王子を無理矢理起こす。
ここはどこですか? 文豪さん。
さあな。お前はゴミの山に落ちて無事と見える。
王子はショックのあまり再び失神。
温室育ちはこれだから……
文豪は文句を言いながら背負ってやる。
後ろを頼む。
陽が差してきた。
しかしどうだろう。
朝だと言うのに明るさも限定的だ。
それは昨日も感じたことだが。
フィールドにはモンスターもおらず邪魔するものはいない。
ラッキー! だが張り合いが無く拍子抜けだ。
王子を背負うこと一時間弱。
もう町も人も諦めかけていた時小屋が目に入った。
中へ。
お邪魔します。
あらお客さん。これは珍しいわね。
どこから? どうやって?
興味津々のようだ。
年齢不詳の女性。
おばさんと呼べばいいのかおばあさんと言ったらいいのか。
若作りしている様子。
対応を女性陣に任せる。
若いですね。
そうかい……
見えない!
ははは。
一向に話が進まないので割り込む。
おいばあさん。ここはどこだ? 風呂は無いか?
まったくこの人は…… おっと休んでいきな。ここは宿屋になっているんだ。
まあ。誰もこんな所来る者はいないけどね。
今年初めてのお客様。五名様。ご案内。
おいばあさん。服は置いてないか?
そこまでは。でも少し行ったらショップがあるよ。
ばあさん……
これ! 爺さん。その口を何とかしな!
あまりに失礼な態度に怒り出した。
私はばあさんなんかじゃないよ!
すいません。すいません。
レイルが代わりに謝る。
文豪!
フン!
とりあえず風呂に入り臭いと汚れを洗い落とす。
続く
キャラクター紹介
文豪 この物語の主人公であり、リーダー
現世では有名な文豪
話を聞け! 儂は文豪だぞ! が口癖
地味な黄緑の和服を着用
カラー 黄緑
キルル 孤高の女戦士
美しさと力強さを兼ね備えている
文豪をある程度理解するが周りに影響されやすい
カラー 水色
レイル 光の戦士
発散と称して敵を倒す
上品なお嬢様
真面目で面倒見がいい
カラー 黒
ドロップ 初心者 地図係
大人しそうに見えて激しい
文豪と対立することがしばしば
女性陣をまとめる影のリーダー
カラー レモン
王子 初心者 荷物係
現在は文豪が荷物係を兼務
影の薄い王子
謎多きプリンス
今回の旅のキーマン
カラー 白