ドラゴンと老魔王
最終決戦へ。
ねえ聞こえない?
うん……
叫び声がするの……
はっはは! モンスターの雄たけびにいちいち反応してどうする。
それはそうだけど…… 違うのなんていうかその動物の鳴き声がしない?
まあ奴らは獣のようなものじゃしのう。
うーん。勘違いかな……
ドロップよ。お主は恐れておる。奴らが迫ってくるのを攻め込んでくるのをの。
幻聴が聞こえるようではもう持たんぞ!
文豪……
少なくても百体のモンスターが丘の下を包囲した。
後は合図で一気に襲ってくる作戦らしい。
一匹のモンスターが奇声を上げた。
それに呼応するように順に吠えていく。
うおおお!
あぎゃああ!
うおおお!
大合唱が始まった。
それに合わせてモンスターが突撃を開始する。
もう覚悟を決めるしかない。
応戦。
まず弱点になり得るティンを守る。
その窮屈な展開でモンスターの突撃を食い止めねばならない。
発散!
発散!
キル!
雑魚とは言え、夜ゆえにすべての力が倍となっており簡単には倒れない。
それどころか起きあがるものまで出てくる始末。
ほらもう一度!
まだできる!
文豪は皆を励ますがもう限界も近い。
発散!
発散!
キル!
キル!
ほれ頑張るんじゃ!
もうダメ……
最後まであきらめるな!
そんなこと言っても文豪……
いいから儂に続け!
逃走を図ろうにもモンスターがうじゃうじゃいるため道が開かない。
どくんじゃ!
いぎぎぎ!
うぎゃああ!
儂らのことは気にするな!
無茶苦茶よ文豪!
まずい戻れ!
文豪たちは元の場所に押し返される。
くそ!
文豪他に手はないの?
あったらもうとっくにやっておるわ!
文豪……
危ない!
モンスターの攻撃を受ける。
発散!
発散……
もうダメ! 文豪……
儂に任せろ!
発散!
発散!
発……
周りにいたモンスターだけは始末したがもう余力がない。
文豪大丈夫?
ああ。しかしこれでもう発散もできない。
レイルに続いて文豪も力を使い果たした。
後はキルルの新必殺技キルに賭けるしかない。
がしかしモンスターはまだ増殖中。
完全に劣勢。
後はモンスターに食われるかやられるかどちらかしかない。
ティン以外は不死身とはいえ食われるのは避けたい。
うおおお!
いひゃああ!
舌なめずりをするモンスターはもう勝利を確信したようだ。
涎を垂らしたモンスターが構えた。
最後の最後。
後は天に身を任せるのみ。
果たして祈りが届くのか?
空を仰ぐ文豪。
うん…… あれは……
この音……
ぎゃああ!
うぎゃああ!
遠くの空から得体の知れない化け物が迫ってくる。
まさかの仲間割れ?
そうだとすると今がチャンス?
脱出を試みるがモンスターの壁に追い返される。
文豪あれはたぶんドラゴンよ!
ドロップの目は確か。しかしドラゴンがなぜここに?
私たち助かるかもね。
ティンが口を挟んだ。
どういうことじゃ虫よ?
たぶん王子がもしもの為に送り込んだんだと思う。
王子がか? それは助かるのう。
レインボードラゴンが到着。
躊躇することなくモンスターを焼き払う。
レインボードラゴンの火炎攻撃でモンスターは数を減らす。
ドラゴンの攻撃から逃れたモンスターは立ち向かうことなく逃走を決め込む。
これにより包囲していたモンスターは一ケタになった。
ぎゃああ!
うぎゃああ!
乗れですって。
虫よ分かるのか?
ええ少しなら。
ティンに言われるままに降り立ったドラゴンの背に乗る。
ほら振り落とされないようにしっかりつかんで!
今回は文豪も乗ることを許された。
ラッキー!
ほらちんたらしないの爺さん!
急いで!
ティンが指示を送る。
全員乗ったわね?
おう!
ドラゴンは文豪たちを乗せ羽ばたいた。
残りのモンスターを一吹きで消滅させる。
とんでもない破壊力。
敵にはしたくない。
ティンが仕切る。
さあエリア2を調べ尽すわよ!
おう!
レベルアップ。
文豪はレベル98になった。
レインボードラゴンは奇声を上げモンスターを威嚇。
逃げ惑う奴らを容赦なく攻撃。
あっと言う間に残りのモンスターを蹴散らせる。
もうフィールドには一匹も見当たらない。
どうじゃ?
うーん。あれ何かな?
目の良いドロップは何かを発見したようだ。
外れの外れにひっそりと佇む一軒のお家。
周りの森や草木と同化するように立っている緑っぽい小さな建物を捉えた。
いわゆる隠れ家的存在。
怪しい。
よしここで降ろしてくれ。
もちろん文豪の言うことなど聞かないドラゴン。
ティンの説得で降下。
とりあえずここでよかろう。
ドラゴンは大人しく翼を閉じて目を瞑る。
文豪たちはドラゴンを残し謎の家へ。
ドン! ドン!
ダン! ダン!
反応が無い。
トラップも考えられるので慎重に中へ。
誰か?
誰かいませんか?
文豪だぞ! 大人しく出てこい!
おい!
その時奥の方から物音がした。
文豪たちはためらうことなく音の方へ走る。
お客さんかな。
何じゃ爺! お主だけか?
老人と言うよりも仙人のようない出立ち。
やせ細った男が椅子に座っている。
目の前には紅茶とケーキ。
豪勢なティータイム。
フォフォフォ……
お主は何者じゃ?
失礼な奴だ。私が何者かだと?
答えろ爺!
偉そうに。我は魔王なり!
うん?
お爺ちゃん嘘は良くないよ。
レイルが諭す。
お前ら魔王の正体を知らないのか?
何? お主が魔王だと言うのか?
フォフォフォ……
冗談は止めろ!
冗談なものか。私こそがこの世界を支配する魔王様だ。
お爺様いい加減にしましょうね。
ドッロップは怒りを抑えて対応。
魔王だと言っているであろう!
オーレは信じないよ。
信じる信じないは関係ない。ただの事実に過ぎない。
まったく爺さんは困ったのう。魔王がお前でないことは分かっている。
何? 証拠でもあるのか?
だから! 魔王とは一度戦ったんだってば!
ドロップが切れる。
そうじゃ。ドロップの言うとおり。確かに我らは一度魔王と戦い直接話もした。
それでも私が魔王だと言ったら?
仕方がないこのゴールデン・ソードをお見舞いするだけだ。
フォフォフォ…… なかなか。よろしい真実を教えてやるか。
老人は長話を始める。
続く