急襲! 奪還作戦開始
町外れの館。
二階から光が漏れている。
今まさに売買が行われようとしている。
何とかしなくては。
もちろんただの爺を入れてくれるわけもなく。
外で待機するしかない。
中では何が起こっているのか? 有り得ないような光景が目に浮かぶ。
絶対に仲間を取り戻すのだ。
もう時間もあまりない。
失敗は許されない。
会場は人里離れた山奥。
決して表だってやることは無い。
秘密のパーティー。
中にどう入るべきか?
いくら考えてもいい答えが見つからない。
やはりここは強行突破しかない。
行くぞ!
おう! って何考えてるのよ!
怖気づいたか?
もう少し考えたほうがいいわ。そう待つのよ。待ちましょう。
ティンに言われるまま大人しく待機。様子見ってところか。
まだかのう?
我慢しなさい!
漏れていた光が突如消えた。
誰か来る?
足音が聞こえる。
それも一人や二人ではない。
会場となった館から続々と人が溢れ出す。
いやいや参りましたなあ。
本当ですね。
まさかそこまで出すとは考えてもみませんでしたよ。
そうか?
まさに一人勝ちですね。
はっはは! いい気分だ。
しかしあのような者たちをどうなさるおつもりで。
それはもちろん…… 言える訳なかろう! ははは!
まあ大体は分かりますが……
話が弾んでいるところに邪魔が入る。
旦那様。旦那様。
何だまったくせっかく盛り上がってきたところだと言うのに。
あの準備が整いました。どういたします?
おう連れて来たか。
はい。しかしなかなか言うことを聞かないもので。
ふん。最初はそんなものよ。
大変ですね。では私どもはこれで。
ああまた楽しもう。
他の者は帰っていく。
うん? よく聞こえんのう。
繁みに隠れ様子を窺っている二人。
文豪。どう見える?
いやダメじゃ。暗くて良く分からん。
もう私が見てくる。
最初からそうせんか!
ティンは上空から様子を窺う。
おい! 貴様ら何をしておる! ご主人様の言うことを聞かんか!
ああ! 王子発見!
王子を先頭にキルル、レイル、ちょっと離れてドロップが姿を現した。
一番後ろで男がまくし立てている。
旦那様がお怒りだ。早くせぬか!
ほら早く歩け! いいか? お前らはもう逃げられないんだよ。
何をしておる! 早くせんか! みっともない!
見た限り文豪よりも上でいやらしい爺。下品で成金と言ったところか。
ただ第四エリアにいると言うことは本物。大富豪も伊達じゃない。
それよりも年上と見える使いの者。人相は悪くやり手と見える。
文豪!
おう。どうじゃった?
やっぱり私達の勘が当たったようね。みんな揃っているわ。
そうか。それで無事なのか?
さあそこまでは。
しかしなぜ逃げない。キルルだっているのに。
さあ。たぶん王子を人質に取っているんだと思う。
じゃが逃げようと思えば……
それは無理。鎖でつながれている。
簡単には自由にしてもらえないみたい。
まあ当然か。
どうする文豪?
ここは急襲しかないじゃろ。
確かに…… 文豪気をつけて。もしモンスター以外を攻撃したらゲインを没収されるかもしれない。あと王子の扱いも慎重に。
任せろ!
救出作戦開始。
おい! 何か気配がしないか? 遠くの方で……
気のせいでしょう。ここは安全地帯。
そうか。まあいい。
旦那様。そろそろこの辺に。あれ?
ああ。トラックが見当たらんが。
遅れているようですね。旦那様は先にお車の方に。
うむ。少しは外の空気に当たるのも良かろう。
暗いのでお気を付けください。
うおおお!
文豪はティンの忠告を無視してレインボーソードを振るう。
何奴?
まともに文豪の剣が突き刺さる。
使いの男を倒した。
物凄い勢いでゲインが減っていく。
おい大丈夫か? ちとやり過ぎたかの。
もう文豪ったら! 全然分かってない!
済まん済まん。
大丈夫みたい。まだ息がある。
ティンが治療してやる。
意識は戻らないがそのうち目が覚めるだろう。
おお…… お前ら!
腰を抜かして倒れ込んだ富豪。後退りをしてどうにか逃げようともがいている。
往生際の悪い爺。
よし成敗!
文豪! 構わないの! 救出が先でしょう。
文豪!
文豪!
文豪さん!
全員の鎖を外し拘束を解く。
大丈夫か?
痛くないか?
文豪!
おいおい抱き着かんでも良かろう。
文豪!
待たせたな。
文豪!
リーダーとして当然のことをしたまでよ。
文豪さん!
王子も無事で何よりだ。どこか痛むか?
いえ大丈夫です。問題ありません。
これでようやく五人に戻った。
ああ、眠くなっちゃった。私はひと眠りするわね。
うむ。虫よ。よくやってくれた。
ティンは役目を終え再び文豪の中へ。
お助けキャラのティンの活躍で難局を乗り越えた。
これで再び五人の旅が始まるか?
おい! 私を怒らせてただで済むと思うな!
ふん。負け惜しみを。早く立ち去るんだな!
強盗の分際で何を抜かす!
富豪は正当性をアピールする。
こいつらは私が買ったのだ。それを無理矢理奪うなどあって良いものか!
うむむ。確かに一理ある。
文豪さん。騙されないで!
騙す? 騙したのはお前らではないのか? ゲインを出させるだけ出させておいて無理矢理奪うなんて滅茶苦茶だ。違うか?
確かに一理ある……
だから文豪! こんな奴の話聞いちゃダメ!
ドロップよ。しかしな……
さあ行きましょう。ここを離れるのよ。
オーレもレイルに賛成。
うるさい! こいつらを連れて行くと言うのならゲインを置いていけ!
少なくても私の払った倍のゲインを出すのが礼儀だろ。
そうしたら大人しく引き下がってやる。
うぐぐ! 痛いところを突いてくるわ。
気にしないで行くのよ文豪!
しかし奴の言い分も分かる。
いくらじゃ?
二億ゲイン。いや三億ゲインだ!
おい! 無茶を言うな!
払うんだろ?
ほら文豪。あいつは無視して行こう。
おい何とかならんか?
ゲインで無理なら物でもいいぞ。
よし。
私はコレクターでな。ドラゴンの羽を集めている。
あと一つでコンプリートだ。
ドラゴンか。うーむ。
幻のドラゴン。レインボードラゴンの羽を持って来い!
いつまでだ?
今すぐだ。そうだな少なくとも明日までに持って来い!
無理を言うな!
うるさい! ならばゲインを持って来い! 私はどっちだっていいんだからな。
また買い直さないといけないとはまったく大損失だ。
無理矢理約束させられてしまう。
文豪気にしなくていいよ。先に進むのよ。
うーん。まあ確かに……
文豪さん。行きましょう。
よし出発じゃ!
文豪たちは歩き出す。
続く