秘密の泉
持てるだけの石を手に出発。
明かりがこんなに有難いとは思わなかったわ。
よし着いてきて!
ティンが張り切る。
こっち。こっち。ああ待って。止まって……
文豪危ない!
ティンの後を考えもせずにただ着いて行った。
しかし急な下りとになっていて真っ直ぐに突っ込んでしまう。
うわああ! 止まらん!
馬鹿! 手と足を…… ダメだもう遅い。
下りの終点に構えていた壁に挟まって事なきを得る。
大丈夫文豪?
苦しい!
暴れないの。首はどう?
問題ない。
抜けられる?
うーん。うーん。
肩がどうしても抜けん。
困ったわ…… そこで一生を過ごす?
馬鹿を言え! 文豪だぞ!
分かった何とかしてみる。
とりあえず壁を破壊するしかない。
発散!
止めてくれ! 儂に当たる。
そっか。味方には発動しないんだった。
虫! 他の方法はないのか?
今考えてる!
早くしてくれ!
どうしたの?
漏れそうじゃ! 早く頼む!
もうお爺さんなんだから。
ハハハ
ハハハ
二人は笑いあった。
そんな呑気でどうする?
あんたも笑ってたでしょう!
頼む早くしてくれ!
分かった。じっとしててね。
そうだ手榴弾は?
待ってくれ……
大丈夫。これは魔法じゃないから問題ないでしょう。
儂の体がバラバラになってしまう。
それくらい我慢。
我慢できるか! 面倒だからやめてくれ!
それもそうね。うーん。
モンスターが現れた。
こんなくそ忙しい時にもう……
洞窟蜂のハニーが三匹で襲ってきた。
痛い痛い!
どうした何が起きた?
大丈夫。私は大丈夫だから。
はあ? 言っている意味がまったく分からん。
文豪は蜂に刺されたことある?
儂は文豪だぞ!
なら大丈夫そうね。
チクチクするのだが……
もうしょうがないわね。
こっちよ。
ティンが誘い出す。
文豪に群がっていたハニーが一斉にティンへ。
発散!
三匹は致命傷を負う。
はちみつを落としていった。
大丈夫文豪?
ああ、まだチクチクするがな。
大人しくしてて。
文豪の体にはちみつを塗ってやる。
気持ちわる!
ほら大人しく。
うん?
いつの間にか壁抜けに成功。
助かった!
さあ急ぎましょう。
一歩前進。
モンスターが現れた。
洞窟ベアーが興奮している。
何じゃこいつ?
はちみつに釣られた来たみたい。
私はちょっと……
洞窟ベアーははちみつで味付けされた文豪に襲い掛かった。
このクマが!
最新の剣の威力を見せてやる!
剣を横にして走り出す。
ぐおおお
熊を真っ二つ。
お見事。
そろそろ食事にしましょう。
うむ。無駄にはできん。
ふう。食った食った。もう食えん。満腹じゃ。
残りは袋へ。
熊の肉をゲット。
腹も膨れた。後は寝るだけだな。
仮眠を取る。
夢を見る暇も無く覚醒。
起きて文豪!
もう少し……
囲まれてるわよ。
モンスターが現れる。
胞子まみれが周りを囲んだ。
気持ち悪い……
何用?
反応しない。
それどころか殺気を感じられない。
どうしたのかしら?
知るか! もうひと眠り。
ほらふざけてないでちゃんとしなさい!
虫の癖に……
体で何かを伝えている?
体を揺らして訴えかけている。
その見た目からして受け付けられない。
文豪を仲間だと思ってるんじゃない?
何をしても取れない胞子がまだくっついている。
よし。分かった。行くとしよう。
文豪は立ち上がり前へ。
胞子まみれは一斉に動き出す。
まるで誘うかのように。
文豪大丈夫?
何とかなるじゃろ。
胞子まみれの後を追い駆ける。
胞子まみれの集団に一人の爺。
なるべく距離を取ってティンがついて行く。
ここは最深部?
息が苦しい。
酸素が不足している。
うぐぐぐ。
大丈夫文豪?
息が息が……
我慢して!
我慢? 苦しくないのか?
私は大丈夫。妖精ですから。
もうダメじゃ。
胞子まみれから遅れてしまう。
しっかり文豪!
助けてくれ!
このままでは危険。
その時だった。
胞子まみれの動きが止まった。
文豪を待っているのかと思いきや一斉に姿を消した。
どういうことじゃ?
意識を何とか保って胞子が消えた場所へ。
ハアハア
フウフウ
苦しいなんてものじゃない。もう疲れた。
ほら頑張って。
あれは……
泉。
小さな泉。
ここからでは深さは良く分からない。引き返すべきか?
だが奴らが消えたのだから何かあるに違いない。
行くしかないみたいね。
儂は泳げん!
心配ない。彼らも泳げそうに見えなかった。
苦しい……
迷ってる暇はなさそうね。行きましょう。
殺生な! 責任は取ってもらうぞ。
水に浸かる。
急いで!
急かすな! まずは体を慣らしてから……
文豪でしょう?
文豪じゃ! こんな水などへでもないわ!
泉を泳ぐ。
正確には溺れている。
すぐに底が見えた。
多少濁っているが視界は悪くない。
前に大きな穴が見える。
これは秘密の抜け道?
息が続く限り泳ぎ続ける。
穴はどこに繋がっているのか?
穴を抜けるとすぐに新たな穴が現れる。
第二の穴を抜ける。
苦しい!
息がもう続かない。
ただでさえ苦しかったのにこれ以上苦しめないでくれ!
しかしただ泡が経つだけで誰にも声は届かなかった。
意識が朦朧とする中先に光が見えた。
幽かな光だ。
わずかな希望。
後は気力だけ。
文豪としての意地。
苦しいよ! 誰か! 誰か! 助けてくれ……
そのまま息絶える。
続く