第六エリアに到着 霊魂村
上昇中。
竜の餌を試食。
ポリポリ
ボリボリ
うまい! こ奴にはもったいない代物だな。
文豪!
はっはは! 食べても大丈夫ですよ。私もたまに摘まんでますから。
うむ。うまい! ドロップもどうじゃ?
遠慮しておくわ。
毒でもあるまいし。そうじゃろ?
ご心配なく。ただお腹を壊すだけですから。
何? 冗談じゃろ?
ははは!
どっちじゃ?
竜は上昇。
あっと言う間にエリア6まで到達した。
後は降りるだけだが……
案の定。邪魔をしてくる集団。
ぎゃあ
ぐぐが
耳を塞ぎたくなるほどの強烈な鳴き声。
大丈夫です。味方は襲いません。
監視を続けるドラゴンたち。
後をついてくるが手出しはできない。
竜の集団は興味を失ったのか帰っていった。
降下。
さあ着きましたよ。
ここがエリア6です。
ようこそ。
竜は低空飛行で旋回。
ジャンプ!
手荒に背中から降ろされる。
私どもはこれで。
良い人改め竜使いは帰っていった。
エリア6。
どうしよう文豪?
うむ。時間も迫っていることだ、上に繋がる道を探すぞ。
森を抜ける。
ガサガサ。
森の精霊が現れた。
現れたな化け物。叩き切ってやる!
文豪のやる気に火が付いた。
うおおお!
僕の……
有無を言わずに切り刻む。
しかし手応えがない。
文豪頑張って!
声援に応えてもう一発。
しかしすり抜ける。
何かを失った気がした。
くそ今度こそ!
待ってください文豪さん!
王子は何かに気付いた様子。
三度目の攻撃も効かない。
奴は無敵か?
はい。それどころかゲインがどんどん減ってます。
どう言うことじゃ?
文豪。とにかく落ち着いて。早く止めて!
ドロップが前に出る。
我はこの森の精霊。
この森を荒らすいかなるものにも容赦しない。
済まぬがここを通してくれぬか?
できない相談だ!
急いでおる。
知ったことか!
精霊を怒らせてしまった。
厄介な事になって来た。
お願いです精霊さん。私達をお導きください。
何? 導いて欲しと?
はい。どうかお願いします。
そうか。そこまで言うならば着いてくるがよい。
ドロップの機転で精霊を味方に。
ここは死と生を司る精霊の森。
お前らには生をくれてやる。
墓場。
このエリアの者のだろうか。墓があちこちに見られる。
無敵の精霊は危険エリアを回避しつつ森の奥深くへ。
もちろんこちらからは奥深くなのだが当然村に近づいている。
大丈夫か?
問題ない。大人しくついて来い!
精霊が現れた。
くそ! うおおお!
文豪は新たに出現した精霊に切りかかる。
待って文豪! 彼らは敵じゃない。きっと……
ゲインは再び減り始めた。
引き継ぐ。
文豪たちは新たな精霊の後を追う。
そうして何度か続け村らしきものが見えて来た。
森を抜ける直前。
精霊が姿を消した。
迷うことなく最短距離で村へ。
霊魂村。
レンコン村? ヘンテコな名前の村だな。
レイコンよ。
どっちでも良い。どうせレンコンが置いてあるんだろ。
文豪のボケにいちいち付き合っていられない。
さあ行くわよ!
文豪を無視してアイテム収集と情報交換に向かう。
村の第一印象はとにかく暗い。
覇気が感じられない。
文豪が浮いている。
もとから浮いているがこの村では特に目立つ。
表に人を見かけない。
昼間だと言うのに人は家に閉じこもったままだとでも言うのか。
人の気配が無い以上無理矢理にでも押し入るしかない。
誰か! 誰かいませんか?
片っ端から扉を叩く。
ドンドン
ダンダン
しかし反応が無い。
これでは埒が明かない。強硬手段に出る。
文豪の演説が始まる。
儂の話を聞け!
儂は! 儂は! 文豪だぞ!
皆の者儂の話を聞け!
はい?
反応があった。
老夫婦が現れた。
お主ら儂を誰と心得る。文豪様だぞ!
あれまあ。知っているかい?
さあ。初めて聞くよ。
助かった。とりあえず挨拶を済ませ話を聞く。
ここはのどかですからね。ねえお爺さん。
ああ。そうだとも。
お茶でもいかがですか?
それはそれは。
そちらのお爺さんも。
誰が爺じゃ!
文豪!
お言葉に甘えて茶を一杯。
ついでに団子も一つ。
私達は冒険者なんです。
それはまあ大変だこと。ねえお爺さん。
うん。うん。
この村はその……
ああ。霊魂村かい。別に怖がらなくていいよ。ねえお爺さん。
そうだそうだ。ちょっとばっかし不思議なことが起こるだけだから。
不思議?
ははは!
老夫婦はこちらの様子を窺う。
冗談冗談。レンコンの産地なだけさ。
レンコン?
ああレンコンがなぜか霊魂に変わっちまってね。
そうそう。見ていくかい?
丁重にお断りする。
それで何だい。聞きたいことがあるんだろ?
えっと…… ここはエリア6ですよね?
分からん。儂らはここから出たことがないから。
何? では手がかりは無しか?
文豪!
ふん。では上の行き方は分からないのだな?
そうですよお爺さん。
誰が爺だ! 儂はまだ若いわ!
文豪!
人が少ないようだが?
ああ。そうです。この辺には私らのような年寄りしかいないのです。
そうじゃ。そうじゃ。若い者は出て行ったわ。
どこに?
それはほれ。
上を指し示す。
行き方は知らないのではなかったのか?
ええ。私らは本当に行き方も知りませんし。この村を出たのも数えるほどで。
なあ婆さん。
はい。
お茶を啜り昔の思い出に花を咲かせる。
話が長くなる前に失礼することにした。
村でレンコンを買う。
いい記念だが果たして役に立つ時が来るのか。
文豪。さあ行きましょう。
霊魂村を後にする。
続く