変態博士 取り扱い注意
第九エリア。
朝。
遅い朝食を済ませ三博士の元へ。
大丈夫か皆?
ええ。服は完璧。でも下着が……
女性陣は不満そう。
もちろん予備の下着は用意していた。しかしすべて没収されてしまったのだ。
何でも奪っていく。それが奴らのやり方。
前回と同じ展開。
汚れて使えなくなった服を捨て新しい物を買う。
しかし分かっていたことだがこの第九エリアには下着はどこにも置いていない。
男はそれでも構わないが女性にとってはあまりにも辛いこと。
彼女たちの受難はまだ続く。
悩ましい問題だ。
三博士に会いに行く前に村に寄ることにした。
最果ての村。
お主ら。旅の方か?
村人が集まって来た。
あれ。久しぶりだね。
覚えていてくれたようだ。
村の歓迎を受ける。
彼らも暇なのだ。
とりあえずクエストをこなす。
これを変態博士に。大至急。
俺も頼もうかな。これをナリキ博士に。
前金をもらいアイテムを揃える。
老勇者の館はまた次の機会にして先を急ぐことに。
村を出ようとしたその時だった。
これから三博士のところまで行くんだろ?
男が忠告する。
気をつけな。上手くやらないととんでもないことになるぜ。
とんでもないこと?
ああ。ナリキ博士は金の亡者だ。
いつだって金。金。
何か頼むならそれ相応の物を収めないと協力しない。
変態博士はその名の通り変態だ。
色気で誘うのはまずい。
最後にメガネ博士だが奴も困った奴だ。
お人好しで頼まれたら断れない。
もし依頼するなら女子供を使え。情に訴えればイチコロさ。
うむ。心得た。
よしこれは情報料だ。
そう言うと勝手にゲインを取っていってしまう。
そうそう。順番にも気をつけろ。
奴らはプライドが高い。
最初に訪ねなければ相手にしない。
まあ。メガネ博士は気にしてないみたいだけどな。
それと絶対に取り扱いを間違うな! 危険だ!
忠告したからな!
親切な若者は行ってしまった。
果たして従うべきなのか。迷う。
歩き出す。
どうしよう文豪?
まあ。何とかなるじゃろ。
文豪お願いね。交渉はリーダーに任せた。
面倒臭いのう。ここはドロップさん……
ほら冗談言ってないで見えて来たわよ。リーダー!
三博士は今日は全員いるようだ。
とにかく第九エリアを脱出するためには協力を仰がねばならない。
軽く叩く。
反応が無い。
留守なわけない。居留守か?
ドンドン
ドンドン
扉が開いた。
あー。もう! うるさい!
研究に没頭していたようでイヤイヤ扉を開いたのが分かる。
要件を伺おう。
うむ。これをあなたにと。
変態博士は警戒を解いた。
助かった。それでどのようなご用件で?
この世界を抜け出したいのだ。協力してくれぬか?
あんたら異世界からの冒険者かい?
まあ。そう言うことじゃ。
変態博士は後ろの女性陣に興味を示す。
うーん。協力してやらんこともないがな。へへへ。
いやらしい目つきで上から下に視線を動かす。
頼む! お願いだ!
こっちも忙しいんだよ。
文豪は混乱。
情に訴える?
彼女たちを見てくれ。誰も下着を着けていない。
朝からずっとじゃ。可哀想だと思わんか?
下着を…… 無いの…… へへへ。
では女性陣とお話をしましょうか。お二人は外でお待ちください。
うむ。従うとしよう。
扉が閉まる。
文豪さん。大丈夫なんでしょうか?
王子も心配性じゃなあ。村人の指示通りにやったのだ問題ないはず。
間違っていませんか?
そうじゃったかのう。まあ問題はない。
五分経過。
悲鳴と物音が漏れてきた。
お助け!
変態博士が突っ込んできた。
何事じゃ?
文豪! そいつを捕まえて!
王子が変態博士を取り押さえた。
何があった?
こいつ理性を失って襲ってきたの。
ただの変態よ!
キルルが助けてくれたからよかったけど。
オーレもモンスターが居なくて体が鈍っていたからちょうどいいストレス発散だよ。
愚かな。相手はナイト。タダの変態爺では……
よしとどめだ!
ひえええ!
お主。なんてことをしたのだ。反省しろ!
ひいい。お許しください!
土下座をして謝る。
許せない! そこで大人しくしてろ!
まあまあ。キルル。皆も。奴も反省しているのだしそれくらいで。
文豪!
何でもします! だからお許しください!
よし。ならば心を入れ替えて儂らに協力せい!
はっはあ!
文豪の機転で変態博士を取り込んだ。
これだこれ。
急いでくれんかのう。彼女たちを抑えるのも大変でな。
分かりました。すぐにでも!
ヘリを用意してもらう。
お高くなっております。
もちろん。タダじゃろ?
へいへい。そのように。
あの。まだ不完全なんです。お気をつけて。
お前が操縦するんじゃ!
完成したばかりのヘリを飛ばす。
プロペラが回転し上昇。
前回の森まで低空飛行で向かう。
よしこころからが本番。
変態博士に操縦を任せ大空を舞う。
気球とは比べものにならないほどの速さ。
一気に第六エリアを超える。
いいぞいいぞ!
私の作った物に間違いなどない。
うむ。もっと上へ。うう…… 気持ちわる。
文豪また酔ったの? あんたも大変ね。
ドロップ。ドロップをくれ。
文豪ったら…… 困ったわねえ……
満更でもない顔。
いや違う。アメは無いのか?
文豪ったら照れちゃってかわいい。
ドロップは完全に違う世界に行ってしまった。
文豪。ほらこれを飲んで。
レイルが道具袋から即効性の酔い止めを渡す。
済まん。助かった。
大丈夫か文豪?
キルルが背中をさする。
リーダー!
文豪!
文豪さん!
症状は改善された。
文豪復活。
大丈夫ですか文豪さん。間もなくエリアスリーです。
変態博士の操縦で順調に上昇。
このまま行けば魔王までたどり着ける。
後はトラブルが無ければ……
ぎゃあぎゃあ
ぎゃあぎゃあ
再びの悪夢。
あと少しのところでドラゴンの邪魔が入る。
続く