託言の真命
その力に気づいたのは私が10歳の頃。
私が名前を付けたお花やお犬さんや、お人形さんが不思議な力を持ったり、生きているみたいに動くようになった。
その後、程無くして私の親や周りの大人達が私のその力を見つけた。みんなは私のことを「名付けの巫女」と呼び、暗いお堂に閉じ込めていろんなものに名前を付けさせた。どこかの偉い人や、人を殺すための怖い道具とか本当にたくさんのものに名前を付けた。そのころはまだ何かに名前を付けるのが楽しくて楽しくてたまらなかった。
15歳になって私はお堂の中での生活が嫌で嫌でたまらなくなった。最初楽しかった「名付け」も苦痛なだけのただの作業になった。そして、私がたまに言われたとおりに名前をあげずに口をつぐむようになると、父さんは怒ってひどく私をぶった。私はそれが辛くて辛くて、こんなところから早く逃げ出したいと思うようになった。
16歳になったとき、親が言業師だと名乗る男の人を連れて来た。その人はしばらく私と話をした後にこう言った。
「君の言葉の持つ力は本当に素晴らしい。だけどその力は人を英雄にも、化け物にもする。た だのなまくらの剣でも万人を殺す魔剣にできる。その力を使い間違えぬよう、しばらく私が いろいろと教えてあげよう」
その人は自分のことを「創言の西鶴」と言い、私に様々なことを教えてくれた。私の不思議な力が言業と言うものの一種であること。正しい言葉を用いて力を使えば、私の思うような結果を生むことができること。
私はいろんなことを優しく教えてくれるこの男が、いつか私を自由にしてくれるのではないかと期待した。
しかし、西鶴は私を決して自由にはしてくれなかった。西鶴も結局、親や周りの大人達と変わらなかった。私はいつの日か全てをあきらめようと考えるようになった。
そう本当にそんな時だった。彼が私の目の前に現れたのは。