第90話 みんなを笑顔に!
海音と一緒にカフェに戻ると、星乃が心配そうな表情で店先にいた。
落ち着かない様子できょろきょろと周囲を見回している。
「よう、誰を探してるんだ?」
俺が後ろから近づいてそう言うと、星乃は花が開いたかのように笑顔になる。
そして、俺の胸ぐらに掴みかかった。
「先輩! なんであんなことしたんですか! 先輩みたいな陰キャヒョロガリが無茶しないでくださいよ!」
「えっと、でもほら……奇跡的に無事だったわけだし、結果オーライというか――」
「あの人が助けに来なかったら怪我してたかもしれないんですよ! 絶対に……絶対にもうあんなことしないでくださいね!」
「いやまぁ、その……ごめんなさい……」
どうにかおちゃらけて誤魔化そうとしたが、星乃の目に溜まった涙を見て素直に謝まろうと思った。
大分怖い思いをさせちまったらしい。
気まずい空気になる直前に俺の後ろにいた海音が大きな両手をパチンと合わせる。
「まぁまぁ、いいじゃないですか! 悪いのはお二人ではなくあのチンピラたちですし! それよりお2人とも夜ご飯はまだですよね? ウチで食べていきませんか?」
「おぉ、それはいいな! ……てかよく考えると、絡まれたきっかけは星乃だよな。何で俺が星乃に謝って――」
「先輩、悪いのはあの不良たちです! 早く美味しい物を食べてあんなの忘れちゃいましょう!」
星乃は俺に考える間も与えずに腕を引っ張って店内へと入っていった。
「というか、先輩みたいな人がなんでこんなお洒落なカフェの強面マスターさんとお知り合いなんですか?」
カウンターの席につくと、星乃は首をかしげた。
「え~と、それはだな……」
俺が必死に言い訳を考えていると、海音がコーヒーを淹れながら笑顔で語り始める。
「凛月さんが私に居場所をくれたんです。こんな……人を怖がらせてしまうような風貌の私が人々を笑顔にできる場所を。だから、凛月さんは私の恩人なんですよ」
突然そんなことを言い出したので、俺は慌てて誤魔化す。
「えぇっと! このお店、俺の親父が海音に譲ったんだよ!」
「あっ、そういうことなんですね! なるほど、美味しいコーヒーでみんなを笑顔に! 素敵なお話ですね!」
星乃は想像力を働かせて微妙に違う場所に着地してくれた。
海音め、突然こっぱずかしいこと言いやがって。
俺がバンドに勧誘したことをそう思ってくれているのは嬉しいが……。
絶対に俺を困らせるために言ったな。
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