第87話 俺が死にます
分かってたけれど、ダメそうだ……絶対に見逃してもらえない。
仕方が無く、俺は星乃が聞こえるように小さな声で早口に囁く。
「星乃、さっきカラオケ屋さんを出た時左手におしゃれなカフェがあっただろ?」
「せ、先輩? 何ですかこんな時に──」
「一人で行ってそこのマスターをここに呼んできてくれ。助けになってくれる」
「な、何言ってるんですか! その間に先輩が──」
「いいか? 俺が隙を作ったら後ろに走れ。──今だっ!」
俺は持っていたスクールバッグを一番前のチンピラの顔に投げつける。
「ぶわっ!?」
ひるんでいる間に星乃は「あぁ、もうっ! 絶対に無事でいてくださいよ!」と声を上げて指示通りに走って行ってくれた。
「女が逃げるぞ! 追え! ──ぐへぇ!」
「おう! ──ぐえぇ!」
俺は渾身の足払いを仕掛けると、残りの不良2人は転んだ。
よし、十分に時間は稼げた。
星乃はもう大通りに出られただろう。
正面にいたチンピラは顔にぶつかったカバンを投げ捨て、転んでいた2人のチンピラたちは立ち上がって、額に太い血管を浮かべながら俺を睨んだ。
(星乃、助けを呼んで戻って来てくれ、一刻も早く……じゃないと──)
「てめぇ、ぶっ殺すぞこらぁ!」
「……こりゃーマジでアレだわ。アレした後にアレしてやんねーと」
「おい、陰キャ野郎。あの女が警察を連れてくる前にてめぇをボコして攫うからな」
(俺が死にます)
俺はポケットからヘアゴムを取り出して髪の毛を後ろでまとめ上げる。
そして、眼鏡が割れないように外して脱いだブレザーに包んで端に置いた。
……仕方がない、星乃が助けを連れて戻ってくるまでに何とかあがいてみせる。
俺は啖呵を切った。
「上等だ、一人ずつかかってこい! 三対一はズルいからな!」
「全員でかかるにきまってんだろうが! オラぁ!」
俺の提案も受け入れてもらえず、この狭い路地裏でストリートファイトが始まってしまったのだった。
皆さんが新作を読みに行ってくださったおかげで、新規の読者様からレビューもいただけました!
本当にありがとうございます!
打ち切られないよう、また新作も上げて本作を読みに来る方を増やしたいです!
かなり贅沢を言うと、今読んでくださっている方々が一人一冊ずつ紙の本で買ってくだされば確実に重版して続けられそうなので買っていただきたいです……。
とはいえ、☆ポイント評価を入れていただいているだけでも非常に助かっていますので、無理のない範囲で!
今後ともよろしくお願いいたします!<(_ _)>ペコッ





