第83話 写真はピースで!
「――ていうか、歌上手いじゃないですか! 先輩のくせに!」
部屋に戻ってくると星乃は俺の歌を褒めてくれた。
「そ、そうか!? いや~実はお風呂でよく一人で歌ったりしてるんだよ! あははっ!」
なんとか誤魔化した。
何万人から毎日ネットを通じて言われている言葉だが、あの星乃が褒めてくれているというだけでめちゃくちゃ嬉しい。
「分かります! 私もついつい歌っちゃうんですよね~。あっ、そうだ! 今先輩が歌ったの、採点が出せるんですよ!」
「……採点?」
「はい! 実は曲が始まる直前にこっそりと設定したんですよ。ヘタだったら先輩のこと死ぬほど笑いものにしてやろうと思って」
「めちゃくちゃ性悪じゃねえか……しかも結局笑ってるし」
星乃はそう言って、デンモクのボタンを押す。
「まぁ、でも普通に高得点が出そうですね~。つまんないなぁ」
「歌が上手くても下手でも悪口言われるのかよ。ありがとうございます」
そして、星乃と一緒に画面を見つめていると、その左上には『100.00』の文字が出た。
星乃は驚愕の声を上げる。
「え!? 百点!? やば、初めて見た……」
「出にくいのか?」
「出にくいどころじゃないですよ! この辛口採点は本人が歌っても出ないって言われてるんですから! ……そ、そうだっ! 記念に写真撮らないと!」
「そんなに凄いのか……。う、運がよかったんだな!」
俺が誤魔化そうとしていると、星乃は気にせず俺の袖を引っ張る。
「先輩、何してるんですか! 早く私の隣に来てくださいよ! 写真撮るって言ってるじゃないですか!」
「えっ? いや、そんな急に――」
「いいから早く私の隣に並んで! 百点なんて本当にすごい事なんですよ! もっと近づいてください! はい、ピース!」
「ピ、ピース……!?」
俺が戸惑っている間に星乃は満面の笑みで俺に近づいて写真を取る。
よほど興奮しているのか、星乃の頬が赤く染まっていた。
「よし! 完璧です!」
星乃は撮った写真を見ながらニタニタと笑っている。
その理由はだいたい想像できた。
「おい、絶対に俺が変な顔してたんだろ。今撮ったの見せてみろ」
「ダ、ダメですよっ! これは私のです! 先輩にはあげません!」
「えっ、こういう時って写真は共有するんじゃないの? くそっ、誰かと写真撮ったことがないから分からん……」
何度も写真を見返してはニマニマと笑う星乃を見て、俺はため息を吐いた。
いつも読んでいただき、ありがとうございます!
お察しの通り、小説版は続きを出していくのが困難な状態ですので、打ち切りかどうかはコミカライズの売れ行きにかかってます!
自分としても本作の投稿を続けていきたいので、ご検討中の方は本を購入していただけますと本当に助かります!
明日も引き続き、頑張って投稿していきます!
よろしくお願いたします!





