第82話 笑いすぎですよ、星乃さん
歌い終わると、星乃はボーっと画面を見つめたままだった。
なにやら呆けているようなので俺は声をかける。
「星乃、どうだった?」
「――へ? あぁ! すみません、ちょっと考え事をしてしまって! なんていうか、シオンにしてはあまり聞かないような曲だったので! 歌詞も何だか独特で……あはは」
よかった、聞いてはいてくれていたみたいだ。
退屈すぎて目を開けたまま寝てたとかじゃなくて良かった。
「知らない曲で悪かったな。でも俺はこの曲が好きでさ、星乃にも聞かせたかったんだ」
自分を大切にする。
成りすましていることも含めて自分は自分だ、それは悪いことじゃない。
それが当時の俺が俺らしくいるためにたどり着いた答えであり、こうして歌詞として残していた。
だから星乃にも自分を嫌いにならないで欲しい……。
そう伝えたかった。
「自分の気持ちを大切に……か。確かにシスコンでオタクな先輩が好きそうな曲ですね! あははっ!!」
しかし残念ながら、星乃の心には響かなかったらしい。
滅茶苦茶笑われてしまった。
そりゃそうだ、俺なんかが星乃の心を分かった気になっている方がおこがましいだろう。
さっき俺が考えたのも全部勝手な妄想だ。
自分と似ている気がするからって俺と同じことで悩んでいるなんて限らないじゃないか。
「あははっ! 本当に! わ、笑いすぎて涙が出てきました! ぐすっ、あははっ!」
そう言って、星乃は瞳に溜まった涙を拭った。
どんだけ笑うんだよ、もう号泣じゃねぇか。
「わ、私ちょっとお手洗いに行ってきますね! あ~、面白すぎて涙が止まりません」
「おう、不審者と間違われないようにな」
「先輩じゃないんですから大丈夫ですよ~。ぐすっ……」
完全に星乃のツボにハマってしまったらしい。
確かに、この曲自体が俺の黒歴史のようなモンだし、そんなの陽キャの前で披露したら笑われるに決まってるか。
だけどまぁ、こんなのでも一応笑顔にはできたからいいか……嘲笑だけど。
(今のうちに会計済ませとくか、もう暗くなるから延長はしないだろうし……)
星乃が部屋に戻ってくるのは思ったよりも少し遅かった
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