表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
9/111

第9話 映画館に行こう!

 

 金髪のカツラをかぶり、簡単な女装を施した俺と琳加(りんか)は地元の駅を出発した。

 渋谷へ向かう電車の中、琳加は女装している俺に話しかけてくる。


「ねぇ、"リツコちゃん"。映画楽しみだね!」


 ニタニタした表情で琳加は俺を煽る。

 俺には凛月(りつき)という男らしい名前があるのに。

 くそっこいつ、状況を楽しんでやがるな。


「あっ、ごめ~ん。流石に電車は周りの人が近いから声を出したら男の子だってバレちゃうね」


 ニヤニヤが止まらないまま、琳加は小声で俺に呟いた。

 なぜか美少女に弱みを握られている感覚……。

 くそ、何かに目覚めそうだ。

 とにかく、一方的にヤラレっぱなしも性に合わない。

 少し驚かせてやろう。


「そうだね、琳加ちゃん! 私、すっごく楽しみっ!」

「――えっ!? 女の子の声!? 何でっ? どうなってるの!?」


 俺の得意技を披露すると、思った通り琳加は面食らっていた。



 "七色(なないろ) シオン"。

 この芸名が付けられた理由は『七色の声が出せる』という理由からである。

 "奇跡の歌声"とまで評されている理由の一つは声域がとんでもなく広い事だ。

 なので、実は女性の音域も出そうと思えば出せる。

 他にもできるアーティストはいるが、俺ほど完璧ではないらしい。

 俺は発声練習無しでスイッチを切り替えるように声を切り替えられるほどだ。

 その中にはもちろん、『シオンの声』もある。



「うそ……もしかしてリツキって女の子? 道理で少しナヨナヨしてるし……」

「あら? 琳加さん、ぶっ殺しますわよ?」

「えぇっ!? また声が変わった!」


 今度はお嬢様ボイスで威嚇をして琳加をからかった。

 琳加は目を白黒させて困惑している。


「おい、アレすげーって! アニメみたいな声してたぞ!」

「声優さん!? あんな綺麗な人居たっけ!?」


 琳加をからかうだけのつもりがやりすぎてしまったようだ。

 周囲の乗客達がざわめき、携帯のカメラを向け始めてしまう。


「やばっ、おい琳加! 車両を移すぞ!」

「は、はぇぇ!?」


 俺は琳加の腕を掴むと、急いで移動した。


「あ、あれ!? 男の声になった!?」

「何だよあれ! 俺、疲れてんのか!?」


 ざわめく車内を後にして、別の車両へ。

 渋谷駅に着くまではもうおとなしくしていた。



 ~~~~~~~~~~



「ねぇ、お願い! もう一回やって!」

「しょうがねぇな。"父さん! 妖怪が近くにいますっ!"」

「あっはっはっ! 似すぎ! やばい、お腹痛い!」


 俺は得意の声真似(声帯模写)で琳加を笑わせながら歩いていた。

 妹を喜ばせる為にいっぱい練習したからな。

 まさか、その声の才能から歌が上手くなるとは思わなかったが。


「琳加ちゃん、ここから先は人が多いから女の子の声でいくよ♪」

「はぁ、はぁ、リツコちゃん本当に可愛いよ……えへへ、触っていい?」

「琳加ちゃん、めっちゃキモ~い♪」


 俺が女声を出すと、とたんにキモオタみたいになる琳加と一緒に道玄坂(どうげんざか)下へ。

 こいつ、番長という仮面がないとこんな感じなのか。

 まぁ、ここまでくればもう同級生に会う事はないだろう、存分に仮面を外して楽しんで欲しい。

 ちなみにどう考えても今の俺の状態の方が百倍キモいです。


「へーい、お姉ちゃんたち。可愛いねぇ、お茶しない?」


 通りを歩いて3分。

 はい、来ました、ナンパですね。

 琳加は黙っていれば超ド級の美少女だ。

 中身は少し残念だったが。

 綺麗な花には虫がたかるものだ。

 こういう輩は無視して立ち去るに限る。


「ちょっと、待ってよ金髪のお姉ちゃん」


 立ち去ろうとしたら男は俺の肩を掴んで止めてきた。

 くそっ、しつこいな。


「その可愛さなら芸能人でしょ。一緒に写真だけでも」

「――おい」


 ただならぬ気配と語気を感じて隣を見ると、琳加がとんでもない怒気を放っていた。

 男の手を俺の肩から払い除ける。

 そして琳加は俺を自分の身体の後ろに隠した。


 あれ?

 こいつはへたれ番長だったはず……。


「汚い手でリツキに触るな」

「ひっ、ひぇぇ~!! す、すみませんでした~!」


 あまりの迫力に男は逃げていってしまった。


「リツキ、大丈夫? 怪我はない?」

「は、はい!」

「本当に? 変な所は触られてない?」

「だ……大丈夫です」


 思わず敬語が出てしまう。

 何これ惚れそう。イケメンかよ。

 こいつ、本当に番長の素質があったのか。

 どうやら正しい事をしている時は力を発揮できるタイプなんだろう。

 取り巻き達を魅了させたのはこれか。



 ……取り巻きたくなる気持ちが分かる。

 琳加さんめっちゃカッコよかったもん。



評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
↓のタイトルをクリックすると他作品のページに飛べます↓
連載版始めました!
下のタイトルを押すと読みにいけます!
『【連載開始!】ライブ直前に怪我をしたアイドルの代わりにステージに立ったら、マネージャーの俺の方が大人気になってしまった件』
作品のブックマーク・☆評価お願いします!
<(_ _)>ペコッ
連載中ラブコメ!
下のタイトルを押すと読みにいけます!
『山本君の青春リベンジ~学校でイジメられてた俺が努力して生まれ変わり、戻ってきてからクラスメート達の様子がおかしい件~』
作品のブックマーク・☆評価お願いします!

    
新刊!
『【漫画】クラスで陰キャの俺が実は大人気バンドのボーカルな件』
  ▼▼▼ 画像をクリックすると、書籍情報へとアクセスできます ▼▼▼  
表紙絵
  ▲▲▲ 画像をクリックすると、書籍情報へとアクセスできます ▲▲▲  
― 新着の感想 ―
[一言] リンコ様カッコいい
[一言] これは惚れるわ
[一言] あ〜ええんじゃぁ〜(^o^)
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ