第79話 似たもの同士
「……まぁ、でも。きっとシオンも星乃とそう変わらないさ」
「――はい?」
教えてやることにした。
俺だって星乃と同じだ、世間に好かれるためにシオンを演じ続けてきた。
星乃の努力も分かるし、俺だって同じようにうんざりして疲れ果てて自暴自棄になりかけてしまったことがある。
だってエンターテイナーとは大嘘つきでもあるということだから。
「シオンも、『自分がどう見えるか、他人がどう感じるか』を気にして……どうせ素顔なんかを晒すのも怖いくらいの臆病者なんだよ。嫉妬なんてする必要ないさ」
俺が星乃に対してあまり緊張しない理由が分かった。
こいつも、俺と同類なんだ。一度上がり始めてしまった世間の期待に応えるためにいつも必死にもがいている。
「――シオンはきっと仮面の裏では内心いつもハラハラしながら冷や汗をかいて。それでも何とか自分を、ファンを楽しませようと必死なんじゃないか?」
星乃にだったら知られてもいいと思った。
シオンが本当はこんなに弱い人間であるということを。
俺の曲を聞いた琳加がシオンの気持ちに共感したように、それが星乃の勇気に変わるなら。
そう言うと、星乃は少し間を開けてから吹き出した。
「――ぷっ、あはは! ありえませんよ~! あの天才カリスマボーカルのシオンがそんな弱い人間だったらみんなすっごく幻滅しますよ~。やっぱり先輩って変なこと言いますね!」
「あ、あはは~。だよな~。幻滅するよな~」
当然、信じてもらえない上に非情な現実を突きつけられてしまった。
シオンの正体が俺みたいな陰キャだとバレたらやはりもうペルソニアの人気は終わりだろう。
より一層気を付けなければと心に誓う。
「まぁ……もしそうなら私は凄く好きになっちゃいますけど……」
「うん? 何か言ったか?」
「なんでもありません! ほらほら、先輩も何か歌ってくださいよ~」
何かをボソっと呟くと、星乃がいたずらっ子のような表情で俺の胸にマイクを押し付けた。
コミックには特典として、特別書き下ろし小説が付いてます!
タイトルは『海に行ったらクラスメイトたちがいた』です。
~あらすじ~
あまりの夏の暑さに駅前で溶けて混ざり合い一つの完全な生命体になろうとしていた凛月と椎名。
暑さで頭がやられている椎名は気温より凛月の体温の方が低いという滅茶苦茶な理論を言い張りくっついて離れようとしない。
暑すぎて「海に行きたい」と呟いた凛月に対して、椎名は『凛月は自分の水着姿を見たがっている』と思い込み、暑さで海が干上がる前に急いで凛月を連行してナイスバディを披露する。
凛月にとっては椎名は確かにナイスバディ(良い相棒)だが、海には学校で椎名の悪口を言っていたクラスメイトたちがいた。
意地悪なクラスメイトに絡まれている椎名を助けるために、凛月は眼鏡を外してキタロウだとバレないように救出に向かうが……。
そして、海の家ではアルバイトをしている神之木が最後にやっぱり不憫な目に遭います。
そんな感じの長めのお話です!
ぜひ、ご購入して読んでいただけますと嬉しいです!