第77話 偽りの自分
星乃は大きなため息と共にシオンが嫌いな理由を語る。
「曲を聞いていれば分かります。シオンは本当に心から音楽が好きなんだろうなって。好きなことをやって人気者になっちゃって、ちやほやされて……私はそうなるためにどれだけ周囲の人に合わせて、本当の自分を偽って媚びながら生きてきたと思っているんですか?」
そう言って、星乃は不機嫌そうにメロンソーダを飲み始めた。
そして、ぷはっとストローから口を離す。
「まぁ、つまり嫉妬してるんですよ。好き勝手やってるだけなのに周りに好かれていることが羨ましくて。私なんかがシオンなんて超大物相手になに言ってるんだって感じですけれどね」
「そんなの、お前だって十分好き勝手に振るまってるだろ。今日だって勝手に俺を巻き込んでるし」
「そ、それは……陰キャな先輩の前だからですよ。私だってこんなにハメを外したのは初めてです。知らない自分の一面に驚いているくらいですよ」
星乃は恥ずかしそうに少しだけ頬を赤らめて再びストローに口をつける。
「だから……本当の私は嫉妬もするし、他人も平気で利用しようとする。醜い心の人間なんですよ……。残念ながらみんなが思っているような良い子じゃありません」
眉を下げ、しおらしい表情でため息と共に弱音を漏らした。
この表情はきっと、俺が生徒会室に入る前に星乃がしていた顔だったのだと思う。
なんとなく……そんな気がした。
「本当は私も友達なんていないんです。私の取り繕った上っ面だけを見て人が寄って来ているだけなんです。誰も、こんな私なんて……」
弱弱しい星乃の声は部屋の防音壁に吸い込まれていった。
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