第76話 調子に乗ってすみませんでした…!
散々歌い終わって満足そうな星乃に、俺は尋ねる。
「ペルソニアの曲ばっかりだったな。やっぱり、星乃もシオンのファンだったりするのか?」
陽キャにも大人気のペルソニア、きっと星乃も例に漏れないはずだ。
(ふふふ、実は俺みたいな陰キャがシオンだなんて思うまい……)
こんなやり方は意地汚いが、出会ってからこの数時間だけでも散々罵られているんだ。
シオンを介してでも、星乃の口から少しくらい俺のことを褒めてもらいたい。
ゲスい期待に胸を膨らませつつ俺は全力でとぼけてみせたが、星乃は淡々と語る。
「いいえ? むしろシオンは嫌いです」
「そうなんだ……ごめんなさい」
「いや、なんで先輩が謝ってるんですか……」
撃沈した、調子に乗って本当にすみませんでした。
「ただ……悔しいですが歌はとても良いと思いますし、そもそもペルソニアの曲を知っていないとみんなの輪に入れませんからね。みんな必死に覚えますよ。このとおり、アニソンしか知らなそうな陰キャの先輩ですら曲を知っているような大スターですから」
「……なるほど、つまり俺も楽しめるようにペルソニアを歌ってくれてたのか」
「知ってる曲じゃないと聞いててなかなか楽しめないところはありますからね~、私可愛いだけじゃなくて気遣いもできますのでっ!」
そうか、考えてみればペルソニアはもはや社会現象だ。
嫌いでも知っていないと高校生なんかは自然とみんなの輪から外されてしまう。
もはや宗教と化した負の側面が後輩の星乃すらも苦労させてしまっていたことを知った。
「まぁ、学校でこんなこと言うとそれこそ仲間外れにされそうですけど。先輩にだったら本音を言えますが――」
マイクを机に置くと、星乃は腕と足を組んで偉そうに椅子に座り直す。
「私、ムカつくんですよ。このボーカルのシオンって奴が。何度も言うように歌は好きなんですけどね」
「ど、どうしてシオンが嫌いなんですか……?」
「何で敬語なんですか……。あと、何で急にソファーの上で正座してるんですか?」
俺はビクビクと怯えながらファン(?)の貴重なご意見を聞くことにした。
本日、ニコニコ静画さんでコミカライズ4話の更新がされましたので、ぜひ読みに行って温かいコメントで盛り上げていただけますと幸いです!
それと、コミックの発売日が8月5日に決まりました!
発売しましたらまたお知らせいたします!
更新がゆっくりで申し訳ございませんが、引き続き楽しんでいただけますと幸いです…!





