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第72話 なぜか後輩に気に入られました


 俺は星乃に尋ねる。


「えと……今どき、告白するのに下駄箱にラブレターなのか? なんか前時代的な感じがするが……」

「今、告白はあえてラブレターが流行ってるんですよ? 手書きの文字の方が気持ちが伝わるので成功率が高いんです。先輩、知らないん──ごめんなさい。知るはずがないですよね」

「おい、やめろ。急に素直に謝るな」


 現実逃避の為に余計な質問をしたらカウンターパンチをもらってしまった。

 すみませんね、見た目どおり恋愛とは一切縁のない超絶陰キャで。


 俺をからかうと少しだけ星乃の表情も明るくなったが、また失恋を思い出したかのように徐々に乾いた笑い声になってしまった。


 こんな状況を知ったら逃げてばかりもいられない、もう一度今の話をよく整理してみよう。

 星乃いわく、『琳加と藤宮が両思い』だから藤宮に告白してもどうせダメだと告白を諦めた……。


(……とんでもない誤解だ)


 恐らく、藤宮に話をしていたのは琳加の取り巻きの女子のうちの誰かだろう。

 彼女たちは琳加と藤宮との恋を(勝手に)応援している。

 しかし、実際には琳加は藤宮に全く興味が無い。


 琳加は取り巻きとはいえ、せっかくできた友達を失いたくないから無理して話を合わせているだけだ。

 その証拠に当の本人は藤宮という名前すらよく忘れている有様である。

 多分、あの様子だと顔も忘れてるぞ。


(なんだこれ……どうすりゃいいんだ)


 すれ違いが面倒な二次災害を生んでいるこの状況に俺は言葉が出ず、ついに現実でも頭を抱えてしまった。


「先輩……意外と優しいんですね。私のことなのに、そんな……頭まで抱えて悩んでくれるなんて」

「いや、うんまぁ……そうね」


 また何か勘違いされながら俺は変な返事をした。


 そんな俺を見て、星乃は何やら悪だくみをしているような表情をみせる。

 そして、急に俺に肩を寄せて猫なで声で語りかけた。


「……藤宮先輩、なんで琳加さんみたいな素行が悪い人が好きなんでしょうね~? だって不良ですよ!? 全く、見る目がないですよね~。先輩もそう思いませんか~?」


 どうする……?

 琳加の状態を素直に話すと琳加は藤宮をキープしてた悪い奴みたく思われるだろうし。

 そもそも、琳加が『実は番長気取ってないと友達も作れないような気弱な奴』というところから信じてもらうのも大変だ。

 というか、琳加がそのことを必死に隠してるのに俺がバラしてどうすんだ。


「ねぇ~先輩。だから私、傷ついているんですよ~。私、恋する相手を間違ってしまったのかもしれません~。でも先輩は私のこと、大事にしてくれますよね~?」


 であれば、俺が言えることは……!

 俺はじっくり考えると星乃に向き合う。


「星乃!」

「はい! 先輩♡」

「諦めるな! 琳加だってもしかしたら今はもう藤宮に興味が無いかもしれないだろ!? 好きならちゃんと告白した方がいい!」

「……は?」

「それとだな、悪態を吐きたくなる気持ちは分かるが、()()のことをよく知りもしないくせに悪く言うなよ? まぁ、何か悪い噂は聞くのかもしれないが。それだって、どうせ誰かが面白おかしく流した嘘かもしれないしな」

「……へ?」


 俺の言葉を聞いて、星乃は呆けたような返事をしつつ瞳を大きく見開いた。

 そして、堪らずに吹き出した。


「ぷっ、あはは! 先輩、『諦めるな』ですか? そして私に説教して、日陰先輩の肩を持つなんて! というか、日陰先輩のことを下の名前で呼び捨てにするなんて本人がいないところでイキがってるのは先輩も一緒じゃないですか! 頭の中の妄想が出ちゃってますよ~!」

「……あ」


 しまった、そうだ。

 陰キャの俺がカースト最上位の琳加と名前で呼び合う仲だなんて星乃からしてみればあり得ない。

 ――あれ? 本当に俺の妄想のような気がしてきた。

 俺が琳加と出かけたりしてたのは現実……? それとも妄想……? あかねはこの世に実在する……?

 星乃は笑いすぎて出てきた涙を拭う。

 どうやら笑うと涙が出るタイプらしい。


「あー、面白い! だから先輩はモテない陰キャオタクなんですよ」

「清々しい程に決めつけたな……言い返したいが間違ってないから言い返せん……」


 星乃は得意げな表情で指を振りながら俺に長々と講釈を垂れ始めた。


「先輩、チャンスなんですから普通ここは傷心中の私の気持ちに寄り添って共感するフリをしたり、手を握ったり、一緒に日陰先輩を悪者にしたり、ここぞとばかりにウザいくらいに自分をアピールするんですよ。『俺なら星乃の良さを分かってやれるぜ!』とか言ったりして! 私を前にした男子はもれなく全員そうします! 説教するなんてあり得ませんよ! 普通の子なら好感度ダダ下がりです!」


 星乃は俺の背中をバシバシと叩きながら再び笑い出した。


「いやいやそんなことできねぇわ、陰キャ舐めんな? 俺はただ……お前の背中をどうにか押してやりたくてだな……」


 口ごもりながらそう言うと、星乃はまた驚いたような顔をする。


「はい? 私のため……ですか?」


 星乃はそう呟くと、何やら俺の顔を見つめる。

 見つめながら「本当に天然っぽいな~」とかブツブツ言っている。

 やめて、そんなに良い顔で見つめられると恋しちゃうから。いや、もうしてるけど。


「う~ん、先輩ってキモいのにキモくないですね。不思議な人です」


 少し微笑みながら良く分からないことを呟く。

 やめて、陽キャがコメントに困った時に引きつった笑いで「す、須田君って……その……なんていうか……ふ、不思議な人だね~……」で済ませるのは。気遣われる分、心が痛くなるから。


 何かを思いついたらしい、星乃は急に元気を出したように手を叩き――


「そうだ! 先輩、この後私と一緒に遊びに行きましょう! これも何かのご縁です! 先輩に興味がわきました!」


 とんでもないことを言いだした。

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