第61話 ショータイム
俺はこの会場に居るはずのメンバーと鈴木にスマホでメッセージを送り、招集した。
メッセージを見たメンバーは次々と、使われていないこの演者控室に集まる。
俺は事情を話し、頭を下げる。
「頼む、しおりん達の為に協力してくれ……!」
俺がそう言うと、すぐにみんなのため息が聞こえてきた。
「あのね、シオン君。こんなところにペルソニアなんているはずがないわ。私たちはいいけど、シオン君が疑われる」
「そうですね。同じ学校の生徒だから見に来ていたと思われても仕方ありません」
「私は別にバレてもいい……シオンの為なら……」
「シオン、お前はどうしても正体がバレたくなかったはずじゃねぇのか? 家族や可愛い妹に迷惑がかかるからって」
ザイレムの問いかけに俺は顔を上げた。
そして、メンバー全員の真剣な瞳を見つめ返す。
「あぁ、でも……俺はしおりん達を救いたい! これが正しい行動なのかは分からない――でもっ!」
俺が言い終わる前に、ザイレムが俺の頭をガシガシと撫でた。
「馬鹿野郎。お前が"間違い"を気にするんじゃねぇ」
「私たちは……間違ってなんぼ……」
「そうですよ。そうやってシオンが私たちも"この場所"に集めてくれたんじゃないですか」
「同じ様に彼女たちの居場所も守りたいんでしょ? 協力するわ、困っている人を放っておけないのがシオン君の素敵なところだもんね」
「みんな……! ありがとう!」
俺は泣きそうになりそうなのを堪えて鈴木に聞いた。
「俺たちの仮面と衣装はあるな?」
「あぁ、外の車にあるからすぐに持って来れる。リハーサルと一緒に置きに行くつもりだったからな」
「でも、シオン……髪がボサボサ……」
「大丈夫だ、ワックスを持ってる。使い方が分からんが」
「おっ! やっとお前も色気づいたか! ほれ、そこの洗面台で簡単に整えてやるよ!」
ザイレムがそう言って俺の髪を5分程で整えてくれた。
全員で仮面を装着すると、ペルソニアが完成する。
そして、俺たちは部屋を出た。
とつぜん控室から現れた俺たちを見た会場スタッフの面々は驚いていた。
俺たちはただ一言「演奏する」と伝えて、音響、照明などのスタッフと軽く打ち合わせをした。
舞台スタッフには一度、俺たちと仕事をしたことがある人がいて、俺たちが本物のペルソニアだというのはすんなりと信じてもらえた。
どのスタッフも俺たちに感動しつつ急いで準備をしてくれる。
舞台の準備が終わると舞台袖で俺は声を上げた。
「さぁ、演奏開始だ!」