第59話 ライブ当日
シンクロにシティの単独ライブ『シンクロ!』当日。
エロ本事件のせいで完全にしおりんたちに嫌われた俺は呼んでもらえなかったので1人で勝手にコンサート会場へ。
以前、花見に容姿を指摘された事を思い出してプライベートでは俺も髪くらい整えようと思ったがやり方が分からなくてそのままヘアーワックスを持って来てしまった。
今日、リハーサルの時にメイクさんにやり方を教えてもらおう。
いや、それくらいメンバーでもいいか……
琳加と蓮見は友人として最前列の特別席にご招待だ、羨ましい……。
ペルソニアのメンバーはそれぞれバラバラで会場に来ている。
いつもは覆面とはいえまとまっちゃうと背丈とかでバレちゃう可能性もあるからな。
マネージャーの鈴木もここに呼んでいる、どうせリハーサルにも衣装運びとかでついてくるし。
全員のチケットは俺の奢りだ、これがずっと借りていたスタジオの料金だと思えば安い。
ちなみにあかねは連れてきていない。
いや、アイドルのコンサートってめちゃくちゃ危ないからね、立ち見だから動きとかも激しいし。
さらにあかねは世界一可愛いので、連れ去られてしまう可能性もある。
俺が守れるくらい強かったらよかったんだが……。
まぁ、あかね本人もあまり来たがってはいなかったな。
理由を聞いたら「嫉妬しちゃうから……」だなんて恥ずかしそうにこぼしていた。
だが、俺がシスコンをこじらせて「安心しろ、しおりんたちの可愛さに嫉妬なんかしなくてもあかねのほうが可愛いよ」って言ったら怒って自分の部屋に戻ってしまった。
謝ろうとこっそりと部屋の中を覗き見たら何やら布団に顔を埋めて足をバタバタさせていた。
あまりにも怒っていると感じた俺はとりあえずほとぼりが冷めるまで待つことにして、家を出発したのだ。
決して逃げたわけではない。
入り口でチケットを出して、会場の中へ。
席などはなく全員立ち見なので、基本的にはみんな前に集まるんだけど俺はしおりんたちに嫌われているので後ろのほうから見ることにした。
腕を組んで壁にもたれかかってプロデューサー面でステージを見る。
ふん、俺の育てたしおりんたちも立派になったな。
……やべぇな、自分に殺意が湧いてきた。
そんな馬鹿げた事を考えながら待っていたら会場も混み合ってきた。
1000人は収容できるこのライブハウス『ギルネリーゼ』がどんどん狭くなっていく。
チケットは完売らしいし、さらにファンが増えたみたいだ。
この前の公演で他のアイドルのファンもシンクロにシティに興味を持ったのかもしれない。
ファンが増えるのは嬉しいが、なんだか寂しい気もするなぁ……。
ペルソニアのファンもこんな気持ちだったのだろうか。
そんな風に色々考えていたら、ふとまだ始まらない事に気がつきスマホで時刻を確認した。
――おかしい、すでに始まっていてもいい時間のはずだ。
何よりおかしいのが、何のアナウンスもない事だ。
遅れるのであれば遅れるとアナウンスがないと観客も事態が分からず不満が溜まってしまう。
そしてそのまま5分……10分……。
観客たちから不満の声が漏れ始めた。
なお、凛月は自分が弱いと思い込んでいますが、喧嘩も滅茶苦茶強いです。
この話はどこかで……お楽しみに!