第52話 自分から言っていくスタイル
花見 瀬名。
カルデアミュージックが誇る歌姫で、しおりんたちに嫌がらせを指示している本人だ。
それが今、目の前に現れた。
……おかしい、今日のイベントの出演はアイドルだけのはずだ。
カルデアミュージックの看板歌手である花見の出演予定はない。
出入り口をアイドルたちで塞がれてしまっているので、俺たちはそんな出迎えの様子を立ったまま端で見ていた。
「あなた達、お疲れ様。それで、あの子たちにはちゃんとやってくれているのかしら?」
「はい! シンクロにシティには今日までずっと練習場所を渡していません、今日の公演はボロボロのはずですよ!」
「おーほっほっ! それは観るのが楽しみですわ! 全く、私が初めてテレビ出演するまでどれだけ大変だったと思っているのかしら。それなのにあの子たちは何の努力もせずにすぐに人気が出ちゃって……ここで大失敗して大恥をかくがいいわ!」
そう言って花見は再び高笑いをする。
全部喋ってくれたよ、すげぇな……。
「リツキ、アイツが黒幕か……」
「琳加、殴りかかったりしちゃダメだぞ。その時点で俺たちの負けだ」
「凄い……テレビで見る人だぁ……」
花見は俺たちの視線に気がついて歩み寄ってきた。
「――あら? 一般オタクの方がここに紛れ込んでおられますわよ?」
「あっ、いえ。俺たちはシンクロにシティの関係オタクです」
いや、一般オタクと関係オタクって何だよ。
花見の発言についつられて謎の言葉を創造してしまう。
「あの子たちの……? どうりで気品も何も感じないわけですわ、特に貴方、アイドルのそばにいるんですからもう少し身だしなみを整えなさいな」
そう言って、花見は扇子で俺を指した。
当たり前だけど、今の鬼太郎姿の俺とシオンの時との対応を考えると月とスッポンだ。
「わたくしはあの大スターのシオン様とも親しき仲ですのよ! さすがにあの方のようにとまでは言いませんが、少しは美しさにも気を使いなさい。赤髪の貴方はいい感じですわ!」
俺と蓮見の頭を扇子でペシペシと叩いてから琳加を褒め称えた。
やばい、琳加が怒りでプルプルと震えている。
耐えてくれているのは、しおりんたちの頑張りを無駄にしたくない一心だろう。
というか、一方的にシオンの仕事用アドレスにメール送るだけで親しき仲なんですかね。
俺たちに言うだけ言うと、花見はコートだけ楽屋に置いて踵を返す。
「――さて、あの子たちの全く揃わない歌や踊りを客席で笑ってやりますわ!」
そう言って花見は出番を終えたアイドルたちを引き連れて行ってしまった。
次回をワクワクしながらお待ち下さい。
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読者さんから「あかねを無視してみた」という特別編を読みたいというご意見がありました。
よくもそんな酷いことを……需要があったらまた書きます。
「続きが楽しみ!」「気になる!」と思ったら下のお星様を★★★★★にしていただけると嬉しいです。
頑張って書きます。