第49話 それは俺の黒歴史です……
「――えっと、今までは全員で同じ動きで合わせるだけだった振り付けに少し変化をつけるとさらにドラマティックなダンスになる。……らしい」
次の日、日曜日。
俺はエルドラの指示通りにしおりんたちにダンスを教える。
蓮見はお店の手伝いで、琳加はまた補習を受けさせられるということで今日は俺1人だ。
しおりんたちには、エルドラのことを“知り合いのダンス講師”と説明をしておいた。
実際には彼は明日、アメリカの一番大きな劇場を超満員にしているんですけどね。
「だ、大丈夫かな? 私たち、動きを合わせるだけでも苦労したのに……」
みほりんが不安そうに呟く。
「大丈夫だ、難しくない。エル――そのダンス講師にもしおりんたちの踊りを見てもらったんだが、どうやら1人1人踊り方に癖があって、それを利用して動きで上手くまとめれば比べ物にならないくらい良いダンスになる……らしいぞ」
そう言って俺はメモを読み上げる。
「あかりんは少し動きが速くなりがちだが全体的にキレがあり、特にターンが上手い、みほりんは少しゆっくりだが一つ一つの動き、特に手の振りが指の先まで綺麗だ、しおりんはそんな2人の動きをよく見てちょうど真ん中くらいのテンポを維持していて全体的に安定感がある」
しおりんたちは「へ~!」と感心したように声を出した。
いや、マジですげぇよなこいつ。
1回しか動画見てなかったぞ。
「癖を直したり苦手なところを克服するのは時間がかかるし、何よりやってて楽しくない。だから君たちの長所や癖を上手く取り入れたダンスを俺様が考案した」
なんか偉そうだなとか思いつつ、俺はエルドラが書いた原稿の読み上げを続けた。
「短所は裏を返せば長所にもなる。それは個性だ、君たちの個性を見せつけて、観客を沸かせてや――」
そこまで読んで俺は紙を握りつぶした。
俺が昔、エルドラに言った言葉じゃねぇか!
こいつ……俺の黒歴史を……。
あの頃の俺は人気が出てきて本当に調子乗ってたから……!
なんか、エルドラが落ち込んでる感じだったから当時の俺が偉そうに飯を奢ってこんな事言ってるけど、普通に俺のほうが年下だし、未来の世界的ダンサーに何言ってるのって感じだわ。
その後、「俺は俺の個性を活かす!」とか言って、数日後にグループ抜けてたけど……もしかしてエルドラの独立って俺のこのイキリ言葉のせい……?
「短所は長所になる……それは個性。凄い、そんな事考えもしなかった!」
「この講師の人、凄く私たちを尊重してくれているんだね!」
「今まで、短所は『直せ』としか言われなかったから凄く気が楽になったよ!」
そしてしおりんたちが輝くような笑顔で俺に追い打ちをかける。
すみません、それはリアルで実年齢も中二病だった俺の言葉です……。
すみません、明日から忙しくなるので次の投稿はいつになるか分かりません。
でも、できるだけ早く投稿したいです…!





