表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
51/111

第44話 実力の片鱗

 

 蓮見の言葉を聞いて、しおりんたちは安心したような表情で大きくため息を吐く。


「よ、よかった~。はすみんを悲しませちゃったのかと思ったよ~」

「そ、そんな事ないよっ! 正直、全く読んでもらえない事だって覚悟してたし……」


 蓮見がそう言うと、みほりんとあかりんは蓮見の手を握った。


「動画とかでも勉強はできるけど、色々と目移りしちゃうから……私たちにははすみんからもらった教本が合ってたみたい!」

「本を開くと、『ちゃんとやるぞ!』って気になるんだよね! いつもは集中できない私でも!」

「YuTubeとかで学ぼうとすると、つい別のも見ちゃうからね……。他のアイドルを見たら気が散っちゃうし、あはは」


 そう言って、しおりんたちは笑いあった。


「でも……正直トレーナーさんは欲しいかも」

「トレーナーが?」


 俺が聞き返すと、みほりんが頷く。


「うん。カルデアミュージックのスタジオを借りたら歌と踊りはトレーナーさんが教えてくれていたから。あっ、いつでもお願いできるわけじゃないんだけどね!」

「私たちの踊りも今までのままじゃなくて、本当は新しいのに変えたいんだ~」

「でも、本のおかげでダンスや歌の基礎は再確認できたし、ビデオを見返して動きも揃うようになってきたよ!」


 しおりんたちは少し悩みをこぼしつつも自信がついたようにみんなでハイタッチをした。


「そうだ! 私たちの歌と踊りを1回通して練習したのがあるからよかったら見て!」


 そう言ってモニターを点けると、俺と蓮見は練習の動画を見せてもらった。


 いつも聞いてる歌と踊り。

 でも、今は楽しむ為に聞くんじゃない。

 彼女たちの練習の様子を見せてもらう為に聞くんだ。

 そう思いながら動画を見ていると、俺は段々と映像に集中して周囲が見えなくなっていった。


「……少し声が高いな」

「――えっ?」


 そして、俺は無意識に呟いた。


「あかりんの元の声が高いから歌声もキーが高くなっちゃってるんだ。しおりんとみほりんはそれに合わせようと無理な声を出してる。その結果、強弱や発声に乱れが生じてるんだ」


 俺はそう言ってリモコンを摑むと動画を巻き戻す。

 動画の途中、サビの盛り上がりをもう一度再生し直してから止めた。

 そして話の続きをする。


「踊りながら歌うなんて凄く大変な事だ。息も乱れるし、ただでさえ歌のユニティ(統一)が崩れやすい。ここはまとまりを意識して、一度抑え気味で全体を通してみたほうがいい。それで体力が残るようなら後半で出し切るんだ。いつも一生懸命な姿勢はしおりんたちらしくて素晴らしいが、バテてしまったら元も子もない。ファンの印象に残りやすいのは"最初と最後"だ、曲の最後にはしおりんたちのとびきりの笑顔を見せてあげないと――」


 そこまで語ったところで俺は我に返った。

 周囲を見回すと、みんなが驚いた表情で俺を見ている。


「――なんて……ただのファンの意見なんだけど」


 完全なイキリボーカルトレーナーと化した俺は冷や汗をダラダラと流す。


 アイドルに関しては俺は素人なんだから、意見なんかできないはずだ。

 なのに、ついシオンの癖で偉そうな事を……。

 しかし、しおりんたちは顔を見合わせると瞳を輝かせて俺を見た。


「す、凄~い! 私たちこれで満足しちゃってた!」

「意識はしてなかったけど聞き直すとよく分かるね! 私と美穂は自然な声じゃなくて(うわ)ずっちゃってる感じがする!」

「ファンがどこに注目するかなんてぜんぜん考えてなかったよ!」


 そう言って3人とも飛び跳ねながら喜んだ。

 普通、素人にこんな事言われたら嫌だと思うんだけど……。

 蓮見に渡された教本も一途に読み込んでいたし、3人共凄く素直な性格なんだろう。

 少し危うくもあるが、生徒としては凄く優秀だ。

 いいトレーナーさえいれば本当にトップアイドルに成れるかもしれない。


「そ、そうか……よかった!」


 なんとなく役に立ったような気がして俺は安心してため息を吐いた。

 一応俺も歌手だし、音の乱れには敏感だ。

 少なくともそこを直せばもっとよくはなるだろう。


「凛月、凄く教えるの上手いね。指摘するだけじゃなくて色々と気を配って話してたし……」


 そう言って蓮見は顔を赤くしながらため息を吐いて俺の事を見た。


「ま、まぁ、オタクだからな。好きなアイドルの事はよく分かるんだ」


 俺は歌手である事がバレないように、そんな言葉で誤魔化した。


【作者からのお願い】

「続きが気になる!」

「面白い!」

「読んでるけど評価はまだなんだ!」

という方は、お手数ですが画面下の評価「☆☆☆☆☆」を「★★★★★」にしていただけると作者は非常に嬉しいです!<(_ _)>ペコッ

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
↓のタイトルをクリックすると他作品のページに飛べます↓
連載版始めました!
下のタイトルを押すと読みにいけます!
『【連載開始!】ライブ直前に怪我をしたアイドルの代わりにステージに立ったら、マネージャーの俺の方が大人気になってしまった件』
作品のブックマーク・☆評価お願いします!
<(_ _)>ペコッ
連載中ラブコメ!
下のタイトルを押すと読みにいけます!
『山本君の青春リベンジ~学校でイジメられてた俺が努力して生まれ変わり、戻ってきてからクラスメート達の様子がおかしい件~』
作品のブックマーク・☆評価お願いします!

    
新刊!
『【漫画】クラスで陰キャの俺が実は大人気バンドのボーカルな件』
  ▼▼▼ 画像をクリックすると、書籍情報へとアクセスできます ▼▼▼  
表紙絵
  ▲▲▲ 画像をクリックすると、書籍情報へとアクセスできます ▲▲▲  
― 新着の感想 ―
[良い点] 悪い点を細かく教えることが出来る凛月凄すぎですね!! 流石歌手ですね!! [一言] 凛月は次は一体どんな偉い人をトレーナーに選んでしまうのか、楽しみです!!!
[一言] 今回も最高!!!
[一言] 歌手スイッチ入っちゃったかwどうせなら、あかりんの声を真似て「こんくらいの高さで」とか言ったら面白かったのにw
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ