第40話 重たいアイスキャンディー
――しおりんたちにスタジオを貸してから1週間。
俺と蓮見は様子を見るために差し入れを持って彼女たちのスタジオへ。
琳加も来る予定だったのだが、テストの点数が悪かったらしく補習で捕まっていた。
よかった、成績まで優秀だったらいよいよ番長らしくないからな。
いや、よくはないけど。
「琳加さん、残念だったね。私のテストの点数を分けてあげられたらよかったんだけど……」
「やめとけ、それは絶対に琳加の為にならん」
テストという物の意義を完全に無くす蓮見の発言にツッコミを入れながら歩いていると、蓮見は何やらため息を吐いた。
「それにしても本当に意外だったよ。まさか凛月と琳加さんが知り合いだったなんて……琳加さんってサッカー部の藤宮君の事が好きって噂もあったし、てっきり見た目で関わる人を選んでいるのかと思ってたんだけど」
「その噂は悲しき噓だ。とにかく根が善人だからな。俺みたいな陰キャブサメンでも無碍にはできないんだろうな」
俺がそう言うと、蓮見は慌てて首を振る。
「そ、そんな! 凛月が陰キャシスコンブサメン根暗オタクコミュ障だなんて言い過ぎだよ!」
「蓮見、それは確かに言い過ぎだと思うぞ……」
と言いつつも全て事実である事に心の中で涙を流す。
「でも、そもそも私って凛月の顔をちゃんと見たことないんだよね。メガネ外してみてくれない?」
「やめておけ。俺ですらちゃんと見たくもないんだ」
シオンと繋がりかねない俺の素顔を知りたがる蓮見に俺は内心で慌てながら断った。
蓮見は少し残念そうにため息を吐く。
「私は見た目とか気にしないけどな~。同じオタク趣味で、優しければ全然……」
「蓮見、今は生きづらいと思うが、大学に行けばそんな奴もたくさんいるさ」
「り、凛月だってそうじゃん……私の気持ちを一番に分かってくれる」
「まぁ同じ穴のムジナってやつだな」
「一番分かって欲しい気持ちは分かってくれないけどね……」
「蓮見……お前」
俺はさっきコンビニで買った差し入れの入った袋を蓮見から奪い取った。
「持って欲しいならそう言えよ。いや、気がついてやるのが男の気遣いってやつか」
「……ふふ、やっぱり凛月は全然ダメだなぁ」
蓮見はため息を吐いて笑う。
「馬鹿野郎、わざとだわざと。これくらいの荷物もたまにはダンベル代わりに持たせてやらないと蓮見の筋力がつかないだろ?」
「……はぁ~、重かった」
「こいつ……」
わざとらしく自分の肩を揉む蓮見を見て笑った。
差し入れは俺が選んだアイスキャンディーだ、絶対に重くないだろ。





