第37話 ゼリー? なにそれ、美味しいの?
地元の駅に戻ると、しおりんたちの帰路と俺、琳加、蓮見の3人の帰路は別方向だったのでその場で解散する事になった。
まだ暗くなっていないから俺が送っていく必要もないだろう。
「次回からしおりんたちはあのスタジオを勝手に使っていいからな」
「な、何だか悪い気がするね……須田君が知らない時にも使っちゃうなんて」
あかりんがそう言うと、しおりんが手を叩いた。
「そうだ! Zelyをお互いに登録しようよ! そうすれば私たちがいつスタジオを使っているか分かるよ!」
「Zely?」
俺は聞いたことのない言葉に首をひねる。
なんか美味しそうな名前だ。
「位置情報共有のスマホアプリだよ! お互いに登録しておけば今どこにいるかが分かるの!」
「クラスメートの女の子たちとも共有してるし、須田君たちとも共有しよう!」
「あっ、もちろん"オバケモード"っていって、場所を相手に知らせない機能もあるからね!」
知らなかった、そんなリア充御用たしアプリがあったなんて……。
えっ、大丈夫なのこれ?
いよいよストーカーにならない?
そんな事を思いつつも確かにスタジオを使っている時間が分かるのは便利そうなので俺もアプリをダウンロードして登録させてもらった。
これを見ればしおりんたちが練習している時に差し入れも持っていける。
「ふふふ、これでリツキがどこにいるかいつでも分かるな」
「ふふふ、これで須田くんがどこにいるかいつでも分かる……」
「ふふふ、これで琳加様がどこにいるかいつでも分かるわ」
琳加、蓮見、しおりんの3人が同時に何やら同じような事を呟いた。
――というか、そうだ。
こんなのオンにしてたら俺がシオンだっていつかバレちまうよな。
シオンとして仕事をしている時は場所がバレないオバケモードにしておこう。
でも、つい忘れちゃいそうだなぁ……。
そんなことを思いつつ俺はZelyのアプリを開く。
6つの赤い丸、全員分が揃っているこの場所のスマホ画面を嬉しい気持ちで眺めるのだった。





