第36話 練習終わり!
「――よーし! 今日はここまでにしよっか!」
キリがいいところまで練習が終わると、朝宮さんは手を叩いてそう言った。
あまり暗くなると危ないし、無理もよくない。
明日も休みだから、今日は身体を慣らすだけで本格的な練習は明日でもいいだろう。
そもそも、朝宮さんも琳加と朝まで電話で話をしてて寝不足のはずだし。
「お疲れ様。ちょっと待ってくれ」
そう言って俺は壁に取り付けられていたリモコンを操作すると、ダンススタジオのモニターを点けた。
さっきまで踊っていたしおりんたちの姿が正面から映像として映し出される。
「そこの正面の場所にビデオカメラが取り付けてあるんだ。これもダンスを見直す時に使ってくれ」
「わわ、凄い! って、普通はビデオカメラに撮って練習するよね……私たち、はしゃぎすぎて撮るの忘れちゃってた」
そういって笑顔で笑い合うしおりんたち、可愛い。
「須田君、隠し撮りしてたんだね……さすが」
蓮見はそう言って全然嬉しくない尊敬の眼差しを俺に向ける。
練習が始まっちゃったから言うタイミングを失っただけなんだけど……確かにこれ隠し撮りか。
「つ、次から撮影する時は言ってね……その……恥ずかしいから……」
そう言ってみほりんが困り顔で笑う。
あっ、これちょっと引かれてるわ。
「本当にすみませんでした……」
俺は誠心誠意頭を下げた。
◇◇◇
しおりんたちがシャワーを浴びて、練習の汗を流している間に2階で気持ちよさそうに眠っているはずの琳加を起こす為に声をかける。
「琳加~、もう帰るぞ~」
1階からそう呼びかけるも返事はない。
どうやら熟睡しているようだ。
「蓮見、起こしに行ってくれるか?」
「ひっ!? り、琳加さんって寝起きの機嫌が悪くないかな!? 私、腹パンされたりしないかな!?」
「怯えすぎだろ……まぁ気持ちは分からんでもないが。しょうがない、寝込みを見に行くのは気が引けるが、俺が起こしに行くか」
琳加に怯えきった蓮見を置いて俺は琳加を起こす為に2階の寝室へ。
「琳加~? 入るぞ?」
ノックをしても返事がなかったので扉を開いて室内へ。
窓際のベッドの上では綺麗な赤い髪を枕に広げて琳加が眠っていた。
――凄く綺麗だった。
琳加は強気なイメージが先行していたけど、寝間着を着て寝ている姿を見るとどこぞのお嬢様のようにも見える。
そんな眠れる美女が眠ったまま何やら口を開く。
「うへへぇ……リツキィ、舐めてもいい?」
「いや、お前は四六時中俺のことナメくさってるだろ」
琳加の謎の寝言にツッコミを入れる。
せっかくの美少女だったのに寝言を言った直後にだらしない表情でよだれも垂らし始めた。
知っての通り、琳加はナンパから俺を守ったり、夜道を送ろうとしたり、重い物を持たせなかったり、男として俺のことはいつもナメまくっている。
俺は起こす為にそんな琳加の肩を揺さぶる。
内心、女の子の肩に触ってしまうことで凄くドキドキしている。
こりゃナメられるわ。
すると、琳加はゆっくりと薄目を開いていった。
「う~ん……?」
そして、ポケーっとした表情で俺を確認すると驚いたように目を開いて身体を起こす。
「リツキ!? それにベッド……! わ、私ついにリツキと一晩を――」
「一晩は越してないぞ、今はまだ午後4時だ。寝ぼけてないで帰るぞ」
「……あっ、そっか。私、ただ単に仮眠させてもらってたんだった……」
琳加が寝間着から着替えると、しおりんたちも準備ができていたのでみんなで家を出た。





