表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
36/111

特別編 噂の陰キャ兄貴を馬鹿にしに行く その5


「えっと……実は、少しだけギターを弾くんだ。あはは……」


 音楽と関連することを指摘されて俺は内心で少し冷や汗を流す。

 普段、学校の人が家にあがる機会なんてないので完全に油断していた……!


「私たち、3人とも軽音部なんです! 今日は練習が無かったから楽器は持ってないけど!」

「お兄さん、良かったら弾いてみてくださいよ!」

「聞きた~い!」


 3人はそう言って俺に期待の眼差しを向けた。

 正直、これで彼女がいるかどうかの話が有耶無耶になるなら俺にとしては願ったり叶ったりだ。

 あかねのメンツを貶めるようなことにはなって欲しくない。

 だから、兄である俺が「彼女なんてできたことがありません」と言わされるのだけは勘弁して欲しい。

 もうすでに見た目とかで幻滅されてるのかもしれないけど……。


 別にギターを弾くだけでシオンだとバレることはないはずだ。

 俺は了承することにした。


「いいよ。下手くそだから弾いても笑わなければね」

「笑いませんよ! あっ、歌もお願いしますね!」

「いいねそれ! こんなに良い声でバラードなんて歌ってもらえたらとろけちゃいそう!」

「じゃあ、ペルソニアの『Angel』をお願いします!」


 そして、予想通りペルソニアの曲をリクエストされた。

 1年生の教室もペルソニア(主にシオン)の話題ばっかりだってあかねから聞いていたからな。


「わ、分かった……あまり詳しくない曲だけど」

「またまた~、音楽をやっててペルソニアの曲を知らないなんてありえませんよ~」


 山本さんはケラケラと笑う。


 この『Angel』は"演奏がしやすい曲"ということで非常に有名だ。

 ペルソニアの影響で全国の中~大学の軽音部の入部志願者が5~6倍に増えたなんてニュースを聞いたこともあるが、その時にあらゆるギター初心者がこの曲をこぞって練習していたらしい。


(正体がバレないように適当に弾くか……適当に……)


 そう思いつつギターを手にして俺は彼女たちを見た。

 3人とも嬉しそうな眼差しで俺を見ていた。

 そんな姿を見て、俺は考え直す――。


 いいのか?

 正体がバレたくないからって、適当に演奏なんかして。

 目の前に音楽を聞きたがっている人がいるのに?


 ――そんなの、絶対にダメだ。


 俺はギターのボディを軽く叩いてリズムをとると、弦に指をかけて『Angel』を弾き語りした。

 図らずもこの曲は妹、あかねへの愛情を歌にしてできたモノだ。


 『美しすぎる者を前にした時の喜びや好奇心、湧き出てくる少しばかりの嫉妬心やいたずら心を唄った曲』と音楽番組では説明した。

 そんなに間違ってはいないだろう。


 あかねはまさに清純で(けが)れを知らぬ天使(Angel)なのだから……。


◇◇◇


 ……結局、俺は魂を込めて最後まで歌いきった。

 そもそも、これはあかねに向けた曲だ、手を抜くなんてありえない。

 キモがられてしまうので、この曲が出来上がった経緯はあかね本人に言ってないけど……。


 声はシオンと全く違うし、アレンジも効かせた。

 これならバレることはない。


 ――弾き終わると、彼女たち3人の瞳からは涙が溢れていた。


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
↓のタイトルをクリックすると他作品のページに飛べます↓
連載版始めました!
下のタイトルを押すと読みにいけます!
『【連載開始!】ライブ直前に怪我をしたアイドルの代わりにステージに立ったら、マネージャーの俺の方が大人気になってしまった件』
作品のブックマーク・☆評価お願いします!
<(_ _)>ペコッ
連載中ラブコメ!
下のタイトルを押すと読みにいけます!
『山本君の青春リベンジ~学校でイジメられてた俺が努力して生まれ変わり、戻ってきてからクラスメート達の様子がおかしい件~』
作品のブックマーク・☆評価お願いします!

    
新刊!
『【漫画】クラスで陰キャの俺が実は大人気バンドのボーカルな件』
  ▼▼▼ 画像をクリックすると、書籍情報へとアクセスできます ▼▼▼  
表紙絵
  ▲▲▲ 画像をクリックすると、書籍情報へとアクセスできます ▲▲▲  
― 新着の感想 ―
[一言] 凛月のプロとしてのプライドを感じました
[一言] 本編楽しみにしてます!
[一言] 妹をいじめようとした奴らに妹に捧げる曲… しかも初アレンジな感じに見えるのが… ネトラレではないけどちょっとモヤっとしちゃうぜ…
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ