第102話 やっぱり美少女じゃねぇか!
星乃と一緒に琳加の家に入ると、星乃は全員をジロジロと見始める。
「うわっ、琳加先輩胸大きい……固定資産税かかりそう。しおりん、アイドルオーラヤバい……一緒に居るだけで料金発生してそう」
お互いの自己紹介もそこそこに星乃は一人でなにやらぶつぶつと呟き、最後に前髪で顔が覆われた蓮見の顔をじっと見つめた。
「唯一、先輩の友達と言われて納得できるのはこの地味子ちゃんな先輩だけですけど……」
「ほ、星乃ちゃんっていうんだね! よ、よろしくね!」
見つめられたまま、間が保たない蓮見は冷や汗をダラダラと流しながら困り顔で挨拶をした。
「おりゃ!」
「ひゃん!?」
星乃は蓮見の前髪を掴んで無理やり上にあげるとその素顔を見て大声を上げた。
「やっっっぱりお前も美少女じゃねぇか!」
「な、なになにっ!? 何なのぉ!?」
蓮見は半泣きで目を回し、腰を抜かしてしまっていた。
星乃の奇行に俺は大きくため息を吐く。
「おいこら」
「あいたっ!」
俺は星乃の頭にチョップをかました。
そんなに強く叩いてないのに、星乃は大げさに頭をさする。
「お前、突然何してんだよ。蓮見にだけ」
「……確かに、蓮見先輩にだけこんなことをするのは不公平ですよね……よし、先輩かがんでください。先輩も眼鏡を外して前髪を上げてみます」
「公開処刑はやめろ」
「――そ、そそ、そうだぞっ! 星乃とかいうお前! こんなところで凛月の顔を晒すなんて絶対にやめた方がいい!」
琳加も必死に同意する、泣きたくなってきた。
ごめんなさいこの場に釣り合うようなビジュアルじゃなくて――。
「いだだ!?」
星乃が急に俺の耳をつまんで自分の口元に近づけ、囁いてきた。
「先輩? 変な勘違いしないでくださいね。先輩みたいな陰キャにはこんなに凄い方たちは釣り合いません。せいぜい運が良くて、私みたいな物好きな美少女が限度ですからね?」
「分かってるよ。俺は勉強ができるから頼られているだけだ」
「それでいいです。流石は先輩、ちゃんと身分をわきえていますね」
星乃に耳打ちをされている様子を見て、蓮見が俺を尊敬の眼差しで見つめる。
「でも、凄いね! 凛月って陰キャだから星乃さんなんてキラキラした人に近づくと蒸発しちゃうのかと思ってたよ!」
「あぁ、こいつは別だ。ファッション陽キャだからな。それになんか他人の気がしない」
「なんですかそれ? 私はもう家族同然ってことですか? 気持ち悪いですよ、気が早すぎます」
星乃がいつもどおり、ドン引きした視線を俺にくれると、朝宮さんも加勢する。
「そうだよ須藤君! すぐに女の子を変な目で見るのはやめて!」
「へ? いや、私は冗談で――」
「星乃さん、須藤君に何かされそうになったら私に相談してね!」
「な、なんですか!? うわっ、アイドルオーラが凄い! 目が痛い! てか須藤って誰だよっ!?」
朝宮さんに詰め寄られ、星乃は分かりやすく狼狽えた。