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第11話 舞台挨拶には彼女がいない

 

「監督っ! 誰ですかその可愛い子!? どこの事務所の子ですか!?」


 おい、鈴木よ。

 さすがにマネージャーのお前は分かれ。

 歌わせるぞ。


「はっはっは! 次の映画に出演する女優だよ! 一発で話題になるぞ!」


 あれ? 監督?

 さっきお断りしましたよね?


「ふざけていないで、早く準備をしましょう。俺は何をすれば良いんですか?」

「えぇ!? その声、シオンか!? 嘘だろ!?」

「鈴木は後で説教だ。すみません、メイクさんと衣装さん。俺をシオンの格好にしてくれます?」

「えぇ~! すっごく可愛いのにもったいないよ~!」

「大丈夫です、また終わったらこの格好になりますから」


 ゴネる担当さんたちを無理やり言いくるめてすぐに着替えた。

 俺が場の空気を乱してしまっている。

 変な格好で来てしまったせいだ。

 せめて、イベントが予定通りの時間に行われるように話を進めないと。


 目元を覆う仮面を装着すると、一度鏡の前で確認する。

 衣装メイクが終わると俺は次に酒木監督のもとへ。


「確認をさせてください。俺が壇上で挨拶する位置はここで~」

「もぉ~マジメだなぁシオン君は。おじさん、安心して仕事任せられちゃう」

「そんな事言いながら、誰よりもマジメに作品を作ってる方に言われたくないです」

「おいおい、シオン君ほどのアーティストなら俺にゴマを擦る必要はないだろう」

「だからこそ、さっきのはショックだったんです。あんな簡単に、映画の出演なんて」

「いや、俺は本気だぞ! シオン"ちゃん"を映画に出して撮りたい!」

「他の頑張っている役者に失礼です。気の迷いだと思っておきますから」


 俺は少し不機嫌なまま次にイベントの司会者である女子アナウンサーに話しかけた。


「壇上でのトークが終わったら、退場しても大丈夫でしょうか」

「あ、し、シオンさん! あ、あ、あの……!」


 女子アナは非常に戸惑っていた。

 緊張してしまっているみたいだ。

 凄く若いみたいだし、新人さんなのかな?


「おい、シオン。あまり顔を近づけてやるな」


 鈴木が俺にそんな事を言ってきた。

 こいつはよくミスをするが助言は本物だ。

 俺は彼女に水を手渡すと、少し距離をとった。


「すみません、俺も緊張しちゃって……つい前のめりになっちゃいました」

「い、いえっ! とんでもないです! や、やっぱり仮面越しでもオーラというか……雰囲気というか……そ、そういうのに当てられてしまって!」

「は、はぁ……」


 彼女は混乱しているようだ。

 よくわからない事を言っている。


 彼女は俺の渡した水を少し飲んだ。

 胸を押さえて深呼吸し、彼女は心を落ち着かせる。


「えっと、お伝えしていなかったのですが。シオンさんに最後にやってもらいたい事がありまして」

「はい、何でしょう?」

「こ、このボール型のカプセルを観客の一人に投げて欲しいのです!」

「これは?」

「このボールを受け取った人にはシオンさんがその場でサインを書いて渡します」

「プレゼントですね、分かりました!」


 流れを確認し、いざ会場へ。


 座席に1人、待たせてしまっている琳加へ罪悪感を覚えながら。



 ~~~~~~~~~~



「それではここでサプライズゲストの登場です!」


 司会の女子アナ、白石さんが堂々と呼びかける。

 良かった、もう緊張はしてないみたいだ。


 割れんばかりの歓声の中、俺は酒木監督と共に壇上へ。

 悲鳴に近い声量に酒木監督は笑いながら耳を塞ぐ。

 一方で俺は深々とお辞儀をした。


 そして、琳加の座っている席に目を向けてみる。

 琳加は驚きの表情からとても嬉しそうな表情へコロコロと変わっていった。

 ここに来るまでに一緒に歩いていた琳加がシオンを語っていた様子からよく分かる。

 琳加は本当にシオンの事が大好きなのだろう。

 今回のサプライズの舞台挨拶も嬉しくて仕方がないはずだ。


 ――しかし、琳加はすぐに席を立って慌てて会場を出ていってしまった。


(しまった……琳加のやつ、俺を呼びに行ったな)


 きっと俺にもシオンを見せてあげたかったのだろう。

 だが、外を探しても、トイレに行っても俺はいない。

 すぐに諦めて戻ってきてくれるといいんだが……。


 こうして、琳加がいないまま舞台挨拶が始まってしまった。


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[良い点] 続きが読みたい はやくぅうう
[一言] ばらす訳には、いかんよなぁ
[一言] !?アネさ〜んカムバッ〜ク!
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