第100話 美少女だらけの勉強会
「星乃~! 生徒会辞めたんだって?」
「うん、何か私がしたいこととは少し違うなって思って~」
星乃はクラスで男子たちに話しかけられた。
その中の1人が鼻息を荒くして距離を詰める。
「じゃ、じゃあさ! ヒナっち、今から俺と遊びに行かない?」
「私、この後忙しいんですよ~だからごめんなさい~」
星乃は愛嬌たっぷりに謝ると、その男子生徒の肩に後ろからポンッと手が置かれた。
「緒方、諦めろ。数多の男たちがこいつをデートに誘ったが成功した奴はいない」
「ヒナヒナ、意外とガード固いんだよな~」
「そういうわけで、もう行きますね~」
星乃はそう言ってカバンを背負うと、教室を出る前に男子たちの方へと振り向く。
「それと、私のことを『ヒナ』って下の名前で呼ぶのはやめてくださいね。星乃って名字、キラキラしていて気に入っているので! それでは!」
星乃は颯爽と教室を出て行く。
「……星乃、何かあったのかな?」
「何だかハッキリと言うようになったよな。媚びなくなったっていうか」
「もしかして、男が──?」
背後で聞こえる男子生徒たちの言葉に少しいい気になりながら、星乃は校門で人を待った。
◇◇◇
放課後──。
俺は約束している勉強会の為に琳加の家に向かう。
滅茶苦茶目立ってしまうに決まっているので、もちろん琳加たちと一緒に行ったりはしない。
校門では、やけにニコニコとした表情の星乃が誰かを待っていた。
一応知り合いだし、挨拶くらいはすべきなのかもしれないが、学校では身分が違いすぎて声をかけるなんてあり得ない。
星乃に迷惑がかかってしまう。
それを星乃も承知しているのだろう。
ニコニコとした表情を崩さず俺が目の前を通過するのを黙って見送った。
──はずなのだが、何故か星乃が俺の数メートル後ろをつけてきている気がする。
あいつの家はこっちじゃない、誰かと待ち合わせをしているように見えたのだが……
こちらに何か用事があるのだろうか?
そうして、学校から少し離れたところで声がかけられた。
「やっと、二人きりになれましたね! 先輩!」
そして、背後から俺の後頭部にチョップをかます。
嫌な予感はしていたが、本当に俺が目的だったらしい。
「……あの、星乃さん? 僕たち別に約束とかしてないですよね……?」
「何ですか、そのよそよそしい呼び方! 私のことは『ヒナ』って呼んでください!」
「いきなり下の名前かよ……陽キャのリア充は距離感バグってんな」
「ほら、呼んでくださいよ!」
「えっ、じゃあ……ヒナ」
「はい! 先輩!」
「お前は俺のこと名前で呼ばないのね」
「先輩は先輩なので!」
こいつのよく分からない理屈は置いておいて、俺は叩かれた後頭部をさすりながら尋ねる。
「それで、どうしてついてきているんですか、ヒナさん?」
「暇なので! 先輩と一緒です!」
「どうして俺も暇な前提なんですかね……。残念ながら俺は今から勉強会だ」
「勉強会っ! 先輩にもお友達がいたんですね、よかったです……!」
星乃はそう言って、感激するように目をこする。
海音といい、おかんみたいなムーブをするのは惨めな気持ちになるので、できればやめてほしい。
「ですが先輩! 勉強でしたら私が教えますよ! なんたって私は次席! 学年2位ですから! 流石に主席合格をしたスーパー女子高生のあかねちゃんには負けますが……」
愛する妹の名前が出てきて、思わず身体がピクリと反応する。
星乃は学年で一番の美少女であるあかねが俺なんかの妹だなんて夢にも思っていないだろう。
俺も信じられないもん。
「勉強会なんて名前だけで実際には俺が勉強を教える会だから来なくて大丈夫だぞ。それに、お前は1年生なんだから2年生の勉強範囲なんて分からんだろ」
「じゃあ、私も先輩に教えて頂きます! いずれ私も学ぶ範囲ですし、予習というやつですよ!」
「それは偉いが……え? 本当に来るの?」
「だから、そう言ってるじゃないですか! それに先輩に友達なんて怪しいです! 実際は先輩がイジメられていたりしたら心配じゃないですか!」
「大丈夫だ、俺はイジメられたらちゃんとお金は貢ぐしパシりもする。従順だから酷い事はされない」
「それ、全然大丈夫じゃないですよ……。それに、どうせ陰キャ男子だらけのむさ苦しい空間に私のような美少女が降臨するんですよ! きっと勉強どころじゃなくなります!」
「じゃあ、ダメじゃねぇか!」
そんなくだらない会話を星乃と続けているうちに琳加の家の前にまで着いてしまった。
当たり前だが、星乃の頭の中では俺の友達は男しかいない前提か。
残念だったな男ですら友達いねぇわ。
「ここが、先輩の家ですか?」
「ちげぇよ、今日の勉強会の開催場所だ。お前と一緒に歩いてるのが学校の誰かに見つかって変な噂が立つと厄介だから人通りの少ない道を選んで回り道をしてきた。そのせいで到着したのは俺たちが一番最後だろうが……」
「気を使っていただきありがとうございます! 先輩のそういうところ、好きですよ!」
また俺をからかう為に星乃はそんなことを言った。
やめて、脈があると思っちゃうから。
「先輩のお友達ですかぁ……まぁ、期待はしていませんので変に気は回さないでくださいね。つまらなかったら先輩を連れて帰りますし」
「それは勝手に一人で帰ってね。俺を巻き込むなよ」
ここまで連れてきてしまったならもう仕方がない。
星乃を連れて、俺は琳加の家のインターフォンを鳴らす。
「……は?」
琳加の家の玄関前──。
星乃は俺の隣で口をポカンと開いたまま、手に持っていたスクールバッグを落とした。
目の前には俺を出迎えに来た琳加、蓮見。
そしてなぜか朝宮さんが琳加にピッタリと張り付いて俺を睨みつけていた。
ついに、100話です!
読んでくださっているみなさま、本当にありがとうございます!
また、新作の
『山本君の青春リベンジ~学校でイジメられてた俺が努力して生まれ変わり、戻ってきてからクラスメート達の様子がおかしい件~』
の方も先日100話を超えました!
本作の読者さんは楽しめると思いますので読んで欲しいです!
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「100話、おめでとう!」
「続きが楽しみ!」
「早く読みたい!」
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病気がちで未熟なよわよわ作者ですが、
これからもよろしくお願いいたします……!
<(_ _)>ペコッ