第98話 神之木冬至は見逃さない
(しかし、やっぱりしおりんが雑誌の表紙を飾っていることをもっと多くの人に知ってもらいたい……。どうにか……!)
そう考えながら雑誌を見つめていると、ふいに肩が叩かれた。
「おっ、須田! お前が舐め回すように見てるそれは朝宮さんが表紙のキャムキャムじゃねぇか!」
神之木がクラス中に聞こえるくらいの大声で叫んだ。
意図してかは分からないが、クラス中の注目が集まる。
「シオンもスゲーけど、やっぱり朝宮さんもスゲーよな!」
そして、いつもの笑顔と共に親指を突き出した。
神之木……このペルソニア一色の雰囲気を変えてくれたのは凄くありがたいがお前のそのいつもの冗談めいた言い回しが今は非常に不味い。
「あはは……須藤君も買ってくれたんだ。ありがとうね」
朝宮さんは若干引きつった笑顔でそう言った。
いや、違いますよ。
確かに舐め回すように見てしまったかもしれないけれど、本当に舐めたわけじゃないです。
「そうだよっ! しおりん雑誌デビューおめでとう!」
「忘れてたわけじゃないんだよっ! 言い出すタイミングがなくって!」
「うん! 雑誌もほら、ちゃんと手に入れてるんだ!」
周りのクラスメイトたちも慌ててしおりんを祝福し始める。
「みんな、ありがとう! といっても、これもシオン様のお陰だから……ここからはちゃんと自分の力でシオン様に追いつけるように頑張らないと! そして、で、できたらもう一度、シオン様とお話してみたいなぁ……」
やはり自分が雑誌の表紙に載せられているのは恥ずかしいのだろうか
しおりんは顔を真っ赤にして両手で顔を覆う。
あと、シオン様もできればしおりんとお話したいです。
「……須田、お前朝宮さんと何かあったのか?」
しおりんの俺への態度を見て何かを感じ取った神之木は机の前でしゃがみ、座っている俺と目を合わせてきた。
そんな様子を見て、俺の斜め後ろの席の蓮見は意を決したように立ち上がる。
「あ、あの! しおりんっ! ち、違うの……本当は──」
「蓮見! 雑誌、取り置きしてくれてありがとうな! シオンの新聞も沢山入荷したからまだ残ってるんだよな? 帰りに買わせてもらうよ!」
俺は慌てて蓮見の言葉をさえぎった。
俺の様子を見て、神之木も何かを察し、続ける。
「そういえば、蓮見の家って本屋なんだっけか! 俺も帰りに買いに行くぜ!」
「――あっ! えっと、その……!」
──キーンコーンカーンコーン。
「おーい、お前ら全員一瞬で席に着け。殺すぞ~」
始業のチャイムと同時に2年B組の担任教師である阿久津先生が死んだ目で教室に入って来た。
どういうわけか、仕事のやる気も無く瞳も死んでいる彼女の方が既婚者である。
「須田、何があったのか今度俺にだけ教えてくれよな」
「別に話すようなことじゃ――」
「須田は誰かの為に身体を張っちまうからな。バドミントンの時もそうだっただろ? この神之木冬至様にはお見通しだぜ?」
神之木は親指を突き立てると、俺にウィンクをした。
俺はため息を吐く。
「別に、何でもねーよ」
「そうか、須田がそう言うなら、そういうことにしておいてやるかな!」
そんなことを言ってケラケラ笑うと、神之木も席に戻っていった。
須田のクラスの担任の阿久津先生はコミカライズの方で先に登場してました!
怠惰な残念美人感とキャラデザが個人的には凄く好きです!
そして神之木は書きおろしでもよくオチに使われますが、良い奴なので女子に嫌われてるのが不憫ですねぇ…報われて欲しい。
神之木のキャラデザもかなりお気に入りです!
引き続き、よろしくお願いいたしますー!





