第97話 しおりんは演技上手?
重いまぶたをこすると、俺は目を見開く。
(――そんなこんなで寝不足だが、しかし! 俺には疲れを吹き飛ばすマル秘アイテムがある!)
俺は周囲の目を盗んでコソコソと机の横にかけているカバンから一冊の雑誌を取り出す。
まぁ、別にコソコソなんてしなくても誰も俺なんて見てないんですけどね。
これは女子高生のカリスマ的存在や有名モデルなどがいつも表紙を飾る『キャムキャム』という大人気雑誌である。
そして今月号の表紙は──!
「みんな~! おはよ~っ!」
丁度、教室の前の扉から明るい声が聞こえてきた。
はい、女神こと朝宮さんです。
俺は雑誌の表紙で輝く笑顔を見せる朝宮さんと、たった今教室に入ってきて笑顔で挨拶をする朝宮さんを五回くらい首を往復させて見比べる……赤べこになった気分だ。
(やべぇよ……雑誌の表紙の女の子が今目の前にいるよ……。神様、ありがとうございます……)
「しおりん! 今朝の見た!?」
「凄いよね! びっくりしちゃった!」
陽キャグループの女子、早乙女と初音がすかさず朝宮さんに駆け寄った。
よしよし、今回は流石にクラス中が華々しく雑誌の表紙を飾ったしおりんの話題で持ちきりだろう。
俺はしおりんに嫌われていて、直接はおめでとうを言いにいけないのでいっぱい祝福してあげて欲しい。
二人は鬼気迫る表情で朝宮さんに新聞を差し出す――新聞?
「ペルソニアの新聞ジャック!」
「全国の新聞5紙に各メンバーがそれぞれデカデカと超カッコいいポーズをとって新曲の告知をしてるの! 一番人気はもちろんシオン君っ!」
俺は机に頭を打ち付ける。
(またペルソニアかよっ!!)
いや、俺がしおりんの雑誌の表紙デビューに浮かれすぎていただけでよく見るとクラス中みんなが普段読みもしない新聞を持ってキャーキャー言っていた。
これじゃ、またしおりんが悲しい思いをしてしまうんじゃ……。
しかし、朝宮さんは満面の笑顔で初音の手を握った。
「もちろん、全部手に入れたよ! シオン様のなんて、保存用と部屋に飾る観賞用、あと汚しちゃった時の予備のために5枚も手に入れたんだから!」
しおりん……!
流石はアイドルだ、雰囲気を壊さないようにクラスの話題に全力で乗ってあげている。
「今朝は新聞のシオン様を見つめていて遅刻しそうになったほどなんだから!」
「あはは、わかる~! しおりんなんてライブで絶対絶命なところを助けてもらった事もあるもんね!」
「うん! あれは本当に何度も夢に見ちゃうんだ~!」
あんなに瞳を輝かせて、シオンの事を熱く語っている。
まるで本当にシオンにガチ恋する乙女のように振舞うことによって、しおりんは周囲の女生徒たちを盛り上げていた。
あれだけ上手に演技ができるならドラマや映画のお仕事が来ても問題なさそうだ。
お待たせしてすみません!生存報告も兼ねての更新です!
新作の方もお待たせしてしまい申し訳ございません、色々と作業中です!
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