第94話 百点満点の笑顔です!
今回は星乃の一人称視点になります。
──面白い人に出会った。
出会いは生徒会室。
私は出会い頭にいきなりその先輩に酷い言葉で八つ当たりをした。
勘違いしないで欲しいのは、私は普段そんなことなんてしない。
優等生で、分け隔てなく誰にでも優しい美少女。
それが私、星乃陽菜だ。
言い訳をするなら、疲れ果てて頭の中がぐちゃぐちゃになっていたから。
それと、その先輩が見るからに友達の一人もいなさそうな『陰キャ』だったから。
(まぁ、こいつにならどう思われてもいいか……)
初めてそんな邪な感情を持ってしまったのだ。
しょうがないじゃない、人は見た目だ。
みんな、上っ面しか見ようとしない。
だから私も自分の好きなモノに見切りをつけて、諦めながら生きてきた。
私はシオンとは違うんだ、私は好きなモノを卒業しなければならなかった。
そうやって自分を納得させようとしていた。
──先輩の歌を聞くまでは。
多分、先輩は他の人と違って私の内面を見ようとしてくれたんだと思う。
だって歌の内容はまさに私が心のうちに抱えている問題の答えのようなモノだったから。
好きなモノは心の支えだ。
感じたことは間違いじゃない。
自分で自分を愛してやらないと心がぐしゃぐしゃになってしまう。
他人の歌を、まるで自分の言葉のように使ってそれを教えてくれようとしていたように思う。
先輩は歌が上手くて、まるで先輩自身の言葉のように錯覚してしまったくらい。
悔しかったから誤魔化したけれど、私はしばらくカラオケ屋さんのトイレで泣いていた。
嫌いに思うしかなかった本来の自分を好きになってもいいって言われたみたいで、嬉しかった。
そんなことを言ってくれる人がいるとは思ってなかったから……。
「――星乃が楽しめたなら。俺は陰キャでよかった」
帰り道、先輩はそんなことを言って笑う。
無自覚なんだろうけれど、そんなことを言われたらまた泣いてしまいそうになる。
きっと、先輩は誰のためにも身体を張って頑張ってしまうような優しい人なんだと思う。
お節介で、不器用で、ひねくれていて……。
相手の事ばっかり考えて、自分がどうなるかなんて考えやしない。
そんな先輩だからこそきっと傷つけられるようなことも多いだろう。
今日、色んな意味で私を救ってくれたように私もいつか先輩を何かから救い出してあげたい。
──そんなことを考えながらお風呂から出ると、私はベッドに寝転んでスマホを開いた。
今日撮った写真を改めて確認する。
そして、一人で吹き出しながら呟いた。
「あはは、改めて見たらどこにもカラオケの点数なんて映ってないじゃないですか。……まぁ、でもこれは間違いなく百点満点ですよね」
そこには、いつもの愛想笑いではない──久しく見ていなかったような無邪気な笑顔で笑う私。
それと、写真にビビり散らかしてる面白い先輩の姿が映っていた。
【お知らせ】
これで、第四章(4曲目)は終わりになります!
少しでも楽しませることができていましたら幸いです…!
【読者様への大切なお願い】
新作ですが、タイトルを
『英霊使いの劣等生~最強の元英雄は正体を隠して平穏な学園生活を送ります~』
に変更しました!
しかし、評価やブックマークが伸びず……こうなると新作の方の更新を頑張らないといけないので一時的に『クラスで陰キャ』の方の更新を休もうと思います……力不足ですみません。
ぜひ、下にスクロールしてどちらの作品もブックマークと評価をしていただけますと幸いです…!
まだ導入ですが、学園ラブコメ作品になっていく予定なので皆さんも楽しめると思います!
引き続き、よろしくお願いいたします!<(_ _)>ペコッ