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第93話 これが本当の私


 やはりお代は取られずに俺たちは横浜から地元の駅に帰ってきた。


「あのカフェ、気に入っちゃいました! 私たちの地元からは少し遠いですが……コーヒーも凄く美味しかったですね~」

「そうだな。ここだけの話、猫のフンから作られてるらしいぞ」

「そんな嘘信じませんよ~。何だか立派なグランドピアノも置いてありましたし、もしかしてマスターさん弾けたりするんですかね?」

「ど、どうだろうなっ!? 聞いたことはないな~!」


 薄暗い道を一緒に歩きながら星乃と話す。

 すると不意に呟くようにして、星乃は落ち着いて語り始めた。


「……先輩、今日は本当にありがとうございました。散々振り回されてダルかったですよね? ウザかったですよね?」


 急に素直になられて、俺は少しだけ困惑してしまう。

 表情を見ようにも、星乃はワザと見せないように俺の少し前を歩いているようだった。

 そんな星乃に――俺は今日感じたままを話すことにした。


「あ~、確かにな。俺はお前の気晴らしに散々利用されたわけだ。お前がやりたい放題やって、トラブルにも見舞われた」

「そ、そうですよね……ごめんなさい」

「──でもな」


 自分の後頭部をワシワシと手で引っ掻き、恥ずかしさを堪えながら俺も素直な気持ちの続きを述べる。


「それでも俺は楽しかった。その……ありがとうな、誘ってくれて」


 俺の言葉を聞くと、星乃は驚いたような表情で俺へと振り返った。

 そして、少し震えた声で呟く。


「……先輩、やっぱりドMなんですね」


 星乃も恥ずかしさに耐えきれなくなったのか、俺の背中を無意味にバシバシと叩いて笑った。


「あはは! なんだか、私久しぶりにちゃんと人と話せた気がします! 人気者じゃない自分で! あ~楽しかった!」


 星乃にとってはいい息抜きになったみたいだ。


 もともと、星乃がこんなふうに振る舞おうと思ったのは俺のこの陰キャで根暗そうな姿を見たからだ。

 そんなことを考えると、つい俺の口から言葉がこぼれた。


「星乃が楽しめたなら。俺は陰キャでよかったよ」


 そう言うと、 星乃は何やら急にうつむいて目をこすった。

 今日は色々とあったし、もう疲れて眠いのだろう。


「先輩、送ってくださりありがとうございました! 私が築き上げてきた人気者のイメージがあるので学校では仲良くできませんが、それ以外ならいつでも連絡してきていいですよ!」


 両手の人差し指でバッテンを作って星乃は笑う。


「安心しろ、そもそも陰キャの俺から陽キャのお前に学校で話しかけることなんてできるはずもないから」

「あはは~、そうですよね! では、先輩今日は本当にありがとう──」

「星乃、ちょっと待った」

「何ですか?」


 俺は星乃の頬にポテトの食べカスが付いてるのに気がついた。

 楽しかったのはいいが気が抜けすぎだ、これじゃ『才色兼備』どころか『食欲旺盛』の肩書きの方が似合っている。


「……星乃、動くなよ」


 そう言って、星乃のあごを左手で掴んで固定する。

 あかねの面倒を見てきた俺にとっては無意識とも言えるくらいに自然な行動だった。


「えっ!? えっ!? えぇっ!?」


 一瞬、星乃は戸惑いの声を上げた。

 しかし、すぐに瞳を閉じて俺に委ねる。

 俺は右手で星乃の頬に付いてたポテトの食べかすを取ってやった。

 その瞬間、星乃の身体がビクリと震える。


「……ま、まだですか? こ、ここまでしておいて、ヘタれてるんですか?」

「いや、もう口元の食べカスは取り終わったぞ。というか、お前なんで目をつむってるの? やっぱりもう眠いの?」

「……食べカス?」


 俺の言葉を復唱し、目を開いた星乃は顔を真っ赤にした。


「はぁ!? せ、先輩! こんなのセクハラですよ!? 訴えますからね? 暴力に!」

「暴力にかよ!? ありがとうございます――じゃなくて、悪かったって。つい妹と同じようにしちまって……」

「ほ、他の子にやったら通報しますからねっ! 全くっ!」


 星乃は腕を組んでそっぽを向いた。


「じゃ、じゃあ私の家はすぐそこなので! 今度こそさようなら! 先輩も気をつけて帰ってくださいね!」


 それだけ言うと、ドシドシと足音を立てて俺から離れていった。


(まぁ、自分のほっぺにずっと食べカスが付いてたなんて分かったら恥ずかしいよなぁ。もう少しデリカシーのある対応してやればよかったか……)


 星乃の心情を察し、反省しながら俺も家路についた。


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