第1話 妹とテレビで自分のニュースを見る朝
新作です。
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「それでは、今日の音楽ランキングの発表です!」
やけにテンション高くアナウンサーが毎朝恒例の音楽ヒットチャートの順位を発表する。
「――そしてっ、今朝も1位はこの曲! ペルソニアの『Hello-world!!』です!」
そんなテレビの画面を俺、須田凛月は妹のあかねと二人で食パンにかじりつきながら見ていた。
「このアナウンサー、絶対お兄ちゃんのこと好きだよね。いつもこの瞬間だけ妙にテンションが高いもん」
ミディアムヘアーの黒髪を綺麗に整え、登校の支度を終えたばかりの我が妹がそんなことを口にした。
俺は思わず鼻で笑ってしまう。
「俺の『音楽』が好きなんだろ、歌ってるのがこんなチンチクリンの高校生だと分かったらどーせすぐに手のひらを返すぞ」
「もう、お兄ちゃんってば本当にネガティブなんだから」
「違う、俺はネガティブじゃなくて用心深いんだ。期待値が低ければ傷つく事もないだろ? 実に論理的な心の防衛手段だ」
俺は一分の隙も無い持論を語るも、我が妹はテレビ画面の俺の特集を見ながら「ア~、ソウデスネ」と呟くだけだった。
「……で? 用心深いから今日もそんな格好で学校に行くわけ?」
我が妹はそう言うと、俺の姿をじろりと見やる。
「髪は長くてボサボサ、度の入ってないグルグル丸眼鏡、そんなステレオタイプのオタクなんてもはや逆にいないわよっ!」
「いやっ! 完璧に変装できてるからっ! 誰にもバレてないから!」
「バレてないのは、まだアーティストとして顔を公表した事がないからでしょ……まぁ私としても安心だからそのままでいいんだけど」
「そうだ、安心してくれっ! 絶対にバレないようにする! お前や家族には絶対に迷惑をかけないようにする!」
俺の決意のこもった言葉を聞くと、あかねは大きくため息を吐いてしまった。
やはり頼り無いと思われているのだろうか。
「まぁ、お兄ちゃんがそれで良いなら良いんだけど……辞めたかったらいつでも辞めていいからね、それだけ」
コップに入った牛乳を気持ちよさそうに飲み干すと、妹は食器を片付け始めた。
「俺が洗うよ」
「良いから、お兄ちゃんは先に学校に向かって。兄妹で登校するのも目立っちゃうでしょ」
「そ、そうか、悪いな」
カバンを背負うと、玄関へと続く廊下への扉を開く。
そうして、家を出て行こうとしたとき、ふと言い忘れていたことを思い出した。
「髪、少しだけ切ったんだな。良いと思うぞ」
それだけを言うと、扉を閉めて俺たち兄妹が通う白星高校へと向かった。
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