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足して2つの高校生活  作者: 赤槻春来
1月─2.2度目の正月
48/51

サプライズ・ニューイヤー

「…め…じめ…」

「…ん…ぅ…」

 1月1日の朝。

 部屋の空気が冷え切る中、布団にくるまっていた俺は、何者かに身体を揺さぶられると、眠たいを擦りながらそっと天井へと視線を向けた。

「…ん?」

 じわじわとはっきりしてきた俺の意識。

 誰がいるのかと思って上を見ても、見知った天井が目に映るだけ…

 もしやと思って左を見ると、逆光とともにこちらを見つめる由良の顔が目に入った。

「…ゆら?」

「うん。誕生日おめでと、はじめ」

「あ、おう…ありがと」

「もうみんな起きてるから、早めに着替えちゃってね」

「りょーかい…っと」

 今にもスキップでもしだしそうな、上機嫌な様子で部屋を出ていく由良。

 布団から這い出た俺は、縮まっていた手足を思いっきり伸ばすと、ボサボサの髪のままそっと自室を後にした。



ーーー



 昼過ぎ、例年の通り俺の誕生会を終えた俺達が例のごとく人生ゲームの準備をしていると、不意にピンポンとインターフォンが鳴った。

「…誰か来たな」

「亮ちゃんの友達かな?」

「リョーにはそんな約束してる暇も友達もいないよ」

「…とりあえず、ちょっと私が出てくるよ」

「助かるわ由良」

 そう言って流れるように立ち上がり、玄関へと向かう由良。

 亮…我が弟ながらそんな真顔で悲しくなること言わんでくれ…

 …にしても、誰だ?

 四六時中2人でいる明と椿ちゃんなわけ無いし、俺も誰かと約束した覚えはないぞ?

 俺がそんなふうに考えていたのも束の間、対応の終わったらしい由良が玄関から戻ってくると、それに続くようにいくつかの足音が聞こえてきた。

「はじめー!明けましておめでとう!」

「いっちゃんあけおめー!」

「おー…誰かと思えば霞と春か。明けましておめでとう」

 満面の笑みを浮かべながら、元気に挨拶する2人。

 去年も一緒にいた由良はともかく、2人が元旦である今日遊びに来るのは完全に予想外だったわ…

 手を洗い、さも当然のようにゲームに加わる2人を前に、俺は謎の安心感を覚えると身体の向きをそっともとに戻した。



ーーー



「…じゃあ次、私の番ね」

 由良の番が終わり、霞のそんな台詞と共にカラカラと音を立てながら回ったルーレットは、先程と同様に『10』の位置でピタリと止まった。

「若林さん、今日運良すぎじゃない…?」

「えー…なんかそれやだなぁ…」

「なんでさ」

「だって、それじゃここで今年の運めっちゃ使ってる感じするじゃない…」

「あー…確かに…」

 霞のその言葉に、上を見ながらわかったように頷く春。

 でもまぁ、確かにそんなんで運使い果たしてたら最悪だわな…

 霞は、「いち、にぃー、さん…」と小さく呟きながら自らのコマを進めると、9マス進んだところでそれを止めた。

「結婚…?」

 何処か驚いた様子でポツリと呟いた霞。

 どうやら『結婚マス』に止まったらしい。

「…なんで結婚はストップ(強制)なの…?」

 しばらくの間、マスに書いてある文字とにらめっこをしていた霞は、俺達の顔を見渡しながらそう言うと、不思議そうに首を傾げた。

「これって独身とか事実婚とかじゃダメなの?」

「いや、若林さん…?これってそういうゲームだからね…?」

「でもほら、最近はそういう人も多いし…」

「はいはい、つべこべ言わずにさっさと進めて進めて。別にリアルじゃないからそういうのは気にしなくていいの。ね?」

 平行線になりかけた霞と春の会話に割って入った由良。

 霞はしぶしぶといった様子で俺のコマからピン(・・)を引き抜くと──

「っておい、待て待て待て!」

「ん…?何?はじめ」

「いや、ソレは俺の分身みたいなやつだから!?」

「うん、だから入れたんだけど…」

「だからって…いやいや、こっちの余ってるピンを─」

「はいはい、五十嵐がその余ったやつ使えばいいでしょ」

「いや…まぁ、そうか…」

 何処か怒気を孕んだ声を上げながら、俺にそういう由良。

 霞が初心者とはいえ、あの言い回しだとまるで俺と─

「いっちゃん?何考えてるの?」

「あっ、いや、なんでもない」

 そう言いながら何故か怖いくらいに笑顔を向けてくる春を前に、俺は反射的にそんな声を出すと、そっと視線を自分のコマへと戻した。

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