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足して2つの高校生活  作者: 赤槻春来
12月─2.今までと、これからと
47/51

クリスマス前の…

「おはよう、俺のにのまえ!」

「おう、おはよう仲村。あと、俺はお前のもんじゃないぞ」

 12月23日。俺はいつものように霞と共に登校すると、丁度同じタイミングだったのか、校門を通ろうとする仲村と鉢合わせた。

「そんな釣れないこと言うなよ…俺とにのまえの仲じゃないか!」

「あーはいはい。そうですね…っと」

 俺の反応に、何処かわざとらしく拗ねたような仲村。

 …まぁ、コイツも吉田と同様に気のしれた仲なのは事実だしな。いい加減俺の名前を呼ぶ時に『俺の』って付けないでくれたら嬉しいんだけど…

「はじめ、そんなことよりも早く教室入ろう?ここじゃ寒い」

「おう、そうだな…」

 何処か仲村を睨み付けるように、そう言って俺の肩を叩く霞。

 俺と仲村はそんな言葉に小さく頷くと、冷たい空気を裂きながら教室へとその足を急かした。



ーーー



「あの、にのまえさん…ちょっといいですか?」

 午前の授業が終わり、俺、霞、春の3人でいつものように部室に向かおうとすると、不意にそんな声と共に俺の肩がポンポンと叩かれた。

「…ん?」

「堀江さん、はじめに何か用?」

 俺が口を開くより先に、そう返した霞。

 なんか言葉に棘があるような気がするんだが…気の所為、だよな…?

「あ、いえ…たいした用ではないんですけど、にのまえさんなら相談に乗ってくれるって渡部先生が…」

「相談…?」

「はい…あ、若林さんと井上さんも相談に乗ってくれますか…?」

 俺が口を開く間もなく交わされる霞と堀江妹の会話。

 堀江妹は俺達になんか相談するようなことがあるのか…ってか渡部のやつまた要らんことを…

「…まぁ、俺がなんかできるとは思わないけど…相談くらいなら別にいいぞ」

「はじめ!?」

「いっちゃん!?」

「いや、なんで2人して驚いたみたいな反応してんだよ…」

「ぅ…」

「それは…」

 何処か言い淀むように、言葉を濁す2人。

 そんな2人の身中を察したのか、堀江妹は不意に俺に目配せをすると、おずおずとその口を開いた。

「あの、できれば3人で聞いてもらえると助かるんですが…」

「3人で…?」

「まぁ、それならあたしは別に…」

 堀江妹の言葉に、お互いの目を合わせながらそう言う2人。

 …なんとか丸く収まった、のか?



ーーー



 堀江妹と共に部室にやってきた俺達は、各々の荷物を下ろすと、それぞれ椅子やソファーに腰掛けた。

「…それで、俺達に相談って何なんだ?」

「えっと…兄さんからにのまえさんがなにか欲しいものがないか聞いてくるように言われてて…」

「俺の欲しいもの…?なんでまた…」

 俺がそこまで言いかけて、何処か呆れたように視線を逸らす堀江妹。

 霞と春はそんな堀江妹の行動に対しなにか言いたげにこちらに視線を向けてきた。

「はぁ…相変わらず鈍いですね…」

 ポツリと漏れた堀江妹のその言葉。

 その瞬間、座っていた2人が不意にガタッと席を立つと、2人して叫ぶように口を開いた。

「はじめ!やっぱり相談こんなの乗るの辞めよう!」

「いっちゃん!やっぱり相談こんなの乗るべきじゃないよ!」

 同時にそんなことを言う2人に、状況が掴めず固まる俺。

 …いや、なんで2人はこんなに血相を変えてるんだ…?

 長いようなそんな一瞬の思考の中、俺が何気なく視線を動かすと、そこには「2人のこの反応は想定済み」とでも言うような表情をした堀江妹が映り込んできた。

「あの、若林さんも井上さんも…なんでそんなことを言うんですか…?」

 一瞬にして表情を変え、何処か困ったような口調でそう言う堀江妹。

 なんだったんだ今の堀江妹の表情は…

 堀江妹のその言葉に、霞と春が互いに見つめ合う中、俺は別の意味で一人動けなくなっていた。



「…それで、アンタが聞きに来たって訳ね」

「えぇ。そういうことです」

 俺が出る間もなく、詳しく話を聞き出した霞と春。

 …どうやら堀江妹はサプライズで俺にプレゼントを用意しようとしてる兄に頼まれて、それとなく俺から欲しいものを聞き出せないかと頼まれたらしい。霞と春がいるのはプレゼントするときに2人と内容が被らないようにするためだとか。

 …いや、なんで妹経由なんだよ堀江兄(あのイケメン野郎)…それくらい自分でやればよかったのに…(結果的に全部バレてるし)

「…で、結局(にのまえ)さんは何か欲しいものとか無いんですか…?」

「欲しいもの、ね…」

 開き直った様子でそう言う堀江妹。

 いきなりそう言われてぱっと出てくるはずもないんだけど…適当に言って使い道に困るものとか渡されても嫌だしな…

「うーん…調理用のハサミも、包丁もまだ現役だし、鍋とフライパン、あとオーブンもこの前買い替えたしな…」

「見事にキッチン用品だらけですね…」

 俺の漏れた言葉に、驚いた様子でツッコミを入れた堀江妹。

 確かに、全部台所周りしか想像してなかったわ…他になにか、足りなくなってたりするものは…

「あ、そういえばいっちゃん、この前ハンガーが足りないとか言ってなかったっけ…?」

「あー…いやでも、それはお前らの分洗濯物が増えたからなんだけどな?」

「ん?」

「フライパン買い替えたのだって、お前らの分とか、最近は由良もよくいるし、作る料自体が多くなったからだからだろ…」

「えっ?」

「確かに最近頻度多くなったもんね、私達…」

「言われて見れば…そうかもしれない…」

「えっ?えっ…?あの…えっ?」

 俺達が会話してる中、意味不明といった様子でそんな声を漏らす堀江妹。

 …そういや欲しいものの話だったか。危ない危ない、危うく目的を見失うとこだったわ。

「あ、堀江さん」

「はい…?」

「欲しいもの、布団バサミかな。…なんか最近、布団干す頻度が多くなったからさ、この前気付いたら随分日光にやられてて…そろそろ壊れそうなんだよね」

「あ、はい…布団バサミですね」

「うん」

 何故か困惑した様子で手帳にメモを入れる堀江妹。

 …まぁ、困惑してるのはきっと、プレゼントには似合わないようなものだったからだろう。うん。…よく考えたら俺も、布団バサミ(コレ)がプレゼントされるとは思わないもんな。

 手帳に書き込み終わったのか、堀江妹はしばらく、俺達3人の顔を一瞥すると、何処か作り笑いを浮かべながらその口を開いた。

「えっと…」

「ん?」

にのまえさんは誰かと付き合ってたりは…」

「あー…まだしてないよ。うん」

「あ、そうなんですか…」

 歯切れが悪く、そう言う堀江妹。

 俺は、そんな不思議そうな顔をする堀江妹の本心を測りかねていると、話しかけるタイミングを見計らっていたのか、黙っていた霞が不意にその口を開いた。

「堀江さん」

「はい、なんでしょうか…?」

「…ちょっと、いいかな?」

「…はい」

 満面の笑みを浮かべながら、堀江妹と共に部室を出ていく霞。

 残された俺と春は、お互いの顔を見合わせると、何言うわけでもなくしばらくそこに固まっていた。



ーーー



「…ねぇいっちゃん」

「ん?」

 完全下校時刻を迎え、帰路についていた俺達3人。

 バスを待っている間、不意に黙っていた春がその口を開いた。

「ふと思ったんだけどさ」

「うん」

「なんで今日、響ちゃんとあの中二病はいなかったの?」

「あ、それ私もずっと思ってた!」

「だよね!?だよね!?いっちゃんなんか知ってる?」

 春の言葉に便乗するように、疑問の眼差しを向ける霞。

 俺は、自分の胸ポケットからスマホを取り出すと、電源を入れて着信画面を開いてみせた。

「あー…アイツ、今日なんか熱出して響ちゃんに介抱されてるらしいぞ。ほらこれ、今朝響ちゃんから来たメッセージなんだけど…」

 俺の言葉に、スマホを覗き込む2人。

 画面には「熱出た兄さんの介抱をするので休みます今日は休みます」という響ちゃんのメッセージと共に、明らかに辛そうな吉田の写真が写し出されていた。

「…これ、インフルエンザじゃないといいね」

「…うん」

「…なんとも言えないよな」

 そう言ってお互いの顔を見る俺達。


 25日のクリスマスパーティーに吉田がインフルエンザで参加できないのは、また別の話。

 一途な愛を永遠に。


 皆さんこんにちは、赤槻春来です。更新が遅れてすみません…またのんびり投稿再開します。


 さて、気を取り直して今回の12月編、いかがでしたか?

 失踪した早乙女先輩…一体何があったんでしょうね。(すっとぼけ)

 そして堀江妹…なんか気づいたら腹黒くなってるような…


 次回は1月編(2回目)!残りあと2章、はじめ達はこれからどんな未来に向かって行くのか…!首を長くして待っていただければ幸いです。

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