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足して2つの高校生活  作者: 赤槻春来
9月─2.2度目の文化祭
41/51

文化祭の出し物…

 文化祭1日目。

 昼が近くなった頃には俺達のクラスはそれなりに客も集まり、思った以上に賑わっていた。

にのまえ君!オムライス追加で2つずつ!」

「あ、こっちも1つ追加で」

 昼時のせいなのか次々と頼まれる注文を前に、俺は休む間もなくコンロの前でひたすらオムライスを作っていた。

 本来ならもう既に交代の時間なんだが…シフトの人が来ないせいで、俺はなんだかんだ朝からずっとフライパンを握りしめている。まぁ料理するのは嫌いじゃないし別にいいんだけど。

「あれ?はじめ、まだ作ってるの?」

「あ、霞。いやぁ…なんかシフトの人が誰も来なくてさ、客足減らないしずっとここにいるんだよ…」

「あー…そういうことね…」

 ちょうど接客のシフトが終わったのか覗きに来た霞は、そんな俺の言葉にどこか思い当たる節があるような表情でそう言うと、当然のようにそっと俺の隣りにある空いているコンロの前へと移動した。

「…私の約束すっぽかされそうだし、忙しそうだから手伝ってあげる」

「霞…」

「さ、手を止めないで再開しよ?今だけは、2人だけの、共同作業」

「…あぁ!」

 慣れた手付きで作業を再開した俺達。

 忙しいことに変わりはないが、並んで作業をするという事実はなんだか少しだけ、俺の肩を軽くした気がした。



ーーー



 あれから20分後。

 山場を超えた俺達は時間通りにやってきた次のシフトの人達(すっぽかした人じゃない)と交代すると、それぞれ制服に着替え直して人気のない中庭へとやってきていた。

「あー…疲れた…」

「お疲れ霞。助かったよ」

 そう言って芝生の上に寝転がる霞。

 俺は自販機でキンキンに冷えた水を2本購入すると、疲れたせいか火照っている霞の頬に、ピトッとそれを当ててみせた。

「ひぅ!?は、はじめ!?」

「悪い、そんな反応されるとは…」

「いや、ちょっとびっくりしただけだから…ありがと」

 渡されたペットボトルを開け、水を口に含んた霞。火照っているせいか、どうも色っぽくて俺はそっとその視線をそらして青く澄んだ空を見上げた。

「…」

「…」

 しばらくの沈黙。

 空を流れる雲はまるでつい先程までの俺達のようで、止まることなく次へ次へと移り変わっていた。

「…お腹すいた」

 しばらく俺達が並んで芝生の上に寝転がっていると、不意に霞がそう呟いた。

 まぁたしかに俺達がシフト始まってから今までずっと飯食ってなかったからな…

「…ちょっと遅いけど昼食、食いに行くか?」

「…!うん!」

 霞の元気の良い返事に俺達は立ち上がると、服についた芝を払って校舎へと歩き出した。



ーーー



「…本気でこれやるの?」

「うん。…本当は裏方でずっと料理しててくれたほうが嬉しいんだけど、渡部先生がこっちのほうが上手くいくって聞かなくて…」

「あのクソ教師め…」

 文化祭2日目。

 俺は先日堀江妹の言っていたを前に教室に入るのをためらっていた。

「お願い!昨日の売上凄かったからみんなこのお金で打ち上げ行くって聞かなくて…」

「はぁ…まぁそんなこと言い出すのはどうせ渡部なんだろうけどさ…」

「ダメ…かな…?」

「ぅ…」

 そう言って上目遣いをする堀江妹。

 最近こういう状況に何回も陥っているが、毎度のように断れないのは男のさがなのかもしれない。

「…わかったよ。着ればいいんだろ?着れば。でも、やっぱ似合わないから無しとかそういうのはやめてくれよ?」

 俺の言葉にコクコクと頷く堀江妹。

 俺は渋々堀江妹の手元から去年着たメイド服(例の衣装)を受け取ると、精一杯笑顔を作ってみせた。



「はじめ、結局このメイド服着てるじゃん」

「いや、これはな…色々理由があるんだよ…」

「…わかった。そういうことにしといてあげる」

「助かる」

 昨日と違い、裏方で料理をしていた霞は、お冷を乗せたお盆を持ったメイド服姿の俺を見てそう言うと、それ以上は言及せずに調理を再開した。

 霞のそんな大人な反応で正直助かったが…まぁ霞の場合はなんとなく俺がコレを着てる理由が大方わかってるんだろうけど。

にのまえ君!それ置いたらオーダーお願い!」

「はいはーい」

 名前を呼ばれた俺は考えることを一度放棄すると、重い足を動かして指定されたテーブルへと歩き出した。



ーーー



「五十嵐、やっほ」

「あ、由良」

 慌ただしく動き回ること1時間。シフト交代の為、俺がそろそろ席を離れようとしていると、まるで見計らったかのような完璧なタイミングで眼鏡をかけた由良がウチのクラスへと入店(?)してきた。

「いやぁ…大盛況だね」

「あぁ…昨日とは比にならないくらいに…それと、心做しか男子が多く入ってきてる気がするけど」

「五十嵐が接客してるからじゃない?」

「…なんでと言い返したいところだけど、今回ばかりは言い返せん…」

 俺な言葉に何かを察したのか苦笑を浮かべる由良。

 まぁ言い返せない理由としては渡部の提案で「客足が増えるから」という理由で今この服で接客してる訳だからな…実際増えるから尚たちが悪い。

 俺はお冷を由良の席に置くと、やってきた次のシフトの人(もちろん女子)と交代で教室を後にした。

 …さて、由良と合流するまでに昼食でも済ませてしまおうか。



 食堂で昼食を終え、俺は同じく昼食を食べ終えた由良と合流すると、ぶらぶらと色んな教室を回っていた。

 …ずっとメイド服を着てるせいなのか色んな勧誘とかひっきりなしに来ていたが。

 昨日は霞と一緒に動いていたが…どちらかといえば誰もいないところばかりだった気がする。

「あ、五十嵐…今、他の女のこと考えてたでしょ」

「ぇ…」 

「…女の子と一緒にいるときに他の女のこと考えるとか最低だよ」

「…すんません。でも、なんで分かって…」

「それくらい分かるよ。だって私、いつから五十嵐のこと知ってたと思うの?」

「…ははっ…たしかにな…」

 少しの沈黙。

 気付けは周囲の人は少なく、裏方で忙しく荷物を運んだりしている人がチラホラと見えるだけになっていた。

「…やっぱり霞さんのこと?」

 不意に立ち止まった由良はそう言うと、どこか寂しそうな表情で振り向いた。

 反射している眼鏡のせいでその目元は伺えないが、その声はどこか震えて聞こえていた。

「悪い…」

「そう…」

 咄嗟に出た一言。

 由良はまるでその言葉が漏れるのを知ってたかのようにそう言うと、俺に背を向けて校舎の間から覗く空を見上げた。

「なんで…」

「ぇ…?」

「…なんで私じゃなかったの?私はずっと、はじめのこと思ってたのに…」

 紛れも無い、由良の本音。

 その言葉は、やはり俺の心の何処かにも引っ掛かっていて、俺はそれ以上言葉をつなぐことができなかった。



ーーー



 文化祭は無事に終わり、由良と別れた俺は着替えるために何処か無気力なまま部室へ入ると、何をする訳でもなくただただぼーっとしていた。

「あれ?いっちゃんまだいたの?」

「春…」

 オレンジ色の陽が差し込む中、不意に開かれた扉から現れた春は、俺の姿を見るなり驚いた表情で駆け寄ってきた。

「悪い、お前も着替えだったな…すぐいなくなるk…」

「待って」

 立ち上がろうとした瞬間、俺の袖を掴む春。

 俺はゆっくりと振り返ると、俯いている春の方へとその視線を向けた。

「…いっちゃん、無理してる」

「ぇ…」

「あたしだって、それくらいは分かるよ。…だってこの1年半、ずっと見てきてたんだから」

 そう言って何処か寂しそうに笑う春は、さっきまで隣りにいた由良と重なって見えていて…

「い、いっちゃん!?」

「…悪い…」

 俺は春を抱き締めると、静かに涙を流した。

「…いいんだよ、泣いて。いっちゃんがあたしの側にいてくれるように、あたしもずっといっちゃんの側にいてあげるから。…だから、今はあたしの中で全部吐き出して」

 そう言って優しく俺の背中に手を回す春。

 その言葉を聞いた瞬間、俺は春にしがみつくようにして膝から崩れ落ちると、しばらくの間春の腕の中でその心を吐き出した。



 

 一途な愛を永遠に。


 皆さんこんにちは。赤槻春来です。


 と、言うわけで今回の9月編(2回目)、いかがでしょうか?

 夏休み中しばらく書けてなかったから途中から文がおかしくなってるかも…


 今回は一応、文化祭というテーマなんだけど…はじめちゃん周りの人間関係がどんどん変わっていって…


 次回は10月編。変わりゆく人間関係の中、修学旅行を迎えたはじめ達は…


 感想や意見、アドバイスなどありましたら感想欄やツイッターのほうに書き込んでくれると幸いです。


 またのんびりと更新していく予定なので気長に待っていただければ幸いです。


 それでは皆さん、またどこかであいましょう。


 バイバイ!

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