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足して2つの高校生活  作者: 赤槻春来
7月─2.2度目の夏休み
37/51

親友



 7月下旬。 

 先日のピクニックが終わった後、どこから嗅ぎつけた吉田から「何故我も誘ってくれなかったのだっ!」と連絡の入った俺は、その埋め合わせも兼ねて(もちろん本命は別)吉田とファストフード店へとやってきていた。

 俺が少し背伸びして頼んだコーヒー(もちろんブラック)を啜っていると、先程までパスタを口にしていた吉田が不意にその手を止めた。

「…納得がいかぬ!何故我だけ…」

「いや、一応誘おうと思って響ちゃんに連絡はしたんだよ。そしたら『その日は私と兄さんは用事があるので行けません』って。ほら」

「何嘘ついてんだ響ィィッ!」

 スマホに送信されたメッセージを見せた瞬間、吉田は思わずそんな雄叫びのような声を上げた。

 あ、やべ…みんなこっち見てるよ…

「おい吉田、落ち着け。みんな見てるから、な?」

「あ…」

 俺は慌てて吉田を鎮めると、吉田は周囲の視線に気付いたのか若干顔を赤らめながら席へとついた。

 こういう時、男が赤面するのは気持ち悪いと思うハズなんだが…吉田はそんなことなく、妙に絵になっていた。これが『ただし、イケメンに限る』ってやつなんだろうか。

 俺は周囲の視線が止むのを確認すると、いよいよ吉田と会った本命を話そうと口を開いた。

「なぁ吉田」

「ん?どうしたにのまえよ」

「お前は…もし俺がその、呪われた一族の末裔だとか言ったら信じてくれるか?」

「何、厨二病?」

「お前だけには言われたくねぇ…」

 俺の言葉に即答する吉田に、俺は思わずそう言い放つと、それと共にそっと自身の胸を撫で下ろした。

 なんというか、吉田ならそう言ってくれるってどこかで思ってたんだろう。

「でも」

「ん?」

「我は信じるぞ。はじめがそんなこと聞くってことは、きっと本当のことなんだろうし」

「吉田…」

「それに、我は今ちょっと嬉しいんだ。はじめはあんまりそんな顔して我に話しかけてくれないからな」

「そんな顔ってお前…」

 一体俺は今、どんな顔をしているんだろうか?

 今の吉田の言葉にはきっと、それ以外のどんな意味も孕んでいるわけでもなく、ただただ純粋に、俺の言葉──いや、『(一一)』に対して思っていることなんだろう。

 なら、今の俺はきっと──

にのまえよ。我は貴様を信頼しているからな!早乙女先輩程ではないが、貴様も我のことをもっと信頼してくれてもいいんだぞ!」

「ふっ…ははっ…」

「な、何がおかしいのだ!」

「いや、なんでもない。なんか安心した。ありがと、快兎」

「!?おい!今なんと言った!?もう一回!もう一回呼んでくれ!」

「んー?なんのことだ吉田?」

「とぼけるでない!ほら!」

 まるで霞や春と同じように名前呼びをせがむ吉田。

 …確かに、今まで俺は早乙女先輩くらいにしかこんな話はしなかったし、ましてや吉田に話そうなんて考えたこともなかった。

 どうやら気付かないうちに俺にも変化があったようだ。

 …まぁきっと、早乙女先輩がいないってのもあるんだろうけど。

 俺はしつこい吉田を適当にあしらうと、もう冷めたコーヒーを一気に口の中に流し込んだ。



ーーー



 店を出て、俺は歩きながらポツポツと4月に起きた事を吉田に話すと、ふと帰路にある公園を前にその足を止めた。

「…?にのまえよ。急にどうしたのだ?」

「あ、いや…なんでだろうな。俺、この公園で遊んだこともないんだけど…なんか、止まらなきゃいけない気がしたんだ」

「そうか」

「あぁ…」

 夏休みなのもあり、ワイワイと遊ぶ子供達を横目に、俺達はそっと頬を緩めると隣接しているベンチへと腰掛けた。


 俺はしばらくの間、何も考えることなく子供達を見ながらぼーっとしていると、不意に隣に座っていた吉田が立ち上がった。

「はじめ、なんか飲むか?」

「ん…なんでもいい」

「了解した」

 吉田はそう言うと、財布を片手に道路の向こう側にある自販機へと向かっていった。

 …きっと俺を察してくれたんだろう。

 ったく、これだからイケメンは…ま、本人は自覚してないんだろうけど。割と勿体ない。うん。

 俺はそんな吉田をしばらく眺めていると、不意に自販機横に止まっていた軽自動車が吉田めがけて急発進した。

「…ッ!吉田ッ!」

 咄嗟に立ち上がった俺。

 軽自動車は吉田の財布から飛び散ったであろう大量の小銭を撒き散らしながら、吉田の立っていた場所を通り過ぎると、ものすごい速さで大通りへと出ていった。


 軽自動車が通り過ぎたと同時、俺が周囲を確認して自販機裏の駐車場へと駆けつけると、そこには何かに引っ張られたように倒れ込む吉田と、撒き散らされた小銭を拾い集めている黒い手袋に全身を黒いローブで覆った赤みがかった茶髪の女性が姿があった。

 この女性、どっかで見たことかあるような…

「吉田、大丈夫か?」

「あぁ…我はなんとか…」

 地面にへたり込む吉田は、俺の言葉にそう返すと、差し出した俺の手を取って立ち上がった。

「さっきはありがとうございました」

 女性に向かって礼を言う吉田。

 女性はそんな吉田に反応するでもなくスッと立ち上がると、頭を下げる吉田のその手に拾い集めた小銭を手渡した。

 …この女性()、なんでお金かき集めてるのかと思ったら普通にいい人じゃないか。

「えっと…これは…」

「多分、そこに散らかったお前の金だと思うぞ?」

 混乱する吉田に対し、思わずそう言う俺。

 女性は俺の言葉に頷くと、不意にその赤い瞳をこちらへと向けた。

「…ッ!?」

 女性と目が合った瞬間、俺の身体はまるで金縛りにあったかのように固まった。

「─────、────」

 女性は聞いたことのない言語で何かを喋ると、ほのかに微笑んでから俺の横を通るようにして俺の視界から出ていった。

『また会いましょう、遠くない未来で』

 女性の放った言葉の意味はわからない。だが、俺には何故か、こう言っている気がしてならなかった。

にのまえよ。何故そこに突っ立っておるのだ?」

「あ、いや…」

 吉田の声に現実に引き戻された俺は慌てて振り返るも、そこには既に女性の姿は無くなっていた。

「それにしてもさっきの女の人、何処となくにのまえに似ていたような気もするが…」

「そう、かもな…」

 …五十嵐結衣(ユイ)

 俺は吉田のそんな何気ない言葉に、ふと自分の中で何かが繋がったような気がした。

 一途な愛を永遠に。


 みなさんこんにちは。赤槻あかつき春来はるきです。


 7月編、いかがでしょうか?

 この物語自体もいよいよ終盤…はじめはこの先、一体どんな未来を掴むんだろうか?


 はじめの前に現れたユイ姉、一体なんであの場にいたんでしょうね。


 さてさて次回は8月編!一応、夏休みの後編的な内容にするつもりです。(あんまり明るい内容じゃないかもしれないけど)お楽しみに!


 感想や意見、アドバイスなどありましたら感想欄やツイッターのほうに書き込んでくれると幸いです。

 またのんびりと更新していく予定なので気長に待っていただければ幸いです。

 それでは皆さん、またどこかであいましょう。

 バイバイ!

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