初詣(仮)
1月4日。三箇日を過ぎ、未だに人足の減らない近所の神社にやってきた俺と由良(もちろん眼鏡はかけている)は、鳥居の側で待っている4人を見つけると駆け足気味にそちらへ向かった。
「あ、はじめ!あけましておめd…は?」
「えっ…なんでいっちゃんその女と一緒にいるの…?」
俺達を捉えた霞と春は俺にピッタリとくっついている由良を見ると、楽しそうだったその表情を一瞬にして失った。
「一君。あけましておめでとうございます」
「一さん!あけましておめでとうございます!」
「あけましておめでとうございます、雪先輩、響ちゃん」
そんな霞と春にも目をくれず、雪先輩と響ちゃんはいつもより楽しそうにそう言った。雪先輩は本心っぽいんだけど…響ちゃんはその表情を見るにどこか空元気って感じがする。
「あー!先輩、抜け駆け!」
「えっ…えっ?わ、私はただ一君に挨拶しただけなんですけど…?」
「あたしが挨拶する前に言うなんて!やっぱり抜け駆けだよ!」
「理不尽じゃないですか!?」
そんな春の言葉に雪先輩が柄にもなくそう叫んた。そういえば雪先輩が叫ぶのって中二病モードじゃないのじゃ初めてだな…
てか吉田がいないのが地味に気になるんだが?俺、昨日ちゃんと連絡したはずなんだけど…
「響ちゃん。吉田は?アイツ来てないの?」
「えっと…兄さん、インフルエンザにかかってしまって。『我は馬鹿だから風邪などひかん!』とか言って痩せ我慢してたので今すごく辛そうで…」
馬鹿は風邪ひかないって…それじゃアイツ自分で自分のこと馬鹿って言ってるようなもんだけどな…てかそれってたしか馬鹿は風邪をひかないわけじゃなくて実際は風邪をひいてもそれに気付かないってことだって早乙女先輩も言ってたしな。
俺は落ち込み気味の響ちゃんの頭をポンポンと叩くと、「アイツなら大丈夫だ」ということしかできなかった。(いつもなら抱きしめて慰めようとすらんだろうけど何故かそんな気は起きなかった)
「はじめ!おみくじ引こう!」
「あ、おい霞!走るんじゃねぇ!」
お参りを済ませた俺はそう言って走り出そうとする霞の手を咄嗟に掴むと、逸れないようにこちらへ引き寄せた。
「霞、落ち着け。人が多いから勝手に行動すんな」
「ぅ…ごめん」
「あー!若林さんまた羨ましいことしてる!」
俺達が抱き合うような体制でいると、不意に背後からそんな声が聞こえてきた。まぁ声の正体は春なんだけど。
春は俺達が振り返ると、その間を引き剥がすように俺達の間に割り込んできた。
「いっちゃん!たまにはあたしも抱きしめてよ!いつもいつも若林さんばっかり!」
「いや、俺だって意図した訳j…」
「私がそれだけ特別ってことよ井上さん?」
「いやちg…」
「そんなことないもん!いっちゃんはいつでもあたしの支えになってくれるって言ってたもん!あたしが特別だよ!」
「いや、お前ら少しは俺の話をだな…」
「どっちが特別なのはじめ!」
「どっちが特別なのいっちゃん!」
「息ピッタリだな!?」
てかマジで俺の話を聞いてくれ2人共…
俺は思わずそうツッコむと、そっと溜息をついた。まぁ周りの目が集まってきたしどっか移動するか。
俺はそれを伝えようと由良達のほうを向くと、3人はその意図を理解してくれたのか霞と春を拘束すると人の少ない場所まで連行していった。
「…お前ら、少しは頭冷えたか?」
俺は甘酒を購入すると、ベンチに座っている2人に渡しながらそう言った。霞も春もどこか不服そうではあったが、無言でそれを受け取ると静かに頷いた。
「ごめんいっちゃん。2人が抱き合ってるの見たらなんかちょっとカッとなっちゃった…」
ポツリと春がそう言った。俺はそんな春の表情を見ることしか出来ずに突っ立ってると、不意に俺の横に立っていた雪先輩がそっと口を開いた。
「井上さん。そんな悲しい顔しないでください。新年早々そんな顔では楽しいことなんて起きませんよ。ほら、笑って?」
「先輩…」
春はそっと顔を上げると、ニッと笑った見せた。
…こんな言い方は失礼だが、珍しく雪先輩が先輩らしいことをしてる。
霞はそんな2人のやりとりを見て何を感じたのかしばらくの間手に持ったまだ湯気の出ている甘酒を見つめると、そっとそれを口に含んだ。
「霞」
「…井上さん、さっきはごめん」
俺が声をかけると、霞はポツリとそう言った。当の春はすでに何か吹っ切れたように笑いながら「大丈夫、気にしないで」と返したが。
俺達はそんな2人のやりとりを見てお互いの顔を見合わせると、どちらともなく笑い出した。
「じゃ、2人も仲直り?をしたみたいだし、おみくじでも引くか?」
『!!』
おぉ、みんなやる気か…
てかみんな目を輝かせすぎでしょ。ねぇ?別に今すぐやらなきゃ逃げていくってわけでもないのに…
俺達がおみくじコーナー(?)へと戻ってくると、既にピークを過ぎていたのか先程まで俺達がいた時よりは人が減っていた。まぁそれでも十分混んでるんだけど。
俺達は霞、春、雪先輩、響ちゃん、由良、俺の順番でそれぞれおみくじを引くと、それを同時に開けた。
…吉か。まぁ可もなく不可もなしと言ったところか。なんか俺の一生にとってすごい一年になる的なことが書いてあるな。
霞達女性陣は恋愛おみくじとかいうのを引いていた。ちょっと複雑な気もするが、まぁコイツらにも好きな人くらいいるんだろう。5人がはしゃいでいる姿はとても和む。
昼食を食べ、俺達は解散すると各々の自宅へと向かっていった。(霞と春は最後まで反対していたが、吉田がインフルエンザで響ちゃんもその看護があるだろうからと説得したら大人しくなった)
由良は今日も俺の家に泊まるらしく、何故か霞と春に勝ち誇ったような表情をすると悔しそうな2人を横目に俺と共に帰路についた。相変わらず由良は2人と仲が良くないらしい。
「由良」
「ん?どうしたの五十嵐?」
俺は何を思ったのか家の近くにある公園の前で足を止めると、由良の名前を呼んでいた。
由良は楽しそうに歌っていた鼻歌を止め、どこか驚いた様子でこちらを向いた。
「いや…その…」
「…?五十嵐らしくないなぁ…言いたいことがあるならはっきり言って!」
「…由良ってさ、もしかして好きな人とかいんの?いや、ほら、さっき恋愛おみくじとかいうのでなんか喜んでたし…」
今更だが俺はここまで言っておいて「言わなければよかった」と、これほど思ったことはない。
由良はしばらく俺の言葉の意図を理解できていないのか首を傾げていたが、しばらく間を開けて小さく溜息をついた。
「五十嵐、なんでそういうとこは鋭いのに肝心なところは鈍感なのさ」
「えっ…その、なんかごめん…」
「いや、別に謝ってほしいわけじゃないよ?ただ、さっきの五十嵐の質問は自分で考えてほしいかな。私がなんではじめのこと五十嵐って呼んでるかってのもね」
由良は悪戯にそう笑うと、俺の返答する余地も与えずに家へ向かって走り出した。
「俺が考える、ね…」
そもそも由良や霞達に好きな人がいたとして、別に俺が付き合っているわけじゃないんだからどうでもいいことではあるはずなんだが。
…早乙女先輩、俺はこの何か引っかかるものの正体を知るのにもう少し時間がかかりそうです。
ーーー
「あけおめだ一!」
「おう、てかインフルエンザ治ったのか吉田」
「無論、この通りだ!」
1月最初の登校日。俺がバス停にいると、暖かそうなコートを見にまとった吉田は俺を見るなりこちらに向かって走ってきた。
「これも響ちゃんの看病のおかげか?」
「それは…否定できん」
「後で抱きしめるなりなんなりしてやれ。響ちゃんなら喜んでくれると思うぞ」
「む…参考にさせてもらおう」
俺達はそれだけ言葉をかわすと、やってきたバスへと乗り込んだ。
「…そういえば一よ」
「ん?どした?」
「その、いかにも手作りな赤い手袋とマフラーはどうしたのだ?去年はそんなもの持っていなかっただろう?」
「あー…これはクリスマスのとき霞と春に貰ったやつだよ。去年のはほら、もうボロボロだったから」
吉田はしばらく俺服装をじっと見ると、「ふぅん…」と言って再び前に向き直った。
一体何がしたかったんだ吉田は…
一途な愛を永遠に。(挨拶)
みなさんこんばんは赤槻春来です。
これを書いているのがクリスマスということで、みなさんはどのような日を過ごしましたでしょうか?ちなみに私は弟を含め家族でささやかなパーティーをしました。
さて、そんな私的な話はさておき…1月編、いかがでしたでしょうか?
最近キャラが増え始めたから一人一人に活躍の場が欲しいなと思ったらこんな内容になってしまいました。
今回は一応、前半後半は無く章を通して『幼馴染編』と言った感じです。
はじめよりもはじめのことを知ってる由良…幼馴染モノはまた別機会に書くとして、私もこんな幼馴染が欲しかった!
やっぱり誕生日はおめでとうって言われるだけでも嬉しいよね。
さてさて次回は2月編!まぁ2月といえばあのイベントしかないですよね?果たして吉田快兎はいくつ貰えるのか…!?まさかのあの人登場ではじめは自分の真実に触れ始める…!
感想や意見、アドバイスなどありましたら感想欄やツイッターのほうに書き込んでくれると幸いです。
またのんびりと更新していく予定なので気長に待っていただければ幸いです。
それでは皆さん、またどこかであいましょう。
良いお年を。




