3日目!
俺が目を開けると、あたりはまだ暗かった。
暑かったせいか俺は目を覚ましてしまったようだ。
「今…何時だ…?」
俺が時間を確認しようと身体を起こそうとすると、金縛にあっているのかピクリとも動かなかった。
「…ん?…んん?」
そんなことを考え、意識を覚醒させていると、俺の両腕に、何やら柔らかい感触が…
「うん。コレは夢だ。早く起きなきゃ」
全裸の若林と井上が俺にしがみついているなんて現実な訳ない。この状況的にどう考えても事後だし…
妙にリアルに感触が伝わってくるが、コレはきっと俺の意識が混乱しているからだろう。うん。
俺は高速でそう結論付けると意識を手放した。
「ん…」
俺が目を開けると、眩しい朝日が俺の目を覚まそうと痛くなるくらいに飛び込んできた。
「おはよう。はじめ」
若林の声は再び瞼を閉じようとしていた俺の意識を現実へと引き戻した。
「おはよう若林」
ふと、夢の内容が頭をよぎり、俺は辺りを見回したが、俺の着ていた浴衣に少し血が付いているくらいでなにもなかった。
「やっぱ夢か…」
「どうしたの?いっちゃん」
「あ、いや…なんでもない…それよりおはよう井上」
「おはよう!いっちゃん!」
俺の横に座っていた井上はやけに嬉しそうな様子でそう言うと、少し前屈み気味に立ち上がった。
井上のやつ…お腹壊したのか…?
「井上。お前もしかしてお腹出したまま寝てたのか?」
「あ、あはは…それもそうかもね…っていっちゃん!?それはさすがにデリカシーがなさすぎるよ!」
「いや…でも痛そうだし…」
「だ、大丈夫だから!気にしないで!」
「お、おう…」
まさかあんなに叫ばれるとは…いや確かにデリカシーに欠けてたかもしれないけどね?
見た感じ若林も井上も朝風呂を浴びたっぽいし俺も浴びてこようかな…
「若林。俺ちょっと朝風呂行ってくるわ」
「ん、了解。布団とか私達がやっとくからゆっくり入ってきていいよ」
「おう。助かる」
俺は何故か重い身体を起こすと、タオルを持って浴場へと向かった。
「よし、3日間お疲れさん!忘れ物はないかしっかり確認したか?」
朝食を食べ終え、チェックアウトを済ませた俺達は、車の前に集まると渡部の台詞に頷いた。
この3日間…まぁ実質2日間もやってないんだけど。その間に決まったことといえば俺達陸上部(仮)が文化祭でミニライブをするということ、後は吉田と八代さんが作った2曲を演奏するときの配役って感じか…
「それじゃあ解散…と、いきたいところなんだけど、文化祭で歌う曲が完成したみたいだからこれからそのお披露目ということで」
渡部がそう言うと、吉田と八代さんが鞄から数枚の紙を取り出した。
「フッ…この2日を費やした我らの大作…ッ!とくと見るがいい…ッ!」
俺は吉田の持っている紙を受け取ると、それに視線を落とした。
「えっと…『俺は彼女の財布じゃねぇ!』作詞、吉田快兎、作曲、八代伊吹って…曲名ふざけすぎだろ」
「何を言う一よ。全くおかしな名前では無いぞ!」
そういえば早乙女先輩のノートにも似たような台詞書いてあったなぁ…確か彼女に財布としか見られてなかったって話のやつ。
「なぁ吉田…?なんでこの歌詞にしたんだ?あと、俺の歌うところに『俺はお前の財布じゃねぇ!』ってあるのはわざと?」
俺がふと疑問に思ったことを口にすると、吉田は腕を組んでどこか偉そうに口を開いた。
「フッ…愚問だな一…我のリア充に対する妬みを歌詞にぶつけたまでよ」
「あ、そう…なんかごめん」
「やめて!同情しないで!?我が惨めに感じちゃうから!」
吉田が慌て訂正していると、渡部が両手をパンパンと鳴らした。
「まぁこの曲については各々練習してくれ。夏休み中は学校も開いてるから学校でやってもいいし、別の場所で集まってやっててもいいぞ。もちろんテスト勉強とかもしっかりしないといけないけど」
俺達は頷くと、紙を各々の鞄にしまった。
「じゃ、合宿としてはこれで終了だ。これから帰宅するって感じだけど…お前らどこか行きたい場所あるか?あんまり遠くには行けないけど」
渡部がそう言うと、井上が目を輝かせながら口を開いた。
「先生!あたし、白糸の滝に行きたい!」
「白糸の滝か…まぁここから遠くないし…それでいいか?」
俺達は顔を見合わせると、頷いた。
「じゃあみんな車に乗ってくれ。昼飯食べる場所探しながら白糸の滝に向かうぞ」
渡部に促され俺達が車に乗り込むと、渡部は車を走らせた。
午後9時頃、白糸の滝の他にいくつか観光スポットを回った俺達は最寄りの駅に着くと、各々の自宅へと向かっていた。
「…で、なんでお前もこっち向かってんの?」
「えっ?」
俺はさも当然のように隣に並んで歩いている若林に声をかけると、若林は立ち止まって「え、ダメなの?」みたいな反応をされた…
「『えっ』じゃねぇよ。そんな可愛い反応されても反応に困るんだが…ってか若林の家は反対方向だろ?なんで俺についてきてるわけ?」
まぁ自分の家が見えるようになるまでそんなことに気づかなかった俺が言うのもアレなんたけど…
…ってかいつも一緒に帰ってるせいで隣にいることに全く疑問を思わなかったのか…慣れって怖い。
「うちの親来週までいないからはじめの家に泊まるんだって義母さんに伝えたんだけど…はじめには言ってなかったっけ?」
「初耳なんだが…」
よく考えたら夏休み入ってから若林がうちにいるのが日常だったからな…あんまり変わんないか。
俺はそんな楽しそうな表情の若林を横目に、再び足を動かした。
一途な愛を永遠に。(挨拶)
みなさんこんにちは赤槻春来です。
今回は合宿!ということでいかがでしたでしょうか?
個人的に水着回がほしいと思って入れたけど私の文作力が足りないためにあっさりとした内容になってます。お気に召さなかったら申し訳ない。(謝罪)
作中で登場した曲は私がこんな感じの曲があったらいいなぁと思ったもので実際にはない曲だと思います。
9月編はいよいよ文化祭!一ちゃん達はこの青春の1ページをどう彩るのか!
あと、一ちゃんはもっと自分の貞操管理をしっかりしたほうがいい。うん。
意見やアドバイスなどありましたら感想欄やツイッターのほうに書き込んでくれると幸いです。
またのんびりと更新していく予定なので気長に待っていただければ幸いです。
それでは皆さん、またどこかであいましょう。
Sjáumst!