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足して2つの高校生活  作者: 赤槻春来
8月.夏休みの合宿
11/51

合宿1日目!


 衝撃の事実発覚!渡部、恋人がいた!

 渡部の発言に俺達4人がしばらく固まっていると、女性…八代伊吹さんはぺこりとお辞儀をした。

「はじめまして。陸上部(カッコカリ)のみなさん。あっちゃんから紹介されたけど…改めて。ボクは八代伊吹。よろしくね」

『よろしくお願いします』

 まさかのボクっ子…俺達が反射的に返事をすると、八代さんはニコッと微笑み返してくれた。

「と、いうわけで。俺と伊吹が引率として参加するから、そこんとこよろしく!」

 渡部は無駄に高いテンションでそう言うと、宿の入り口へと走っていった。

「ごめんね、あっちゃんがいつも迷惑かけて…」

 渡部が去ると、八代さんは俺達にそう話しかけてきた。

「いえ、迷惑というかなんというか…毎回はじめだけが理不尽な感じがしますけど…」

 オイ若林。たしかにそう思ったこともあるけども!それじゃ俺が悪いみたいに聞こえるからやめて!

 そんな俺の心の叫びが若林達に届くハズもなく、八代さんは少し申し訳無さそうな瞳でこちらを向いてきた。

「あ、いや…たしかに俺の人権はどこにいった!って叫びたくなる時はありますけど…まぁ楽しいんでいいです」

「ふふ、ありがと。まぁボクのことじゃないんだけどね」

 俺の言葉に八代さんは微笑むと、一枚の紙を俺に渡してきた。

「…?八代さん、この紙は一体…」

「それはあっちゃんが考えたこの合宿の予定表だよ」

「見せてはじめ!」

「見せていっちゃん!」

 八代さんがそういい終えると同時に、若林と井上がその紙を覗き込むように身体を密着させてきた。

「あのぉ〜お二人さん?背中に柔らかいものが当たってるんですが…」

『当ててんのよ』

「って即答かよ!?てか息ピッタリだなお前ら!」

 俺が若林と井上にツッコミを入れると、いつのまにか空気となっていた吉田が口を開いた。

「それで…その紙にはなんて書いてあるのだ?…っは!まさか秘密の暗g…」

「んなわけねぇだろ。さっき予定表って言ってただろうが」

 安定の吉田に若干安堵を覚えながらも、俺は再び紙に目を落とした。

 えっと…大まかな予定は…

「文化祭に向けた出し物…?あとは川遊びって…」

「まぁ川遊びは最悪なくても良いって感じなのかな?夏期課題が終わった人って書いてあるし」

 井上と若林は交互にそう言うと、俺のほうを見てきた。

「はじめは私と遊ぶよね!」

「いっちゃんはあたしと遊ぶよね!」

「息ピッタリだなお前ら!」

 息のあった2人に対し、つい叫んでしまった…



 合宿(カッコカリ)の1日目の予定自体は、八代さんに顔を合わせる程度のものだった。

 俺達は旅館に荷物を預けると、車に乗って少し離れた銭湯へやってきていた。

「あぁ…あったまるぅ〜」

「外は暑いけど風呂は別だもんな」

 俺は普段は見せないような緩んだ表情をしている吉田と湯船に浸かっていると、身体を洗い終えた渡部が「よっこらしょ」なんておっさんくさいこと言いながら入ってきた。

 それよりなんだ?俺が脱衣所に入るときやけに周りの視線が痛かった気がするが…気のせいか?たしかに男がするような髪型じゃないけどさ…

 俺がそんなことを考えていると、吉田がおもむろに口を開いた。

「いやぁー…にしても以外っすね…先生に彼女がいたなんて」

「は?俺だって彼女くらいいるし。吉田お前喧嘩売ってんのか?」

「あ、いや…そういうことじゃないっす」

 言えない…俺も吉田と同じことを思ったなんて…てかそういうことってどういうことだよ…つーか素に戻ってるぞ吉田…

 俺が心の中でそんなツッコミをしていると、渡部は吉田の頭を掴んでグリグリしていた。

「この口か?俺の悪口言う口は?このイケメンが!」

「ちょ、やめ…痛い痛い!はじめ、助けて!」

「…静かにしろよ。ここ銭湯だぞ。他の客もいるからな」

 まぁ他の客っていってもお爺さんばっかなんだけど。今時の若者は銭湯なんて基本行かないもんなぁ…

「裏切ったなはじめ!この怨み…あとで晴らしてくれy…痛い痛い!先生、ギブ!ギブ!」

 悲痛な声を上げる吉田に、周りのお爺さんたちの目が集まりはじめた。

 仕方ねぇ…助かるか。

「…先生。いい加減やめてあげてください。みんなこっち見てますから」

「それもそうか…」

 俺が声をかけると、渡部は吉田の頭から手を離した。

 …言われてすぐやめるなら最初から声掛けとけばよかったわ。

「で、文化祭の出し物ってなんなんですか?あと、この時間に銭湯に来た意味は…?」

「いっぺんに複数質問すんなにのまえ。今から説明するから」

 渡部はそう言うと、浴槽のふちに腰掛けた。

「まず、文化祭の出し物についてだが…陸上部(カッコカリ)のメンバーでミニライブをやってもらおうと思う」

『ミニライブゥ?』

 渡部の台詞に俺と吉田の声が重なった。

「いや、ミニライブってなんすか先生…てか俺ら軽音部じゃないし、陸上部だし。(カッコカリ)だけど」

「まぁにのまえの言い分もわかる。だが、それじゃ刺激が足りない!ってことで…別の学校で音楽の教師をしてる伊吹にダメ元で相談したら『ボクが作った曲が披露できるってこと!?やるやる!』って」

「八代さん、子供っぽいんすね」

 渡部はおそらく八代さんの声真似だろうか裏側でそう話すと、吉田の冷静な返しに俺は頷いた。

 まぁ渡部も子供っぽいとこあるしな…やっぱその彼女なだけあって似てるのか…

 なんか裏がありそうだし…ちょっとカマかけてみるか。

「で、先生。本当の目的は?」

「そりゃもちろんにのまえにメイド服を着てもらう為の口実に決まってるだろ!…っは!つい本音が…」

『うわぁ…』

 即答だった…流石に俺も吉田も渡部に対して軽蔑するような視線を送りながらゆっくりと距離を開けた。

 …心なしか周りの客も渡部にそんな視線を送ってる気がするし。

「先生…流石にそれは…」

「我も反応に困るぞ…」

「じょ、冗談だ!冗談だから!」

 必死な渡部を横目に俺達は溜息をつくと、本題に戻そうと再び口を開いた。

「まぁ冗談ということにしときますけど…結局、ミニライブって何歌うんです?さっきの発言的にオリジナルって感じがしますけど…」

「あ、えっと…確かににのまえの言う通りオリジナル曲なんだが…作詞は吉田にしてもらおうと思ってな。なんか参考になりそうな資料を持ってきてもらったハズなんだが…」

 渡部が吉田のほうに視線を向けると、吉田はしばらく首を傾げていたが、何か繋がったのか口を開いた。

「ああ!それで…」

「吉田。お前、何持ってきたんだ?」

 俺がそう言うと、吉田はいつになくかっこいい表情に切り替えた。

「早乙女先輩のポエムノート。キリッ」

「自分で『キリッ』とか言うな。てか早乙女先輩のポエムノートて…あの痛いノート?」

「あぁ…我はアレに従って生きてきたからな!」

 早乙女先輩のポエムノート…要は早乙女先輩の黒歴史の塊だ。色んな体験談とか無駄にかっこいいイラストとか書いてあった気がするんだが…

「えと、その吉田が持ってきたノートが何かはわからんけど、まぁ持ってきたならいいや。作詞してくれるか?」

 理解の追いついてない渡部の台詞に、吉田は視線を戻すと口を開いた。

「我に任せろ」

「無駄にかっこいい声出してんじゃねぇよ。あれか?文字にすると最後に『イケヴォ』って入るやつか」

「どう?我、かっこよかった?」

「今ので台無しだよ」

 吉田は外見だけはイケメンだからなぁ…黙ってれば良いとつくづく思う。

 ショックを受けたのか放心状態の吉田を横に、俺は渡部のほうに向き直った。

「…で、先生。なんで銭湯?なんか意味があるですか?」

「あ、それはなぁ…ほら、お前らと親睦を深めようと思って…」

「いや、わざわざ銭湯にしなくても…」

「いやぁークラスで男子から絶大な支持と信頼を持ってる仲村に聞いてみたんだ。『何か親睦を深める方法はないか?』って。そしたら『そりゃもちろん裸の突き合いですよ』って笑顔で言うからさ」

「それで銭湯…」

 仲村が言った台詞に少し…というかものすごく引っかかるところがあるが…まぁこの際関係無いだろう。確かに仲村はクラスの…学年の男子(俺と吉田以外)から人気だしなぁ…何故かみんな恋する乙女って顔してて気持ち悪いけど。いいやつってことに変わりはないが…アイツとはなんかやりづらいんだよなぁ…

 俺はそんなくだらない考えを振り払うように湯船を出ると、サウナへと向かった。



 結局、サウナに時間を費やした結果約束した時間より遅くなってしまった。

「はじめ遅い!」

「あたし達ずっと待ってたんだからかね!」

「ちょ、いきなり抱きつくな!まだ髪も結んでないから!」

 俺が男湯の暖簾から出てくと、それに気付いた若林と井上が抱きついてきた。

 2人とも風呂のせいかほんのり赤くなった肌がまたエロい…

「じゃ、旅館に戻ろう。今回の目的も説明したし…ボクも参加させてもらうからね」

 八代さんに続くように俺達は銭湯を出ると、再び車に乗り込んだ。



 旅館にチェックインした俺達は、預けていた荷物を受け取ると泊まる部屋へと案内された。

「じゃあ部屋わけをするぞ」

 渡部がそう言うと、若林と井上の動きがピタリと止まった。

「103号室と104号室なんだが…俺と伊吹、吉田は103号室、にのまえ、井上、若林は104号室な」

『よし…!』

 渡部が言い終わると、若林と井上は小さくガッツポーズをとっていたが、その2人の声は重なったためによく聞こえてきた。

「先生。質問があるぞ」

「ん?なんだ吉田」

「何故我とはじめと先生、井上と若林様と八代さんの部屋わけではないのだ?男同士、女同士の部屋割りにしない理由が聞きたい」

 …たしかにそうだ…吉田の言う通りだ。なんで俺は女子2人と同じ部屋なんだ?まぁ間違いなんて起きない自信はあるし問題ないと思うけど。

「いや、この2人一にのまえと同じ部屋じゃないと来てくれないって言うからさ…それに俺も伊吹とゆっくり過ごしたかったし」

「ぐぬぬ…リア充め!我を馬鹿にしおって!」

 吉田は103号室の鍵を渡部からひったくるように取ると、そのまま部屋の中へと入っていった。

 吉田…わかるぞその気持ち。口には出さないが俺も渡部がリア充だったことにイラッときてるしな。

「じゃあ3人は荷物を置いたらボクらの部屋に来て。早速文化祭の話し合いをするから」

「了解です」

「分かりました」

 俺は2人に続けて会釈をすると渡部から渡された鍵を使って部屋へと入った。



 夕食を食べ終え、再び風呂に入った俺達は、文化祭の話し合いをするために103号室へと集まっていた。

「…と、言うわけで明日はよろしく!川遊びもできるからな!早く決めてみんなで遊ぼうぜ!」

 渡部は酒が回っているのか無駄に上機嫌な様子でそう言うと、そのまま寝てしまった。

「ごめんね…あっちゃんお酒弱いから…」

「あ、いえ、いつとあんま変わんないんで大丈夫です」

「そう?じゃあ今日は何もできそうにないし…おやすみ?」

 八代さんは渡部をかかえながらそう言うと、敷かれていた布団の中に入っていった。

「はじめ。私達も戻ろう?中二病も寝てるし」

「明日は川遊びできるらしいしね。あたし達もしっかり寝ておかないと」

 若林と井上に促されるように俺は104号室に戻ると、そのまま1番手前の布団に潜った。

「はじめの隣は私!」

「いいや!あたし!」

 2人は俺が布団に入るなり言い争いを始めた…

 内容がどっちが俺の隣で寝るかについてって…男として嬉しいが嫌じゃないのか…?

 何故かこの2人の言い争いに首を突っ込んだら戻れない気がした俺は、現実逃避をするように意識を手放した。



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