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足して2つの高校生活  作者: 赤槻春来
8月.夏休みの合宿
10/51

合宿(仮)!


 8月上旬。夏休みもはや中盤に差し掛かろうとしていた。夕方、俺がとりこんだ洗濯物を畳んでいると、不意に俺のスマホがブーブーと振動を始めた。

「はじめ、出ないの?」

「いや、知らない番号だし…きっと何かの勧誘か何かだろ」

 スマホが何度も鳴っているのを気にしたのか、若林が俺のスマホを手に取ると、画面を確認しながら俺のほうは持ってきた。

「…私の時も同じことしてたの?」

「…まぁ」

「はぁ…はじめらしいというかなんというか…この番号、先生だよ」

 は?渡部から?なんであの人俺の電話番号知ってんの?怖い。てか怖い。

「なんでこの時期に電話…?俺、思い当たる節がないんだけど…てか俺渡部に番号教えてないんだけど…」

「あー…はじめ?本当に覚えてないの?」

「いや、覚えるも何も心当たりがないんだが?」

 若林はため息を吐くと、人差し指をピシッと伸ばして俺のほうへ向けてきた。

「合宿だよ合宿!先生主催!『合宿(カッコカリ)』!…の、予定とか持ち物が決まったら連絡するって先生言ってたじゃない」

「あー…そういえばそんなのあったようななかったような…」

 夏休み前のあれか…まさか本当に実行するとは…まぁ二泊三日らしいしその分食費が無料ただになるのはでかいが。…その代償に俺は強制という条件付きなのがあった気もする…

「合宿ははじめと同室。はじめと一緒にご飯食べて、ベッドであんなことやこn…じゃなかった、一緒に寝て…あぁ…今から楽しみ!」

「いや、お前最近よくウチに来て泊まってるだろ…」

 なんなら同じ布団で寝てるまである。間違いを犯さないようにすぐ寝てるし問題ないけどな!まぁ自分の食べる分の食費は出してくれてるから文句はないんだが。

「だってお父さん家にいるとウザいんだもん。あとキモい。なんで私とはじめの関係をしつこく聞いてくるかなぁ…」

「いや、それは若林がほぼ毎日のようにこっち来てたらそうなるだろうよ…てか前から思ってたけどなんで井上の家じゃないんだ?お前ら仲良いのに…」

 よくいがみ合ってる姿も見るけどな。俺がいないときに楽しそうに話してるところは何度か見たことあるし。

「いや…それは…既成事実を作る為なんて言えない…」

「どした?急にブツブツ言い出して…井上となんかあったのか?」

 若林のブツブツ言ってる声って全然聞き取れないんだよなぁ…井上のときもそうだったけど。耳鼻科の先生には異常はありませんってはっきり言われたし。

「何もないよ?…って、それよりも合宿の話!先生から持ち物についていくつか連絡あったから、後で一緒に用意しよ?」

「ん?あぁ…わかった。これ終わって夕食食い終わったらな」

「ん、わかった」

 若林はそう言うと、俺のスマホを置いて和室のほうへと戻っていった。

 …さて、さっさと終わらせますか。


「ふぅ…これくらいでいいかな…」

 夕食を食べ終え、皿洗いを終えた俺は、若林と椿ちゃんが風呂に入っている間に合宿の荷物を纏めていた。

「後は…水着?川でもあるのか?」

 俺がスマホに送られてきた渡部のメールを読みながらタンスの中をあさっていると、ガチャリと部屋の扉が開かれた。

「はじめ、そろそろ明が来ると思うよ。リョーも手伝うから早くこと部屋を出よ?」

「あー…もうそんな時間か…じゃあ俺の水着探してくんね?ラッシュガード有りで。確か去年のがあったはず…」

「わかった」

 部屋に入ってきた亮は、俺にそう忠告をすると一緒にタンスの中を漁り始めた。

 よく考えたら自分の部屋なのに追い出されるって超理不尽だなぁ…まぁ椿ちゃんとあの馬鹿(明のこと)が仲良い分には文句ないんだけど…今度俺の私物だけ全部出すか。

「あ、はじめ。これじゃない?」

「おぉ!ありがと亮!よし、さっさと脱出するぞ」

 俺がそんなことを考えている間に亮は水着を見つけると、それを俺に手渡した。

 

 

 翌日、俺はいつものように目を覚ますと、隣に寝ている若林を起こさないように布団を抜け出して朝食の支度をはじめた。

 もう若林と同じ布団で寝ることに慣れてしまったのが怖い…というか毎回起きると腰が痛いんだよなぁ…熟睡はできるんだけど。

 渡部のメールによるとどうやら今日から合宿が始まるらしい…急すぎじゃね?若林達は事前に日にちを知っていたらしいんだが…

 俺は焼き上がった卵焼きを切り分けると、昨日の夕食の残り物と一緒に7人分の皿に取り分けた。

「おっはよーございまーす!義兄おにいさん!」

「おう、おはよう椿ちゃん」

 俺が皿を並べ終えると同時に、ドタドタと足音を立てながら階段を下りたきた椿ちゃんは、元気な挨拶と共に洗面台のほうへと向かっていった。

 …相変わらず元気がいいなぁ…この騒音で親父達が起きないのが謎だ。


 朝食を終え、身支度をした俺と若林はもう一度、荷物を確認すると、それを持って玄関へ出た。

「「いってきます」」

 俺と若林が呟くようにそう言うと、部屋にいたであろう母さん達が慌ただしく足音を立てながら玄関へと走ってきた。

「はじめ、家のことは私に任せて楽しんできなさい!」

「リョーも家事手伝うから安心してね!」

「いってらっしゃい!義兄さん!義姉おねえさん!」

 母さんと亮、椿ちゃんは口々にそう言いながら手を振ると、俺と若林は手を振り返しながら集合場所である最寄駅へと足を動かした。



「お、みんな揃ったか」

 午前10時前。俺達が待ち合わせ場所である駅前の公園に着くと、既に渡部と井上、吉田は集まっていた。

「先生、早いっすね。俺達30分前に着くようにはしたのに…」

「集合時間に間に合うようにするのは当たり前だろにのまえ?30分以上前に着くのは常識だよ常識」

「えっ…我9時50分に集合って連絡だったんだが」

「吉田、お前はそれでも遅れてきただろうが」

 渡部はそう言いながら吉田の頭を軽く叩くと、再び俺達のほうへ向き直した。

「それじゃ、ついてきてくれ。車に乗り込むぞ」

 俺達は渡部に促されるように、近くの駐車場に置いてあるワンボックスカーに乗り込もうとすると、ピタリ、と井上がドアの前で立ち止まった。

「先生、席はどういう…」

「あー…本当はにのまえが助手席に来てほしいんだけど…」

 渡部は俺と若林、井上を見ると吉田の肩に手を置いた。

「助手席よろしくな。後部席は好きにしていいぞ」

 渡部がそう言うと、若林と井上はまるでその台詞を待っていたかのような俊敏な動きでそれぞれ俺の腕を拘束した。

「ちょ、2人とも急に腕にしがみつくなよ⁉︎え、ちょっと⁉︎地味に力強くない?ねぇ?」

 2人は俺の言葉に聞く耳を持たず、互いに睨み合いながら俺を連行するように車に乗り込んだ。

「よし!行くぞー!」

 渡部はそんな俺の様子を横目に掛け声のようなものを上げると、車のアクセルを踏み込んだ。



「先生、結局どこに行くんですか?高速乗ってしばらく経ちますけど…」

 どうやら俺は寝てしまっていたらしい…身体を誰かに譲られた気がして目を覚ますと、井上がそんなことを言っていた。

「あー…言ってなかったっけ?ま、そろそろ着くからすぐ分かると思うよ」

 渡部は回答になっていない答えを言うと、高速道路を降りていった。

 軽井沢?なんでまたこんなところに…


 渡部はそれからしばらく車を走らせていると、いつのまにか周囲が木に囲まれた旅館のような施設

に到着した。

「着いたぞお前ら。吉田、起きろー」

 渡部は車を停めると、助手席で寝ている吉田をグワングワン揺すった。…それで起きない吉田もどうかと思うが…

「いっちゃん…早く若林さん起こしてあげて」

 俺がそんなことを考えていると、右サイドから井上の冷たい声が聞こえてきた…

「わ、わかったって」

「ん」

 俺が返事をすると、井上は満足げに車を降りた。

 さて、俺は左腕にしがみついてる若林を起こs…ん?若林のやつ…起きてやがる…

「オイ若林。起きてんだろ。俺達も降りるぞ」

 俺がそう言うと、若林はスッと俺の腕から手を離した。…ってやっぱ起きてんじゃねぇか…

「もう…つれないなぁ…」

「そんなこと言ってる場合か。さっさと降りるぞ」

 俺達が車から降りると、井上、吉田、渡部の他に垂れ目でツインテの女性が立っていた。

「…、お、噂をすれば」

 俺達が出たことに気付いた渡部はそんなことを口にすると、こちらに視線を向けていた。

「紹介するよ。この2人が俺自慢の教え子、こっちの三つ編みのほうがにのまえはじめ、金髪のほうが若林わかばやしかすみだ」

 唐突の渡部の行動に、俺は状況がいまいち把握できていないでいると、若林がぺこりとお辞儀をしたので俺もやっておくことにした。

「それで、先生。その女性ヒトは?」

「よく言った井上。こちらは俺の恋人の八代やしろ伊吹いぶきだ」


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