表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
59/159

36話 貴族屋敷での新生活-2

「本当に行きたいの?」

「吾が一緒では邪魔か?」

 

「そんなことはないけど……どう紹介しようかなって」

 いきなりノーマを連れて帰ったら、ラヒィは驚くだろうし、おっとりしたバニカだって不思議がるはずだ。


「なんだ、好いている女子おなごでもおるのか?」


「いや、ラヒィは家族みたいなもので」

「レアンの家族なら、遠慮はいらんな。さぞお人好しなのだろうな」


「どうだろう。ラヒィもバニカも良い獣人なのは確かだよ」

 五日ぶりの休暇。ラヒィテールに帰ろうと支度をしていると、ノーマが「一緒に行きたい」と騒ぎ出した。

 なんでもゴラシ地区に行ってみたいらしい。


「吾も獣人だったらよかったのにな」

「ん?」


「なんだその微妙な反応は?」

「いや、そんなことを言う人にパラディソスで始めて会ったと思ってさ」


「おかしくはないだろう? 吾の目の前に立っておる人は、『獣人を家族だ』と躊躇いもなく申したのだからな」

「……人も獣人も変わらないさ」

 本当にそう思っているなら、何故、正体を隠す?

 獣人ではいられなかった。だから人のふりをしている。何も間違ってはいない。


 首からぶら下げている白透明の宝石に手をあてる。服の上からでも波動を感じる。

 


「レアン、人の悪意には気をつけるのだぞ。あれ程醜悪で度し難いものは存在せぬ」

「ノーマ?」


「すまぬ。久しぶりの外出故に、緊張しておるのだ」

「どれくらいぶりなんだい?」


「自ら望んで外にでるのは五年ぶりかのう」

「それって……」


「言っておらなかったか、吾は軟禁されておるのだ」

「……ノーマ」


「怖気づいたか? 見つかれば懲罰ものだ」

「……どうやればノーマを助け――」

 ノーマが背伸びをして人差し指を唇に押し当ててきた。

 白く柔らかい指先の感覚。


「これだけは言っておくぞ。一時の感情に流されて判断を見誤るな。全が思い通りになるなどと思い上がるな」

 ノーマは友達だ。できることなら助けたい。でも、その行動の先は……。もしかすれば俺と仲良いというだけでラヒィやバニカに迷惑がかかるかもしれない。


「そう深刻な顔をするではない。先ほどの軟禁うんぬんの話は嘘だ。吾はただの使用人。ただ卑しい生まれゆえここ以外に居場所がないだけなのだ」

「……一緒に行こう、ゴラシに」


「行かぬよ。上位騎士ハイパラディンは吾の外出によい顔をせぬだろうからな」

「一緒に謝ろう。ノーマに見せたいんだあの日常を」


「――吾は単純な上、その言葉を真に受け止めてしまうぞ」

「友だちだろう」


「そうか、このような関係を友と呼ぶのだな。心地がいいものだ」

 ノーマが薄っすら微笑んだ。



評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
cont_access.php?citi_cont_id=284244975&s
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ