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犬話 異世界転生撲滅キャンペーン-4

「これをみてほしい」

 とエウジアナ。


 教室前方の天井から大型スクリーンが降りてきた。


「あくまでもサンプル映像になる」と注釈を付け加えたところで、暗転。

 プロジェクターから映像が投影される。


ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー


「転移、グフフッ、転生、、、ハーレム!!!」

 薄暗い部屋。無精ひげをはやした青年が、血走った目で、青白いモニターを注視している。

 乱雑に散らかった部屋。ヨレヨレのスエットに、ボサボサの黒髪。



 求人雑誌1:異世界転移職業小説・漫画3:異世界転生俺TUEEE系小説・漫画4:エロ本2

 本棚がズームアップされる。


「俺は、本気出してないだけだ。……俺は何も悪くない。……俺だって転生とかしたらハーレム無双で――」

 青年の怨嗟のこもった独白は続く。


「ああっ、イライラする。さっさとシコって寝てやる! 明日になっら本気だしてやる、後悔してもしらないからなっ」



 唐突に、部屋全体が光った。床一杯に幾何学模様――魔法陣が展開される。

 

『転生したいですか?』

 モニターに文字が表示された。


 青年がマウスに手を伸ばす。


「答えはYESに決まっている!」


 カチッとクリック


 次の瞬間、天井から何かがもうスピードで落ちてきた。

 古典的なお笑いコント――たらいがおちてきたような演出。


 ただし、紐の長さの調整が上手くいってはいない。寸止めではなく、直撃。どうみても放送事故だった。

 青年は地面で蹲って、頭を抱えている。呻き声がなんとも生々しい。


 安っぽいCGで、頭の周りに☆が泳いではいるが、打ちどころが悪ければ死んでもおかしくはない衝撃だった。

 

 続いて、落下物にクローズアップされる。

 落下物の正体は大きめの地球儀。宙づり状態で、くるくると回っている。


 徐々にズームアップ。



「ほら、早くセリフ」

 外野から声。演出ではなく、完全に編集ミスだろう。


「……ダーーーメーー! ゼッタイ!!!」

 地球儀が奇声を発した。地球儀……よくよくみれば球体から顔や手足が飛び出している。

 お肌のトラブルなど無視した強引なペインティング擬態も近づけば何の役にもたたない。



「セリフ、セリフ」

 またしても外野の声。


「…………俺は転生した――」

 青年の絞り出した声が、奇声に掻き消された。


「ゼッタイ、ダメ、ダメ、ダメーーーーメダマヤキ?!」

 ジタバタと前足と後足をバタつかせる地球儀――垂れ耳の中型犬。

 もはや、地球儀の面影はない。


「……もう無理ですって、ボクをおうちに帰してください」

 体育座りで弱音を吐く青年。

 立派な成人男性が涙目で、懇願を続けている。


「次、テイク175」

 無慈悲な一言。



「ゼッタイ、ゼッタイ、ダメッ、ダメッ!!!――」

「ムリーーーー、ムリ――」

 奇声と悲鳴がハモニーを奏でたところで、映像は途切れた。



ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー

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