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24話 獣人モドキとオーバーエイジな魔法少女-11

「ん?」

 チャリン、チャリンと鈴の音が響いたような気がした。


「忌々しい」

 どこまでも冷たく無機質で、どこまでも希望を奪い取るバサラ神の声色。


「――お久しぶりでございますね、バサラ神。ざっと1000年ぶりでございましょうか」


「……その穢れた両の眼で、妾をみるでない。消えよ、亡霊」

「否定です。しかしながら、私が消えて悲しむものなどおりませんが……いや、それは戯言でございましたね。どうやら卑屈になりすぎてしまったようです――」


「――我が主、アスカ様。私はシロネ、世界に疎まれし禍神の残滓。アナタ様が私に名前を与えてくれた。この存在は御身のために」

 アスカが口をパクパクしている。『私、パワーアップ!? でも、ご都合主義じゃない、これ』と二律背反しているみたいだ。

 確かに都合が良すぎる気がする。



 猫耳を生やした獣人。二股の尻尾がしなやかに揺れている。猫の獣人なんて初めてみた。


「そのような人らしい表情をなさるのですね、同胞様は。その擬態力、是非とも参考にさせていただきところでございますが――」

「おやめになったほうがよろしいかと、それはあまりにも悪手でございます。不完全な十二神将、魔王ではない魔神の眷属程度では私の存在は砕くことはかなわない」


「まるで三下の敵役みたいやけど……ほな、僕はたいさんするわ」

『またな、レアン君、次はちゃんと殺し合おうな』

 俺の脇をすり抜けたアラヤは笑っているようにもみえた。見事なまでの逃走スキル。すでに痕跡を追うことはできない。



「くっくくっ、はははははっ、妾もも舐められたものだな。たしかに今の妾ではお前を砕くことはかなわぬな」

 それは一瞬の出来事だった。感覚に違和感を感じて、現実感が遠のく。そこはまるで法則や規則を捻じ曲げた世界。

 バサラ神がアスカに近づいていく。金縛りにあったように身体重い。それでも動けないわけではない――



「え?」

 アスカの間の抜けた声が後方から、聞こえた。


「ほう、妾の神域に干渉するか」

 吐息がかかる程、顔が近くにある。長い白髪からは甘い香りがする。


「たしかに普通ではないようだな。では、心の臓を握りつぶしてくれよう」

 俺の身体の中で、何かが暴れている。グジュグジュと耳障りな音がする。

 不思議と痛みや恐怖はない。認識してしまった時点で、終わりなような気もするけれど。

 

 「××××、思い出して」

  アスカが叫んでいる。


 『何を』

  言葉がでない。


 「アナタは最狂の――」

 「アスカ様! 離れてくださいませ! 彼が暴発すれば、レオンシークのように――」


 「まだ、事切れぬか、だったら次は首を切り下ろしてくれるわ」

  バサラ神が凄惨な笑みを浮かべて、俺から離れた。

  その手の平には、ドクドクと脈打つ赤い物体。

  鋭い爪が食い込んで、鮮血が飛び出した。



 「…………」

  思考が纏まらない。


 「もう終わりか、つまらん」

  バサラ神が赤い物体を握りつぶした。



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