表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
37/159

19話 獣人モドキとオーバーエイジな魔法少女-6

「どせいいーッッ!」

 怒声とともに、グリーンタイガーの身体が宙を浮いた。

 ぬるりと抜け出したアスカが反撃に転じる。


 ファンシーなステッキを最大限しならせて振り下ろす。

 ガコッと鋭い牙がそれを受け止める。唸る獣の気迫に寒気がする。


「なかなかやるじゃない。さっさっと、私のモノになりなさい」

 ガキッとステッキがへし折れた。素手で、牙を掴むアスカ。ギリギリの均衡は、いつ崩れてもおかしくはない。

 


 何か、何か。ないか、この状況を打開できる方法は……。

 そうだ!


 近くに落ちている、白くくすんだ木の枝を取り上げて、火の宝石を打ち付ける。

 カチッ。


 火の粉をまき散らす簡易松明をブンブンと振り回して、猛獣めがけて突進する。


 グリーンタイガーが怯んだ、一瞬の隙をアスカは見逃さなかった。

 がら空きの顎めがけて、掌手をたたき込んだ。


 横倒しに倒れたグリンタイガーは気を失っているようだ。


「ふぅ~~危ないところだったわ」

「ゲットしないのか」


「なんかやっぱり可哀想よね。仲間になるのはやぶさかではないけれど、危険な時に呼びだすわけでしょう。場合によっては、捨て駒にしなければいけないことだってあるかもしれない――」

 私はそこまで強くないからとアスカが笑った。強者であっても、危機に陥ればなりふり構ってはいられなくなる。アスカは、きっと優しいのだろう。


「これからどうする? まぁ、すてごろでもなんとかなることもわかったし、付け焼刃には頼らないわ」

「わかった。だったら、さっさとキエトに向かおう。レッドレオンになんか遭遇したら厄介だしな」


「了解――」

「ニヤッ、ニャッ」

 いつのまにやら 白ネコが、アスカの足元に身体をこすりつけている。


「ん、何?」

「ニャッ~」

 

「たしか、翻訳機能がついていたわね」

 アスカが悪戦苦闘しながら、ネコフォンをいじっている。


「んーっと、もう、わかんないわねっ。たしか、これねっ」

 ネコフォンから線状の光が出力され……。


 ホワイトキャットとグリーンタイガーが光に包まれた。


 そして


「ニャッ」

 ホワイトキャットがアスカの身体をよじ登って、腕の中に収まった。


「ガウ、ガウ」

 ムクリと起き上がったグリーンタイガーが抗議の声を上げた。どうやら、自分も抱き上げろということらしい。


「あれれ、違うのよ、レアン君。私は別にそんなつもりはなかったのよ。ほんとだからねっ」

「別にいいじゃないか。二匹とも嫌そうじゃないしな。せっかくだし、名前をつけてやればいい」

 名前で縛るのは、使役術の基本中の基本だ……?


「……なになに、二人とも名前をつけてほしいの。よし、ちょっと待ってね。そうね、シロネとトライチなんてどう」


「ミャ~」

「ガウ」

 二匹が嬉しそうに声を上げた。


「よろしくな、シロネ」

 アスカに抱かれたシロネの頭に触れた瞬間、映像――おそらく記憶が流れ込んできた。

 泣き叫ぶ獣人の少女だ。周りの獣人の反応はまちまちだ。顔を背けるもの。悲し気に俯く者。

 安堵の表情を浮かべるもの。口元を歪めるもの。

 悲しくて、でも、自分が犠牲になれば全てが収まるというあきらめの念。少なからず、世界を憎む気持ち。

 ああっ、この暴風のようなやり場のない気持ちを私はどうすればいい?



「――レアン君、レアン君」

「……アスカ?」


「どうしたの、急に、魔神が干渉でもしてきたの? ごめんんさい、私、そっち系には疎くて」」

「いや、たぶん、疲れがでたんだと思う。色々なことがありすぎて」


「そっか、それなら一度、ウルフビームに戻りましょう」

「ん? 戻る意味がわからないんだが」


「完全には嫌いになれないでしょう。だって、故郷だものね。きっとこのままだと後悔するわ」

「俺は別に――」


「トライチが教えてくれたのよ、今、ウルフビームが襲撃を受けている」

「……―ウェイ姉さん」

  気づいた時には全速力で駆けていた。こんなに早く走れたのだと自分でも驚く。

  トライチに跨ったアスカがしっかりと追随してくる。この分なら、すぐにでも帰れるはずだ。 



評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
cont_access.php?citi_cont_id=284244975&s
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ