18話 獣人モドキとオーバーエイジな魔法少女-5
「ニャ~ッ」
真っ白い子猫がか細く鳴いている。足元に転がっている木実を必至にかばっている。
「ねぇ、猫ちゃん、私の素敵な仲間にならないかしら?」
嘘くさい笑顔。
「そんなに怯えなくてもいいのよ。私は、正義の羽衣乙女」
後手で隠しているあの緋色のスマホ――ネコフォン(勝手に命名した)の存在が絶対的にばれている。
それにしても……演技がド下手だな。顔が引きつっているし。
「弱い物イジメはやめろよ。そもそもホワイトキャットを仲間にしたって戦力にはならないだろう」
「この子は、こう見えてもBランク以上の逸材なのよ。それに、レアン君はポ〇モンやったことないの? とりあえず、手持ちのネコモンがいないと話にならないわ」
可愛がっているパートナー――仲間を戦わせるか……。俺なら自分で戦うけど。
「――でさ、そのネコフォン……コールデヴァイスがあればネコ系の動物――ネコモンを簡単に仲間にできるんじゃなかったのか」
「ええっ、同意さえあればね。一度、契約できれば自由に呼びだせるはずよ」
「だったら、契約済みのネコモンを呼び出せばいいじゃないか」
「問題は二つ」
アスカが突然、ピースサインをつくってみせた。
「一つは、ここは異世界で、呼び出すには相当なコストがかかるのよ。今回のミッションに新生代が投入されなかった理由はそれ。Aクラスの子達なら、Cランクのネコモンなら召喚できるでしょうけど」
「呼び出される方の抵抗がゼロ……自発的に来てもらってもダメなのか? そもそも組織――グレーキャットとやらが遂行したいミッションなわけだろう?」
「……そんな発想ができるのはアンタくらいよ」
「ん?」
アスカの口調に棘がある。
「独り言よ。でも、いずれはそんな人材が現れるかもしれないわね。そのために、あの子たちは血が望むような努力をしてAランク――神獣クラスの召喚にさえ成功した」
「そっか」
何か聞いてはいけないことを聞いてしまっただろうか。
「二つ目の問題は、私のデヴァイスに登録されているネコモンがゼロ匹ってことよ」
「なるほどね、て! まだアスカは初心者ってことなのか?」
「まあ、そんなとこよ。これはチャンスなのよ、レアン君。年下に憐れまれる生活もこれでおしまい。だから、私はあきらめない! 覚悟なさい」
アスカが強引に白猫を掴もうと、手を伸ばす――
「ニャーッ――」
白猫が毛並みを逆立てながら、こちらにかけてくる。
そうか。そうか。俺に助けをもとめてくるなんてカワイイ――
「あれ?」
俺の脇をすり抜けて、白猫が逃げていく。
「レアン君、追いかけて! あっ!?」
まさに一瞬の出来事、アスカの後方の茂みがガサゴソと揺れたと思ったら、何かが飛び出してきた。
緑色の毛並み。まさか!?
「グリーンタイガー!?」
「ハートウォ――グフッ」
アスカの嗚咽がこだました。
グリーンタイガーが太い前足でアスカをなぶっている。手をまわして、かろうじて顔をガードしている状態だ。
噛みつかれたら手遅れになる。




