6話 出来損ない獣人の日常-6
外の騒がしさに反比例して、家の中は静まり帰っている。
夜が明けて俺が目撃した、奇怪な生物の捜索が行われている。
ウェイ姉さんに家にいるように言われている。あれは一体何だったのだろう。
ウルフビームは円形の集落だ。戦士として優れた家系ほど外側に住んでいる。
ロボ氏族は北側外周を縄張りとしている。俺達の家は、中心地にから少し離れた位置にある。
集会場とか。簡易的な商い通りなんかは中心地にあるから、立地てきには恵まれていると思う。
そんな価値観はここでは通用しないけれど。
「――レアン、ただいま」
ウェイ姉さんの表情はどことなく暗い。
「で、見つかったのか?」
「……まだ」
「そっか。あれだけ大きかったんだ、すぐに見つかると思ったんだけどな」
ウェイ姉が息を深く吸ってから、口を開いた。
「ねぇ、レアン、本当に見たのよね?」
全身に冷や水を浴びせられた感覚。
「俺が嘘をついてるって言いたいのか?」
目頭が熱い。
「違うわ。でも、これだけ探しても痕跡一つみつからないのよ。だからね、レアン」
「探し方が足りないんだ。どうせあのアホ三兄弟が指揮をとったんだろう」
あいつらは目立ちたがりの勘違いクソ野郎だ。
「レアン! そんな言い方ないでしょう。みんな寝ずに捜索してくれたのよ」
「ウェイ姉さんは誰の味方なんだよ!」
「レアンよく聞いて、私は――」
「俺は、間違っていない」
「待っ――」
我慢の限界だ。家を飛び出した。
どうやら捜索は打ち切られたらしい。すれ違うたびに、侮蔑の言葉が聴こえてくる。
『嘘つきの獣人モドキ』『できそこない』『耳なし』
聞こえないとでも思っているのか。
早足で、集落の外を目指す。
「あれあれ、耳なしのレアン君じゃないか」
「プレザ……そこをどいてくれないか」
顔を合わせたくない。
「おい、レアン、大丈夫か?」
どうしてアルの声がする? おそるおそる顔を上げる。
「どうして……」
その先は言葉にならない。どうして、プレザとアルが一緒にいるんだ。
「僕たち今日からマブダチになったんだよ」
プレザが弾んだ声で言う。
「レアン――」
もう心が限界だ。
「――――」
後方からアル声がしたけど、振り返る気力はない。一刻も早くこの場から立ち去りたい。
俺は一人ぼっちだ。




