123話 無限死(エターナル・ループキル)
不死者を撃退する方法は、いくつかあるけど、一番オーソドックスな方法は封印だ。
言い換えれば無限死。
深海2万メートルとか、宇宙空間とか。脱出不可能な棺桶の中とか。
この世界に永遠なんて存在しない。
生命は生まれた瞬間に、死へと歩み寄る。
超越存在にしてもそうだ。神々のパラドクス。奉じる者がいなければ神は存在できない。
厳密には、形を維持できない。
世界は等しく永続性を許容しない。
俺以外の化物の思考なんてわからない。創作物の中では、精神が摩耗するって描写が多い気がする。
とある吸血鬼は、五百歳を超えたころから自殺願望を抱いたそうだ。
死ねないんだから、自殺するって思考自体が徒労に終わる気がするけど……堂々巡りの矛盾癖。
フィクションの中の彼や彼女は、主人公――人と心を通わせることで話が転結していくのだから、おかしな話ではないのか。
稀有な存在。俺はついぞやそんな存在に遭遇したことはない。
心と体は切っても切り離せない。身体が規格外に変質すれば、精神も変容する。
それが当然の道理というか……そうしなければ自己定義ができないのだ。
戦いの終わりに
「終わりのない苦しみを余すことなく甘受しやがれ」と、人はそうはき捨てる。
計り知れない犠牲。その上に勝ち得た平和。
『永遠にとじ込められた――。絶望、一刻む早くここから出してくれ。お願いします、改心しますから、ご慈悲を、どうか、どうか……』
そんなことを考えるのは、リミットのある存在だけだ。
言わば、常人の身勝手な妄想だ。
勧善懲悪の物語。悪役が苦しまなければ『ざまぁ』は達成できないのだろう。
何をされても、些末なこと。猿の児戯だって思考回路なら、冷静にその状況を受け入れられるだろう。
感情と思しきものを会得しているなら『次は、どう行動しよう。あれをどう攻略しよう』って考えを巡らせる。
時間は無限にあるのだ。
アンリミテットのアドバンテージがある限り、人は永続性を保有する化物には打ち勝てない。
別に「自分は化物だ。こんな封印、一万二千年くらい経てば瓦解するのだろうwwwww」そんなことを妄想して、自慰行為をしたいわけじゃない。
この退屈で、俺の心は壊れない。犬寝入りって技を使えば、万年単位の睡眠だって可能だ。実際その方法で、ジュラ紀から帰還したことだってある。
さすがに巻き込まれただけの、同級生が怪我や老衰で死んだ時は泣いたけど。恐竜時代のサバイバル生活は結構過酷なんだよな。
無論、帰宅後、瞬時にとって返したけれど。
退屈だったら眠ればいい。眠れないなら、意識をシャットダウンすればいい。
真正の化物ならば、心が折れるなんてことは万が一にもない。
ダメージを負う瞬間があるとすれば、封印を脱した後だ。
千年後、もしくは万年後の世界。全てが後の祭り。
どんな結末でも、時間たてば過去の出来事になり下がる。勝とうが負けようが関係ない。
時間遡行をしても、それはまた別の――パラレルワールド。
偽物、紛い物だって感覚は最期まで抜けきらない。
……結局、俺達は誰かを通してしか人間性を発露できない。
もう夜が明ける。どれくらいの時間が経った。まだ、一日だよな?
どうしよう、余裕で一年くらい経過していたら。
無理にでも突破するべきか。でも、もし、それこそが敵の狙いだとすればどうだ。
もし、こんな状況で誰かに願望をぶつけられたりしたら……。
誰かが止めてくれるか? ロンがいない。
アヌビス部長や、ハクタク兄妹もいない。
堂々巡り。一か八かの賭けになる。
誰かに利用されるくらいなら、絶対悪に堕ちたい。
俺対世界なんてなんとも素敵な構図ではないか。
腹を括ろう。
願わくば世界の「終焉」ではなく「救済」を。




