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自作小説倶楽部 第17冊/2018年下半期(第97-102集)  作者: 自作小説倶楽部
第102集(2018年12月)/「イルミネーション」&「ソリ」
24/27

02 柳橋美湖 著  ソリ 『北ノ町の物語』 

【あらすじ】

 東京のOL鈴木クロエは、母を亡くして天涯孤独になろうとしていた。ところが実は祖父一郎がいた。手紙を書くと、祖父の顧問弁護士・瀬名さんが夜行列車に乗って迎えにきた。そうして北ノ町に住むファミリーとの交流が始まった。お爺様の住む北ノ町は不思議な世界で、さまざまなイベントが起こる。……最初、怖い感じだったのだけれども実は孫娘デレの素敵なお爺様。そして年上で魅力をもった弁護士の瀬名さんと、イケメンでピアノの上手なIT会社経営者の従兄・浩さん、二人から好意を寄せられ心揺れる乙女なクロエ。さらには魔界の貴紳・白鳥さんまで花婿に立候補してきた。しばらくして、クロエは、お爺様の取引先の画廊マダムに気に入られ、秘書に転職した。

 クロエは、マダムと北ノ町へ行く夜行列車の中で、少女が死神に連れ去れて行くのを目撃する。神隠しだ。そして鈴木一家による少女救出作戦が始まる。

 ――そんなオムニバス・シリーズ。

挿絵(By みてみん)

挿図/Ⓒ 奄美剣星 「ソリ」



     55 ソリ


 クロエです。お爺様と再び合流した私たちは、竜の墓場駅のステーションホテルに宿泊しました。私がマダムとテレポーテーションの訓練をしていると、まだ魔法に馴れなくて、エベレストのような霊峰にまで飛ばされてしまいました。テレポーテーションの瞬間、この冒険の発端になった少女と死神さんの素顔が見えました。少女というのは、母ミドリ、そして死神さんはお爺様だったのです。――これって、どういうこと!

     ◇

 マダムが小声で、「風の妖精シルフィードを呼び出して」と私に言いました。酸素が欠乏しています。私は、もがきながらも、どうにか呪文を唱え、その子を呼び出しました。少女の姿をしたシルフィードが、空気を濃くした球状の小部屋エア・スポットをつくり、私たちを中に入れました。

 マダムの導きで次はサラマンダーを召喚します。トカゲの形をしたサラマンダーがエア・スポットの外壁にへばりついて、中を温めます。ファンヒータ―のような感じでした。

 次は人魚のような姿のウンディーネ。山頂の氷雪を一度水に戻し、再び氷結させて、ソリをこしらえてもらいます。

 最後に、山の急傾斜を利用して、ノームという小柄なドワーフたちがジャンプ台を築きます。

 では、スタート!

 ソリは勢いよく滑走して、再び、月の夜空から亜空間へジャンプしました。

 ――今回はミスしませんよ。絶対に一回でステーションホテルまで帰還するんだから。

 ソリがジャンプ台を跳んだ瞬間、サーチライトのような光線が、眼下を横切りました。刹那、山体が袈裟懸けにずり落ち、麓に転落していくではありませんか。

 ――ピイちゃんたら、もう。

 こんなことができるのは炎竜のピイちゃんしかいません。あの子は私がピンチになると、前後の見境なく、反射的にレーザーみたいな吐息を放射する癖があります。――理系大学卒であるところの従兄・浩さんによると、ピイちゃんの吐息は、雷に近く、大気中の空気を反物質化させるものではないかとおっしゃっていました。そして、ピイちゃんの恐るべき大技を〝ブレス・カッター〟と命名しました。

          ♢

「今度のテレポーテーションはうまくいったみたいね」

 マダムが私にウィンクしました。

 ソリはステーションホテル前のロータリーに着地しました。

          ♢

 マダムが、「このまま部屋に戻るのもなんだから、フロント横のラウンジに寄って、喉を湿らせない」と誘いましたので、カウンター・テーブル席に並んで座りました。

「ねえ、マダム、お爺様やお婆様は、私に何をさせたいのでしょうね」

「この世界はもちろん、あなたのお爺様やお婆さまって、親友だった私でさえ謎だらけよ。ただ、一つだけこれはいえるわね。――鈴木ファミリーは、潜在的に、この異界の命運を握るくらい強力な影響力を持っている」

 私なんかが、一世界を滅ぼしうる力を持っている。――そんなわけない。――でも……シルフィードを始めとした四大精霊は私が思い浮かべた物を、ほぼ瞬時に作り上げてしまう。また炎竜は、まだ制御仕切れてはいないのだけれども、一撃必殺技ブレス・カッターでどんな物体も寸断してしまう。

「クロエ、あなたが、四大精霊と炎竜を完全につかいこなしたとき、万能の女神になるでしょう」

 シェリーを飲み終えた私たちは、エレベーターで、上階にあるお部屋に戻りました。すると、部屋のドア下に、手紙が差し込まれてあるのをみつけました。

 ――明日、早朝六時、竜骨の採掘場へ来られたし。案内人を部屋前に待たせておく――

 そして翌日、私とマダムの寝室をノックした案内人というのは、あの死神さんと神隠しの少女ではありませんか!

     ◇

 それでは皆様、また。

             by Kuroe 

【シリーズ主要登場人物】

●鈴木クロエ/東京暮らしのOL。ゼネコン会社事務員から画廊マダムの秘書に転職。母は故ミドリ、父は公安庁所属の寺崎明。大陸に棲む炎竜ピイちゃんをペット化する。

●鈴木三郎/御爺様。富豪にして彫刻家。北ノ町の洋館で暮らしている。妻は紅子。女学校卒業後、三郎に嫁ぐ。紅子亡き後はお屋敷の近くに住む小母様をアルバイトで雇い、身の回りの世話をしてもらっている。

●鈴木浩/クロエの従兄。洋館近くに住みクロエに好意を寄せる。式神のような、電脳執事メフィストを従えている。ピアノはプロ級。

●瀬名武史/鈴木家顧問弁護士。クロエに好意を寄せる。守護天使・護法童子くんを従えている。

●烏八重/カラス画廊のマダム。お爺様の旧友で魔法少女OB。魔法を使う瞬間、老女から少女に若返る。

●白鳥玲央/美男の吸血鬼。クロエに求婚している。一つ目コウモリの使い魔ちゃんを従えている。

●神隠しの少女/昔、行方不明になった一ノ宮神社宮司夫妻の娘らしい。死神にさらわれているのがわかった。

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