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自作小説倶楽部 第17冊/2018年下半期(第97-102集)  作者: 自作小説倶楽部
第101集(2018年11月)/「冠雪」&「魔法」
21/27

03 柳橋美湖 著  冠雪 『北ノ町の物語』

【あらすじ】

 東京のOL鈴木クロエは、母を亡くして天涯孤独になろうとしていた。ところが実は祖父一郎がいた。手紙を書くと、祖父の顧問弁護士・瀬名さんが夜行列車に乗って迎えにきた。そうして北ノ町に住むファミリーとの交流が始まった。お爺様の住む北ノ町は不思議な世界で、さまざまなイベントが起こる。……最初、怖い感じだったのだけれども実は孫娘デレの素敵なお爺様。そして年上で魅力をもった弁護士の瀬名さんと、イケメンでピアノの上手なIT会社経営者の従兄・浩さん、二人から好意を寄せられ心揺れる乙女なクロエ。さらには魔界の貴紳・白鳥さんまで花婿に立候補してきた。しばらくして、クロエは、お爺様の取引先の画廊マダムに気に入られ、秘書に転職した。

 クロエは、マダムと北ノ町へ行く夜行列車の中で、少女が死神に連れ去れて行くのを目撃する。神隠しだ。そして鈴木一家による少女救出作戦が始まる。

 ――そんなオムニバス・シリーズ。

挿絵(By みてみん)

挿図/Ⓒ 奄美剣星 「ステーション・ホテルのピイちゃん」


     54 冠雪

.

 クロエです。炎竜のピイちゃんたら、龍の墓場駅でネクロマンサーさんごと、私たちの乗った軽便鉄道気動車を吹き飛ばしちゃいました。間一髪、私たちは亜空間に引き込まれたのですが、そのとき、そこにいたのはお婆様。私とは何者かという意味深な謎かけをされた直後に、私たちは駅に戻りました。

     ◇

 口から吐き出すビームで岩山をも横から切断してしまうピーちゃんについて、理系大学卒の浩さんはこんなふうに言っています。

「ピイちゃんは大気圏外・衛星軌道から、駅にいたネクロマンサーさんをピンポイント攻撃したようだ。その視力は、GPS人工衛星並みで、大きさ10センチ程度の大きさまで識別できるようだ」

 軽便鉄道車両運転士の虹色燕のジョナさんが、駅長さんとお話して、早速、壊れた駅のホームや線路、列車の復旧に取り掛かりだしました。そのジョナさんにお別れを言ったとき、ジョナさんが、ステーション・ホテルのパンフレットをくれましたので、本日のお宿はそこに決まり。

 ホームからエレベーターで跨線橋に上がり、上がってすぐのところにある、改札口を出て、奥に行ったところが、三階建てのステーション・ホテルです。そこは洋館風の煉瓦造りになっていて、貼りついた二つの尖塔のところがエレベーターになっていました。

 通路の窓から駅構内が見えました。保線員や車両係の皆さんが、大勢やって来て復旧作業を始めていました。

 ピーちゃんが留まって羽繕いをしているところは、ステーション・ホテルの寄棟屋根の上です。確かにピイちゃんは、私たちの窮地を救ってくれたのですが、私たちを乗せた列車と線路まで吹き飛ばしたのはNG。私はピイちゃんに五分ほどお説教しました。

 私の前を歩いていた瀬名さんが、横にいた浩さんに話かけました。

「これは仮説だ。——以前、おじいさまと父親とが壊滅させた教団がクロエを狙えっていたのは、女神として覚醒する前に、クロエの身柄を確保したかった。とらえて封印し、その協力な通力を利用しようとしたかったのではないか。神隠しの少女というのは、クロエをおびきだす罠ではないのか。――しかしその手の事情におじい様が気付かないのは変だ」

 この件に関しては、浩さんもですが白鳥さんも同意見のようです。

 マダムはどうなのだろう。――お爺様の腕にご自分の腕を絡めて甘えている。あの、あのおっ!

          ♢

 私たちはステーション・ホテルにチェック・インしました。私とマダムは同じツイン・ルーム。そこの窓からは、ピイちゃんが壊したホームが見えました。応急修理は本日中に完了するみたいです。

「ねえ、クロエ、あなたの祖母・紅子さんがおっしゃっていたでしょ。亜空間ドライブはクロエの能力を利用したものだってね。――ならば、自分の意志で操るようになれば、素早く動き回るあの死神を捕えるのも可能じゃない?」

 確かにその通りです。

 私はマダムと、亜空間移動の魔法〝テレポーテーション〟を自力でするトレーニングを始めることにました。――元魔法少女のマダムといえどもテレポーテーションは高等魔法とのことで、使ったことがないとのこと――マダムは、検索アプリ須魔法〝すまほ〟で調べていました。

 クロエ、液晶画面にある文字を読み上げて。

 ――天空に満ちたエーテルよ、我は亜空間の門を司る女神の鍵を手にした。エーテルよ、我は、かざした右手をかざす。その手を扉の鍵穴に挿す。ただちに扉を開け!――

 このとき、壁に文字列が現れました。失われた古代文字。それが無数に連なって、壁に門を描きます。その扉が開くと、私とマダムが吸い込まれました。

「やったあ、クロエ、テレポーテーションに成功したわよ!」

 あのお、あのお、マダム、私たち、どこまで飛ばされるのでしょうか?

 刹那、隣部屋で、長弓のお手入れをしているお爺様が見えました。

 それから風景は目まぐるしく変わり、砂漠になりました。死神さんが、馬に乗って砂漠を駆けて行く姿が見えました。その死神さんは小脇に少女を抱えていました。死神さんの顔がお爺様になり、小脇に抱えられていた少女の顔が母親のミドリになったではありませんか。

 ――もしかして、ラスボスってお爺様だったの?――

 新規習得の魔法で、私たちは、エベレストのような白銀世界の霊峰の山頂へ吹っ飛ばされたみたい。とっても空気が薄いところ。――さっ、寒い、くっ、苦しい――凍傷になっちゃう。早く戻らないと。

     ◇

 それでは皆様、また。

             by Kuroe 

【シリーズ主要登場人物】

●鈴木クロエ/東京暮らしのOL。ゼネコン会社事務員から画廊マダムの秘書に転職。母は故ミドリ、父は公安庁所属の寺崎明。大陸に棲む炎竜ピイちゃんをペット化する。

●鈴木三郎/御爺様。富豪にして彫刻家。北ノ町の洋館で暮らしている。妻は紅子。女学校卒業後、三郎に嫁ぐ。紅子亡き後はお屋敷の近くに住む小母様をアルバイトで雇い、身の回りの世話をしてもらっている。

●鈴木浩/クロエの従兄。洋館近くに住みクロエに好意を寄せる。式神のような、電脳執事メフィストを従えている。ピアノはプロ級。

●瀬名武史/鈴木家顧問弁護士。クロエに好意を寄せる。守護天使・護法童子くんを従えている。

●烏八重/カラス画廊のマダム。お爺様の旧友で魔法少女OB。魔法を使う瞬間、老女から少女に若返る。

●白鳥玲央/美男の吸血鬼。クロエに求婚している。一つ目コウモリの使い魔ちゃんを従えている。

●神隠しの少女/昔、行方不明になった一ノ宮神社宮司夫妻の娘らしい。死神にさらわれているのがわかった。

●ジョナさん/虹色燕。同名の港町で、連絡船アテンダントをしていた、脚のある人魚族・由香から案内役を引き継いだ。軽便鉄道・装甲気動車の運転手。

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